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しおりを挟む「――わぁ、すごくキレイ」
レオーネが連れて来てくれたグレイターズガーデンは、背の高い木々が道を作るように並んでいる、とても美しい庭園だった。
「来たことあったか?」
「ううん、初めてっ!」
「よしっ、じゃあ入ろう。 中はちょっとした迷路になってるからはぐれるなよ。 と言っても、子供やお前じゃなきゃ迷わないけどな」
「うんっ、わかっ――」
……あれ? 今ナチュラルにバカにされたような?
「もう少し行くと露店が並んでる。 大広場では音楽会や式典が行われる事もある、曲芸師なんかも居るな」
「へえ、じゃあ昼間は子供連れの家族なんかも多いのね」
「ああ、でも最近は変質者が出るらしいからな、知らないオジサンに付いて行っちゃダメだぞ?」
「――確信したわ! バカにしてるでしょ!」
「おいおい、アイス買ってやるから静かにしろよ」
こっ、この……どこまでも人を……!
「――うん、美味しい」
買ってもらっちゃった。
ベンチに腰を下ろしてひと休み、二人でアイスを食べてます。 夕焼けもキレイだけど、早い時間だったらもっと景色もキレイだったのかなぁ……――――って、違うでしょ?
本来の目的を忘れて何してるの? まだ聞かなきゃいけない事があるんだから。
「ちょっと、メリッサ様とは何を話したのよ」
「今度はこっちの番だ、オレにだって聞きたい事がある」
私に聞きたい事? って、なんだろ。
「ど、どうぞ」
「じゃあ聞くが、オレの知ってるエルマは女友達は居なくて、男ばっかり漁ってる嫌な女だった」
おかげで大変だったわよ、まったくあの子は……。
「オレは我儘女の言うことなんか聞かない男だが、お前がオレに頼むのは友達を逃がしてくれ、友達に男を紹介しろ、全部友達の事ばかり」
「それは……」
「今もそうだ、オレとまた噂を立てようとしてる訳じゃない、ジータの為に来たんだろ?」
……これはちょっと、エルマらしさを出さないとマズイわね。
「そう思ってるなら思うつぼだわ。 本当はジータの事は口実なの、あなたがメリッサ様とどうなったか気になったのよ。 公爵令嬢が相手じゃさすがの私も分が悪いから」
ツンと顎を上げた時、私は一瞬目を瞑った。
「……そうか」
その目を開けたら、いきなり目の前にレオーネの顔があって……
「じゃあまだ、オレを好きだったのか」
「――ち……ちが……」
ちょ……お、お願いだから離れて……呼吸したら息がかかっちゃうって思ったら出来ない……!
「違う? じゃあ何でオレとメリッサの事を気にするんだ?」
「それ……は……」
苦しいのに、「離れて」、とも言えないから……助けて―――
「……まっ、いいや」
微かに微笑んでから、やっとレオーネが距離を取ってくれた。
はぁ、はぁ……も、もう少しでエルマとして生涯を閉じるとこだったわ。
「わっ、私はあのおっきなお邸に惹かれただけよ!」
「ああ、金目当てか」
「当たり前でしょ! ………それで、メリッサ様とはどうなのよ、今度は私の番でしょ?」
何とか体制を立て直した私は、火照った身体と頭を冷やすように残りのアイスを一気に口に放り込んだ。
「そうだな、今度は勝負をしよう。 オレを捕まえられたら何でも言うことをきいてやる」
「な、何よそ―――っ……」
キーンと頭に痛みが走る。 なんてバカなの、一気にアイスを食べたからだわ。
「――花火が打ち上がる前に捕まえたらお前の勝ちだ。 オレが勝ったら、何でも言うことをきいてもらうぞ」
それは聞こえた。
そして、痛みに頭を押さえていた私が目を開けると、もう隣にレオーネの姿は無かった。
「………なによ、いい歳して鬼ごっこ?」
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