双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

文字の大きさ
10 / 27

10,

しおりを挟む
 

 広場に戻った私がまず見たのは、暇を持て余した不機嫌そうな令嬢達の顔だった。 その令嬢達の視線の先には人だかり、――くっ……遅かったか!


「ごっ、ごめんあそばせーっ!」


 令息達をかき分け、真ん中でオロオロと涙ぐんでいるレイアを保護。 とりあえず今日は撤退しましょう、初陣としては顔も売ったし十分よ。


「なんだエルマ、もう帰るのか?」

「レイアがもう限界みたいだからね、次の週末彼女に良い男紹介してよ、レオーネ」

「良い男ねぇ。 わかったよ」

「金持ちで誠実で頭の良い男よっ、うちの子は安くないんだから! じゃあねっ!」


「……なんていうか、ホント落ち着きの無い女だな」





 ◆◇◆





 初めてのパーティーから数日が経ち、今は午前の授業を終えてお昼休み―――、


「はぁー、大したもんだわ、ジータって何でも出来るのね」

「大袈裟よ、あなた達にだって出来るわ」

「わ、私お料理ダメだから……」


 今日はレイアとジータと三人で昼食、ジータが手料理を作ってきてくれた。


「サラはジャンと元の鞘に収まったみたい、随分元気になって授業にも出てるし。 エルマ、どんな手を使ったの?」

「別に、ちょっと大女優の片鱗を見せただけよ」

「……レイア、意味わかる?」

「さ、さぁ」


 レオーネにはバレたけど、自分では結構いい線いってたと思うのよね。 


「レオーネとは、その、別れちゃった……の?」


 レイア、そんなに聞きづらそうにしなくてもいいのよ。 だって、―――元々付き合ってなかったんだから。


「別れたわよ、というか私が勝手に恋人気分だっただけみたい。 彼にも悪いことしたわね」


 飄々と話す私を見て、レイアとジータは何か腑に落ちない顔をしている。


「どうしたの? 二人とも」

「何だかその、聞いてるとエルマらしいけど、エルマらしくないというか……」

「何よそれ」

「う、うん、ジータの言いたいこと、わかる」


 ……全然わからないけど、どういうこと?


「レオーネを恋人だっ、て自慢するのはエルマらしいけど、それをあっさり自分の勘違いだと認めるエルマはエルマらしくなくて、でも最近のエルマらしくて……」


 ―――まずい、どうやらこれは生活交換の不具合が出てきてるわね。


「う、うん。 なんていうか、上手く言えないけど……」

「そっ、そんな事より今週末のパーティーは三人で行きましょうよ! レオーネに良い男紹介してって言っといたからっ」


 必死に話題を変えたところ、ジータにビシッと指を差された。


「それが変なのよ、別れたレオーネとすぐ友達みたいに付き合える?」

「――うっ……そ、それは……」

「私の知ってるエルマだったら、当てつけに他の男見つけてレオーネに見せつけるとかすると思う」


 ……しそうね、エルマなら。


「ジ、ジータ、もういいよ。 私は……今のエルマが好きだし」

「レイア……」


 私も好きよ、出来れば誰にも渡したくないわ。


「……それもそうね。 でも、私はパーティーはいいわ。 少しそういう場から……」


「――ダメよ」


 逃げ腰のジータにダメ出しを切り込む。 

 何を腑抜けたこと言ってるの? 恋の傷は恋で埋める、それぐらいタフじゃないと貴族令嬢なんてやってけないわ。 経験値無いけどね。


「こんな時こそ前に出るのよ、花ざかりの時間を無駄にしちゃダメ」

「こんな時……って、ジータ何かあったの?」


 ―――はっ! レイアは知らないんだった!


「なっ、何もないけどっ! 消極的なのは良くないってことよ、わ、わかった?」


 苦しい言い分で切り抜けようとする私を見て、ジータは苦笑いの後、楽しそうに笑った。


「そうね、いつもより大胆なドレスにしようかしら」

「そっ、その意気よ!」


 もっと良い出会いがきっとあるわ。 今度は負い目の無い恋愛を思いっきりして欲しい。



 そして、三人で乗り込んだ週末のパーティーで、思いも寄らない出来事が起こった。



「――ダンテ、あなたとの婚約は破棄させてもらうわ!」



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

処理中です...