双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

文字の大きさ
20 / 27

20,

しおりを挟む
 

 今日はレイアとジータと三人で街に繰り出した。 色々あったし、ちょっと気晴らししたかったから。


「街中が飾り付けしてるわね、何かあるの?」

「うん、もうすぐ独立記念日のお祭りだから」


 そのお祭りは王都を挙げての大きなお祭りで、平民も貴族も関係なく記念日を祝うらしい。


「子供はお面をして、大人は仮面を付ける。 それは身分を忘れて喜び合う為の風習なのよ」

「そうなんだ」

「子供達が仮面を取ろうとしてきてね、顔を見られた大人はお菓子をあげなきゃいけないの」

「へぇ、楽しそう」


 ジータの説明を聞いて、頭の中に薄らと何かが浮かんだ。 そして、それは段々と形を成していって―――


「……これは、面白そうね」

「ど、どうしたのエルマ、怖いよ?」


 じっとしてるのは性に合わない、クルホワイト家の血が騒ぐわ。 それに、


「――お祭りは大好きなのよ」





 ◆◇◆





「好きにやってくれ、遠慮はいらんぞ」


 お祭りを明日に控えて、私達は以前連れて来てもらったファビオのお店にやって来た。

 学生なのにもう経営してるなんて凄いわよね。 性格には難があるけど、実は優良物件だったのかも。 何よりレイアが気が合うみたいで良かった。


「な、なんかいつも悪い、ここ高そうだし……」

「何を言う、私は商人だぞ? これは先行投資だ」


 またファビオが訳の分からない事を言い出した、と思っていたら、


「私の心は決まっている、レイア」

「は、はい」

「卒業したら私の……」


 ちょ、ちょっと、いきなり何を始めてんの!?
 こんな、私やジータも居るのに―――


「私の――――右腕になって欲しい」


 ………ナニソレ。

 それは恋人に、というのでも、婚約の申し出でもなかった。

 ダメだ、この男はやっぱりかなりズレてる。 ハラハラドキドキしたこっちがバカみたい、レイアだってさすがに呆れてるわよ。


「は、はいっ」

「――レイアちゃん!?」


「そうか、良かった」


 何なの、これ何なのよ、もしかして私の方がズレてるのかしら。


「この二人はよく分からないわ、ねえジータ」

「え、ええ、そうね」


 どうしたんだろう、なんか元気無いわね。 

 ジータの様子にレイアも気づいたみたいで、二人でどうしたのか聞いてみた。 すると、


「……ダンテと会ったの」


 そうだとは思ったけど、やっぱり。


「ちゃんと話したかったし、心配だったから」

「そ、それで?」

「ええ……」


 ジータは自分がメリッサ様に浮気を伝えたんじゃない、そうダンテに伝えた。 でも、ダンテの方はもうそんな事どうでもいい感じだったみたい。


「シュカワレ伯爵家はストレイロード公爵家に謝意を示す為、ダンテと縁を切り彼を追い出すみたい」

「そうなるだろうな、家を守る為には当然の選択だ」


 頭の中では、ダンテを『風避け』と言っていたメリッサ様が思い浮かぶ。


「彼は明日王都を出るみたいだけど、あの時の様子が気になって……何か、おかしな事をしなければいいけど……」


 ジータはレオーネが擁護してくれて、ダンテに騙された自分は難を逃れたと思っている。 

 本当は、少なくともメリッサ様に負い目を感じる必要は無いって伝えたいけど、それはレオーネを縛ってるのが自分だと気づく事に繋がるかもしれないし……。


「そ、そうだ、エルマがファビオに用事があるんだって」

「そうか、それは煩わしいな」


 ―――おい。


「それで、用事とは何だ?」

「ええ、ちょっとレオーネに伝えて欲しい事があるの」
「自分でやれ」

「――それが出来ないから頼んでるのよっ! 理由は聞かないで、いい? 言うわよ! 明日の……」


 用件を伝えようとした時、個室の扉が開き誰かが入って来た。


「……な、なんで」

「どういう……こと?」


 その人物を見て、レイアとジータは唇を震わせている。


「……まったく」


 私も驚いたけど、こんな事になるかもな、とは思っていたから。 ただ、確信したのは―――


「皆、どうやらお別れね」


 そして、



 ――――今度は私の勝ちよ、レオーネ――――



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

処理中です...