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しおりを挟むドアを開けると、寮のボスと聞いた長身の美人が私を見下ろしてくる。
……さすがボスね、一人で乗り込んで来るなんて。 かかって来なさい、相手にとって不足はないわ。 非は完全にこちらにあるけどねっ!
「邪魔するわよ。 レイアも居るところ悪いけど、ちょっと込み入っ――――誰? この子」
ふふ、どうやら誰だか分からないようね。
そう、これが私の最高傑作、生まれ変わった美少女レイア嬢よ。 前髪切っただけだけど。
「レイアよ、可愛いでしょ」
「レイア? これが?」
「………」
ほら、あなたは自分が思ってるよりずっと可愛いのよ。 モジモジしてないで胸を張りなさい。
「まあいいわ、話はあなたがした二股の事よ」
胸を……張れないやつね。
「サラはジャンのこと本気だったの、それをレオーネと恋人だと自分で言いふらしてたクセにどういうつもりなの?」
……なるほど。 サラはジータの友達で、ジャンっていう令息と付き合ってたのね。 そこにレオーネと恋人だと自慢してたエルマがにちょっかいを出した、と。
ふむ、
―――10、0でエルマが悪いわ。
「サラは塞ぎ込んでて授業も出て来ないの、私もこれじゃ黙ってられないわ」
「……ごめんなさい」
謝るしかない。 その子が可哀想だし、私がジータでも乗り込んできてると思う。
「食堂でレイアを助けた時は少し見直したけど、あなたのした事は最低よ」
「――あっ、あの時声かけてきたのジータだったのね? ごめんなさい、怒ってて無視しちゃった」
「そんな事はどうでもいい、あなたはどうしたいの? どうするつもりなの?」
―――正直私も聞きたいわ。 エルマ、あなたどうしたいの? って。
でも、私は姉だからちょっと分かるのよね。 どうしてエルマがこんな事をしたのか、それは多分、
――――『やってみたかった』、からでしょうね。
傍迷惑な悪戯心、簡単に言うとそれ。
そしてエルマが一番いけないのは、その責任を取る事まで考えてないって事なのよ。
「今度のパーティーでジャンには謝るわ。 軽率な事をしてごめんなさいって」
「つまりジャンとは遊びだったのね。 それでサラがどんなに苦しんでるかわかってるの?」
エルマ、悪いけど責任取ってもらうわよ。
自分だけ傷つかないなんて無責任は許さないから。
「サラにも謝る」
「それで許されるとでも……」
「――レオーネとも別れるわ」
「……レオーネと?」
面倒事を押し付けられたんだから、やり方は自由にさせてもらうわ。
「彼とジャンだって関係が拗れたでしょうし、その責任を取って別れる。 こんな事になったんだから、レオーネももうそのつもりかもしれないけど」
「………」
会った事もないけど、まともな男だったらこんな女嫌いになるでしょ。
「その上で、ジャンにはサラのところへ戻ってもらう」
「そんな都合良くいく訳ないでしょ」
確かにそうだけど、
「やってみるわ、それが償いだと思うから」
私はジータと視線を交わす。
目を逸らさず、私は本気だと伝える為に。
「……わかったわ、しばらく様子を見てあげる」
ジータは長い髪を揺らして背を向けた。 そして、出て行く時に流し目で、
「レイア、可愛くなったわね」
「っ……」
頬を染めるレイアを見て口元を緩ませ、ジータは部屋を出て行った。
「ほら言ったでしょっ!」
「う、うん」
寮のボスジータ、話してみたら全然悪い子じゃなかったわね。
「悪いのは全部エルマよ」
「えっ? 何言ってるのエルマ」
―――あ゛……エルマは私だった。
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