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しおりを挟む「うーん、やっぱり背が高いとドレスが映えるわね」
ジータはスタイル良いなぁ。
「ふふ、でも女受けは良くても、男受けは断然あっちよ」
「……胸きつい」
今日もレイアに持っていかれそうね……。 でも社交界の最終兵器を作り出してしまったのは私だし、ちゃんと責任は取らないと。
「おっ、来てたんだな、嫌われ者」
「――むっ! レオーネ、そっちこそレイアに見合う男は用意したんでしょうね」
会場に着いてまもなく、声をかけてきたのは噂だけの恋人。 その噂も薄れてきたけどね。
「何の取引なんだよ……。 まあ、金持ちで頭が良い、ってのは連れて来た。 あまりこういう場に来ない奴だから大変だったんだぞ」
「 “誠実” が抜けてるわよ、そこ大事なんだからっ」
「悪い奴ではない……ちょっと変わってるけどな。 ――ファビオ、この子が話してたレイアだ」
ふむ、彼がレオーネが連れて来た令息ね。
細身でキレイな顔してるじゃない。 でもちょっと髪が長いのは減点かな。
「ファビオ・モアロニクだ。 婚約、結婚にしか興味の無い薄っぺらな貴族令嬢と話すのが苦手でな、こういう場はあまり好まない」
「……レオーネ、ちょっと変わってるって言ったわよね?」
「国有数の豪商、モアロニク商会の長男だ。 そこらの貴族より財も力もある、何より成績優秀で頭脳明晰だぞ?」
「それならレイアも成績は学年1位よ」
自分の事でもないのに自慢げに顎を上げると、「ほう」と言ってファビオはレイアの前に立つ。
「フェーゲル王国との貿易で我が国最大の失策は何だと思う?」
「な、何よそれ、そんなの……」
「試験で成績が良いから頭が良い、とは考えないのがアイツの持論だ。 実際に使える人材とは限らない、らしい」
それにしたって、レイアはまともに男の子と話せないのよ? そもそも就職先を探してる訳じゃないんだから……
「み、道は国力を表す、それを怠ったから……」
……レイア? それどういう意味?
「そうだ」
「――そうなの!?」
「貿易の本格化前に整備しなければいけなかった。 フェーゲル王国からは輸送しにくい程度の低い国だと思われ、他国と比べて取引量を抑えられている」
「じ、事故による保証、積荷の遅延など、無駄な問題が今になってのしかかってきてる、から……」
「ふむ、君とは話しが合いそうだ」
こんな出会い……もある、の?
「――ん? どうしたのかしら?」
大広間の入口から騒めきが聞こえてきた。 その騒めきに紛れて、前回初めてのパーティーで知った名前が耳に入ってくる。
「メリッサ様……」
「珍しい、学生のパーティーにはほとんど顔を出さないのに」
メリッサ……公爵令嬢だ。
ふと隣を見ると、ジータが顔を歪めて身を竦めている。 私はそっとその背に手を添えた。
「エルマ……」
「大丈夫よ」
公爵令嬢からすればジータは婚約者の浮気相手だ。 でもその関係は終わったし、メリッサ様は知らない筈。 ……それにしても、普段来ないみたいだしタイミング悪いわね。
「学生生活もあとわずかですし、偶にはこうした場も良いものですね」
「あ、ああ、そうだな」
隣にはあのダンテ……当たり前か、婚約者ですものね。
公爵令嬢か、確かに凄い気品があってキレイ。 男を見る目は無いけど……ってジータにも悪いか、それは。
大広間の階段を上り、まるで王族を讃えるように皆がそれを目で追っている。 そして振り返ると、メリッサ様は演説をするように私達に話しかけた。
「今日は、皆さんにお伝えしたい事があります」
騒めきが大きくなり、それがやがて静まった頃―――
「私の卒業後の予定が変わりました。 ――ダンテ、あなたとの婚約は破棄させてもらうわ!」
隣に立つ伯爵令息、ダンテ・シュカワレを鋭い眼差しで睨み、公爵令嬢は婚約破棄を宣言した。
「なっ、何を言ってるんだメリッサ、婚約破棄だなんて……」
「理由はこの大広間に居るでしょう、これ以上の申し開きは見苦しいですよ」
隣に居るジータの心音が聞こえてきそう。 そんな、どうしてメリッサ様がそれを……
「ごっ、誤解だ! 私は決して不貞など……」
「早く実家に戻った方がよろしくてよ、ご両親と相談なさいな。 ―――この国では生きにくくなるのですから」
メリッサ様が階段を下りていく。
その途中、
「レオーネ、奥で話したいわ」
「――は……? 私と……ですか?」
騒然とする大広間、二人は騒音から遠ざかるように奥へと消えて行った。
………どういう、事?
そうだ―――、
ジータとダンテ、二人の不貞を知ってるのは私だけじゃなかった……。
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