双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

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 午後の授業が終わって、私はまっすぐ寮に戻った。 理由は早く人生最高傑作の手紙クレームを妹に出す為だ。

 昔から甘やかし過ぎた私も悪いけど、友達に宿題やらせたり、恥知らずにも二股かけるだなんて……。 ここはしっかりと叱ってやらなきゃあの子の為にならない。


「まったく、よくこれで婚約者なんて出来たものね。 ああ、まだ婚約者ではないんだっけ?」


 にしても、そのレオーネって令息も見る目無いわ。 外見だけで相手を判断すると痛い目見るわよ。

 ……ちょっと待って。 それじゃ外見一緒で恋人出来てない私の中身とは?


「…………見る目が無いのね、世の男共は」


 と、いう事にしよう。 この件はあまり深追いすると怪我しそうだわ。


「――あっ、おかえりなさいレイア」

「た、ただいま」


 さて、まず書出しは―――『妹よ、私は姉として恥ずかしい』……なんか違うな。 『別に妬んで言ってるわけじゃないけど、二股なんて――』……うん、負け惜しみ感がスムーズに滲み出てるわ。


「エルマ……」


 もっとこう、最初は普通の手紙のように入った方が読まれるかも。 いきなり怒ってたらあの子読むのやめそうだもの。


「エ、エルマっ」

「――は? ……あっ、ああっ! なに? レイア」


 そうだった、私は今エルマだったんだ。 初日だからうっかり忘れちゃうわね。


「あの、お昼の時は……どうして? その、助けてくれた、の?」

「どうしてって、友達だからよ?」


 あの子達大分酷かったから、多分友達じゃなくてもやっつけてたけどね。 もしかして共学より女子校の方が虐めって多いのかな?


「友達……なんて、そんな風に思ってないかと……」

「どうして? ルームメイトだし」

「だ、だって、宿題やらせたり、お部屋の掃除させたり、買い物頼んだり……それだけの関係だと思ってたから……」


 ……本当にごめんなさい、うちの妹が。 手紙の内容がまた長くなりそうだわ。


 私は立ち上がってレイアの傍に行った。 すると彼女はオドオドした様子で俯く。


「そんなの本当の友達じゃないって気づいたの。 これからはお互いに助け合ったり、笑い合いながら付き合っていきたい」

「エルマ……」

「図々しいけど、やり直したいの。 あなたとお友達になりたいから」

「わっ、私なんかと一緒に居たら、みんなに嫌われるよ……」


 ―――もう嫌われてますから。 

 じゃなくて、


「誰かを貶めて喜ぶ人間なんて相手にしない、それより自分を高めましょう? ほら、例えばこれは友達としてのアドバイスなんだけど」

「あ……」


 私は、レイアの顔を隠している前髪を優しく左右に分けた。


「こうしてちゃんと顔を見せて、堂々と……」


 ――あ、あれ? これはちょっと……予想外なクオリティが……


「エ、エルマ……? は、恥ずかしい……」

「レイア、あなたメチャクチャ可愛いかったのね」

「――そっ、そんなわけ……!」


 何故隠す、今まで何故隠していた?


「どうして顔を隠してたの?」

「それは……め、目立たないようにって……」


 そう、それはかなりの勘違いね。
 これはちゃんと教えてあげなければ。


「こんな風に顔を隠してる子なんていないんだから余計目立つわよ、寧ろ目をつけられやすいって」

「そ、そうなの?」

「それに、あのいじめっ子達が言うのも一理あるわ。 勉強も大事だけど年頃なんだから恋もしなきゃ」


 ―――私もしてないけど。 してないのに二股容疑をかけられるなんて何か損した気分。


「そうだ! 私が切ってあげる、結構上手いのよっ」

「えっ? えっ?」


 前髪だけならすぐ終わるし、レイアは髪留めとか持ってないかもしれないからね。 




「………うんっ、良い感じ!」

「ほ、ほんと?」


 不安そうなレイアに手鏡で顔を見せてあげる。 我ながら良い出来だと思うわ、それに何しろ素材が良いしね。


「だ、大丈夫かな、明日」

「今日囲んできた奴らなんて目じゃないわね、レイアならすっぴんで厚化粧に圧勝よ」

「お、大袈裟だよ……」


 そうだ、確か週末はパーティーがあるのよね?


「今度の週末は一緒にパーティーに行こう! そこで可憐なレイア嬢をデビューさせるのっ!」

「で、でも、私男の子と上手く話せないし、ドレスだってあんまり……」

「ちゃんと傍に居てあげるから平気よ、ドレスは私のを貸してあげるし、きっと令息共が群がってくるわよー?」

「令息共って……」

「絶対楽しそうっ! そして私は―――………謝るわ、その、二股かけた男の子に……」


 ああ、一気にテンション下がった……。 なーんで良いとこ無しで謝るのだけしなきゃなんないのよ。


 ガックリと項垂れた時、部屋の戸を叩く音が聞こえた。


「エルマ居る? ジータよ、話があるの」


 凛とした声は、明らかに向こうが戦闘態勢だと私に教えてくる。


「エ、エルマ」
  
「……うん、パーティーの前に謝る相手居たわ」


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