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しおりを挟む「じゃあ私は先生に呼ばれてるから、今日は先に帰ってて」
「うん、後でフランカの部屋に行くね」
―――はぁ、何だかもう……つまんない。
向こうがゴタゴタして面倒だから姉さんと入れ替わったけど、こう何も無いのも退屈だわ。 良い子でいるのも飽きたし、疲れる。
「あれ? リリアナ、フランカは?」
「先生の所に行ってるわ」
「そうか」
フランカの婚約者、ルドワード……か。
見た目はまあまあね。 でもレオーネに比べたら平凡で、性格も真面目でなんかこう……色気が無い。
やっぱりレオーネは良かったなぁ。 アレを見ちゃうと他が……
―――まてよ?
でも、姉さんの親友の婚約者、っていうのはスパイスよね。 それをエルマに靡かせて、姉さんと生活を戻した時―――
「ルドワード」
「ん?」
「フランカは先に帰っててって言ってたよ」
それは……――――面白そう。
「そうなのか? 結構長い話になりそうってこと――っ!?」
突然手を繋がれ、驚いたルドワードの肩が跳ねる。
「たまには私と帰りましょ?」
「いやっ、でも」
ああ、この感覚……。
悪戯も恋も、最初が一番楽しいのよね。 でもそれは段々と味が薄くなってきて、気がつけばめちゃくちゃに絡まり過ぎて面倒になっちゃう。
でも今回は大丈夫。 だってどうせ、
「少し熱っぽいの、一人で帰るのは心細くて……」
あとは、入れ替わった姉さんが処理するんだから―――。
◆◇◆
……授業がまったく頭に入ってこなかった。
今、私の頭の中は占領されている。 あの夜からずっと――――
「だ、だって、レオーネは『ジータは大丈夫』、エルマに『もう現れるな』……って言ったんでしょ?」
「そうだけど、それがどうして……」
レイアの言うことが理解出来ない。 どうしてそれをジータに言わなくて良かったのか。
「か、確信は無いけど、レオーネはジータを守って、それでメリッサ様に何か条件を出された……じゃないかな」
「……ごめん、よく分からない」
素直に教えを乞うと、レイアは私にも分かるように説明してくれた。
「ええと、レオーネが密告してメリッサ様の婚約者の座を狙ってたなら、エルマにもう現れるな、って言う必要無い、よね。も、もう別れたんだし、レオーネが望んで婚約者になったのなら」
なるほど。 じゃあ、何でそうな事言ったのか、それは……
「その、出された条件が『現れるな』、ってこと?」
「そうかな、って。 そうなると、ジ、ジータが足枷みたいになるから……」
条件はジータを庇ったから出された、ってことね。 だからジータに話さなくて良かったのか。 彼女が自分のせいでって気にしちゃうから。
――ん? でも、この話って根本的におかしいんじゃ……
「それ、メリッサ様が私の事を邪魔だと思ってるって事?」
「……うん」
そんなの……だって、
「私とレオーネはそんな関係じゃないのに、あんなキレイな公爵令嬢が気にするのはおかしいわ」
そうは言いながらも、脳裏には抱きしめられた記憶がチラチラと顔を出す。 まるで『邪魔な存在』を肯定するように。
そして、それをどこか喜んでいる自分と、『あれは何だったの?』、とレオーネに聞いている自分が居る。
「お、おかしいとは思わない。 だって……」
その後レイアが言った言葉が、私のそれにまた拍車をかけた。
「わ、私にはね、二人は始まったばかり……に見えてた、よ」
「………」
――――あの日からレオーネとは会ってない。 この前の週末、レオーネはパーティーに来てなかったらしいし、もう学生のパーティーには来ないのかも。
もう、このまま会えずに元の生活に戻るのかな。
せめて、私がエルマじゃなくリリアナだったら……
「……だったら、どうするのよ……」
寮への帰り道、一人立ち止まり呟いた。
目の前に―――、
「初めまして、エルマ」
「――っ」
その人が居るのに気づかずに。
「メリッサ・ストレイロードです。 良かったら、これから私のお邸に来ませんか?」
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