双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

文字の大きさ
15 / 27

15,

しおりを挟む
 

「――わぁ、すごくキレイ」


 レオーネが連れて来てくれたグレイターズガーデンは、背の高い木々が道を作るように並んでいる、とても美しい庭園だった。


「来たことあったか?」

「ううん、初めてっ!」

「よしっ、じゃあ入ろう。 中はちょっとした迷路になってるからはぐれるなよ。 と言っても、子供やお前じゃなきゃ迷わないけどな」

「うんっ、わかっ――」


 ……あれ? 今ナチュラルにバカにされたような?


「もう少し行くと露店が並んでる。 大広場では音楽会や式典が行われる事もある、曲芸師なんかも居るな」

「へえ、じゃあ昼間は子供連れの家族なんかも多いのね」

「ああ、でも最近は変質者が出るらしいからな、知らないオジサンに付いて行っちゃダメだぞ?」

「――確信したわ! バカにしてるでしょ!」

「おいおい、アイス買ってやるから静かにしろよ」


 こっ、この……どこまでも人を……!





「――うん、美味しい」


 買ってもらっちゃった。


 ベンチに腰を下ろしてひと休み、二人でアイスを食べてます。 夕焼けもキレイだけど、早い時間だったらもっと景色もキレイだったのかなぁ……――――って、違うでしょ?

 本来の目的を忘れて何してるの? まだ聞かなきゃいけない事があるんだから。


「ちょっと、メリッサ様とは何を話したのよ」

「今度はこっちの番だ、オレにだって聞きたい事がある」


 私に聞きたい事? って、なんだろ。


「ど、どうぞ」

「じゃあ聞くが、オレの知ってるエルマは女友達は居なくて、男ばっかり漁ってる嫌な女だった」


 おかげで大変だったわよ、まったくあの子は……。


「オレは我儘女の言うことなんか聞かない男だが、お前がオレに頼むのは友達を逃がしてくれ、友達に男を紹介しろ、全部友達の事ばかり」

「それは……」

「今もそうだ、オレとまた噂を立てようとしてる訳じゃない、ジータの為に来たんだろ?」


 ……これはちょっと、エルマらしさを出さないとマズイわね。


「そう思ってるなら思うつぼだわ。 本当はジータの事は口実なの、あなたがメリッサ様とどうなったか気になったのよ。 公爵令嬢が相手じゃさすがの私も分が悪いから」


 ツンと顎を上げた時、私は一瞬目を瞑った。


「……そうか」


 その目を開けたら、いきなり目の前にレオーネの顔があって……


「じゃあまだ、オレを好きだったのか」

「――ち……ちが……」


 ちょ……お、お願いだから離れて……呼吸したら息がかかっちゃうって思ったら出来ない……!


「違う? じゃあ何でオレとメリッサの事を気にするんだ?」

「それ……は……」


 苦しいのに、「離れて」、とも言えないから……助けて―――


「……まっ、いいや」


 微かに微笑んでから、やっとレオーネが距離を取ってくれた。


 はぁ、はぁ……も、もう少しでエルマとして生涯を閉じるとこだったわ。


「わっ、私はあのおっきなお邸に惹かれただけよ!」

「ああ、金目当てか」

「当たり前でしょ! ………それで、メリッサ様とはどうなのよ、今度は私の番でしょ?」


 何とか体制を立て直した私は、火照った身体と頭を冷やすように残りのアイスを一気に口に放り込んだ。


「そうだな、今度は勝負をしよう。 オレを捕まえられたら何でも言うことをきいてやる」

「な、何よそ―――っ……」


 キーンと頭に痛みが走る。 なんてバカなの、一気にアイスを食べたからだわ。


「――花火が打ち上がる前に捕まえたらお前の勝ちだ。 オレが勝ったら、何でも言うことをきいてもらうぞ」


 それは聞こえた。

 そして、痛みに頭を押さえていた私が目を開けると、もう隣にレオーネの姿は無かった。



「………なによ、いい歳して鬼ごっこ?」


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

処理中です...