双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

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 寮の中ですれ違う子に「おはよう」、と言っても誰も返事をしてくれない。 教室に入ってもそう、みんなコソコソと私……っていうかエルマの陰口を言ってて、四方八方から軽蔑の眼差しが突き刺さってくる。


「何で私がこんな目に……」


 さあ、さっそく今夜妹に文句の手紙を書こう、私は心に誓った。


 しばらくして教師が入室してきて、やっと陰口達が静かになっていく。

 よし、せめて授業は真面目に受けよう。 そう思ってノートを取り、先生の質問や問題にも積極的に答えた。 周りはかなり驚いた顔をしていて、やはり妹は色恋ばかりで勉強はしてなかったんだな、と感じる。

 ふんっ、ナメんじゃないわよ。 こっちはフランカが婚約者とイチャイチャして暇な時は勉強してたんだから。 ――あれ? なんだか涙が溢れてくる……。


「はぁ、やっと昼休みか」


 こうなったら食べることぐらいしか楽しみないもの、こっちの学食はどんなかなー? と足を運んでみると、


「あっ、美味しそう」


 うんうん、メニューも豊富で良さそうじゃない。 注文を決めて、あとは席を……


 ―――は。 そうだ、学食ならジータって子も来てるんじゃない? ……いや、そもそも寮が一緒なんだから逃げられないし、気にしても意味無いか。


「あっ」


 席を探していたら、端っこにポツンとルームメイトのレイアを発見。 うん、何しろ私は嫌われ者だし、レイアと食べるのが無難よね。


「――ん?」


 レイアの方に向かっていたら、数人の女生徒が現れ彼女を囲んでしまった。 友達かな? う~ん、あんなに居ると嫌われ者としては行きづらい。

 でも何故かその子達は席に座る様子もなく、立ったままレイアを囲んでいる。


「ま~た安っすいセット食べてるのね~レイアちゃんは」
「あははっ、仕方ないわよ。 貧乏貴族のくせにこの学校入ったんだもの、学費で没落しそうなんでしょ?」

「………」


 ……何これ、レイアは黙り込んでるし。


「ガリ勉やっててもお金持ちにはなれないわよー? 貴族令嬢は見た目を磨いて良い男見つけなきゃ」
「わかる? つまり、あんたじゃ家の再興は無理ってわけ」
「こんなの食べてちゃ令息達との食事で恥かくわよ?」


 そう言って、一人の女生徒がレイアの食事をぐちゃぐちゃにした。


「……なんか、久しぶりにきたわ」


 それを見て、長年封印してきた『お転婆』なリリアナがモゾモゾしてきた。


「ちょっとエルマ、あんたに話が……」


 後ろから誰かに呼ばれた気がしたけど、目の前に怒りが向いてて今は相手出来なかった。 


「ほらっ、食べさせてあげるわよこの残飯」

「うっ」


 サラダにミルクをぶちまけたのにパンをつけ、無理矢理レイアの口に入れようとする。


 もう、完全に封印は解かれた―――、


「どいて、邪魔だから」

「――っ!? エ、エルマ?」
「……何あんた、嫌われ者が貧乏貴族を助けにきたの?」


 エルマ? 嫌われ者? 悪いけど私はね、


「あんた達どこを磨いてるの? 食べ物を粗末する方がよっぽどみっともないわよ。 品性の悪さが顔面に出て醜くて仕方ない、こんなブスどこの令息が相手にするの?」


 ―――リリアナ・クルホワイトよ。 お転婆なね。


「なっ、何ですって!!」
「あんたに言われたくないわよこの尻軽!」

「確かにあなたのお尻は重そうね、美味しい物食べ過ぎたんじゃない?」

「――なっ……!」


「いいからどけって言ってんのよ、厚塗りの化粧が食事に落ちるでしょ。 そんなに素顔に自信が無いなら仮面でも付けてなさい」

「こっ、こいつ……」


「――どけッ!!」


 串刺しにする程の眼光を向け、これ以上は言葉では終わらないと最後通告を叩きつけた。 身を竦ませた女生徒達は、ブツブツと何か言いながら退散する。

 これでよし、邪魔者が居なくなったわね。 ……と思ったら、久しぶりに出てきた私のお転婆はこれじゃ物足りなかったみたい。


「ちょっと、これ片付けなさいよ」


 そう言ってレイアの食事を一人に突き渡し、


「残さず食べなさい」


 それからレイアに振り返り、私は満面の笑みを浮かべる。



「新しいのをおごるわ、宿題のお礼よっ」



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