双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

文字の大きさ
5 / 27

5,

しおりを挟む
 

 ドアを開けると、寮のボスと聞いた長身の美人が私を見下ろしてくる。

 ……さすがボスね、一人で乗り込んで来るなんて。 かかって来なさい、相手にとって不足はないわ。 非は完全にこちらにあるけどねっ!


「邪魔するわよ。 レイアも居るところ悪いけど、ちょっと込み入っ――――誰? この子」


 ふふ、どうやら誰だか分からないようね。
 そう、これが私の最高傑作、生まれ変わった美少女レイア嬢よ。 前髪切っただけだけど。


「レイアよ、可愛いでしょ」

「レイア? これが?」

「………」


 ほら、あなたは自分が思ってるよりずっと可愛いのよ。 モジモジしてないで胸を張りなさい。


「まあいいわ、話はあなたがした二股の事よ」


 胸を……張れないやつね。


「サラはジャンのこと本気だったの、それをレオーネと恋人だと自分で言いふらしてたクセにどういうつもりなの?」


 ……なるほど。 サラはジータの友達で、ジャンっていう令息と付き合ってたのね。 そこにレオーネと恋人だと自慢してたエルマがにちょっかいを出した、と。

 ふむ、


 ―――10、0でエルマが悪いわ。


「サラは塞ぎ込んでて授業も出て来ないの、私もこれじゃ黙ってられないわ」

「……ごめんなさい」


 謝るしかない。 その子が可哀想だし、私がジータでも乗り込んできてると思う。


「食堂でレイアを助けた時は少し見直したけど、あなたのした事は最低よ」

「――あっ、あの時声かけてきたのジータだったのね? ごめんなさい、怒ってて無視しちゃった」

「そんな事はどうでもいい、あなたはどうしたいの? どうするつもりなの?」


 ―――正直私も聞きたいわ。 エルマ、あなたどうしたいの? って。

 でも、私は姉だからちょっと分かるのよね。 どうしてエルマがこんな事をしたのか、それは多分、


 ――――『やってみたかった』、からでしょうね。


 傍迷惑な悪戯心、簡単に言うとそれ。

 そしてエルマが一番いけないのは、その責任を取る事まで考えてないって事なのよ。


「今度のパーティーでジャンには謝るわ。 軽率な事をしてごめんなさいって」

「つまりジャンとは遊びだったのね。 それでサラがどんなに苦しんでるかわかってるの?」


 エルマ、悪いけど責任取ってもらうわよ。
 自分だけ傷つかないなんて無責任は許さないから。


「サラにも謝る」

「それで許されるとでも……」


「――レオーネとも別れるわ」


「……レオーネと?」


 面倒事を押し付けられたんだから、やり方は自由にさせてもらうわ。


「彼とジャンだって関係が拗れたでしょうし、その責任を取って別れる。 こんな事になったんだから、レオーネももうそのつもりかもしれないけど」

「………」


 会った事もないけど、まともな男だったらこんな女嫌いになるでしょ。 


「その上で、ジャンにはサラのところへ戻ってもらう」

「そんな都合良くいく訳ないでしょ」


 確かにそうだけど、


「やってみるわ、それが償いだと思うから」


 私はジータと視線を交わす。 
 目を逸らさず、私は本気だと伝える為に。


「……わかったわ、しばらく様子を見てあげる」


 ジータは長い髪を揺らして背を向けた。 そして、出て行く時に流し目で、


「レイア、可愛くなったわね」

「っ……」


 頬を染めるレイアを見て口元を緩ませ、ジータは部屋を出て行った。


「ほら言ったでしょっ!」

「う、うん」


 寮のボスジータ、話してみたら全然悪い子じゃなかったわね。 


「悪いのは全部エルマよ」

「えっ? 何言ってるのエルマ」


 ―――あ゛……エルマは私だった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...