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しおりを挟む扉が開くと、友達は待ち焦がれたように駆け出した。
「おねえさまーっ」
その先には全てを許してくれそうな笑顔か待っている。 彼女が広げた手の中、そこはどれだけ暖かいのかと思いを馳せる。
「………」
見とれていた。 子供ながらに。
友達はその胸に飛び込み、それからいつも膝に甘える。
「みんなボクをちゃんと呼んでくれないんだ、だから友達はレオーネだけなんだよっ」
テオドア様、友達はそう呼ばれるのを嫌がった。
「そう。 レオーネ、テオと仲良くしくれてありがとう」
「っ……」
先に心臓が跳ねて、その振動が全身に伝わってくる。 自分に向けられた笑みがそれを見透かしているようで恥ずかしくて、だから、
「テっ、テオドアは甘ったれだ! 男のクセに……」
そう言って頬を膨らませても、
「おいで、レオーネ」
微笑みは変わるどころか、自分を手招きしてくる。
「おっ、オレはいいっ! ……それより、テオドアはテオなのに、なんでオレはそのままなんだよ……」
自分が何を言っているのか、何の対抗心なのかもわからない。 ただ、文句でも言ってないと居られなかった。
「そうね、それじゃあ」
“ 居心地が良い” 、が家族なら、 “居たい” 、は……何だろう。
「おいで、レオ――――――
――――――――
――――――
――――
――
――――あの笑顔はもうこの世に居ない。 テオドアが病に伏せ、そして――――
「……その人は、友達が連れて逝ってしまった……か」
天井を見つめるレオーネ。 例えそれが無くても、空の上には届かない恨み言だ。
「レオーネ様、ファビオ様がいらっしゃいました」
「……ああ、通してくれ」
扉が開き、姿を見せた友人に目を細める。
「この前はやってくれたな」
「礼はいい、お前にはレイアと私を繋げてもらった恩があるからな」
「……なるほど、そうきたか」
報告無しでリリアナと入れ替わったのを皮肉ったつもりが、逆に恩を着せてこられレオーネは苦笑いをする。
「それで? 今日はどうした」
「伝言だ、エルマからのな」
「……さて、今度は何をしてくるのか」
ファビオは内ポケットから手紙を取り出し、それを両手で持ってレオーネへと突き出す。
「『明日、独立記念日のお祭りで再戦を申し込む。 場所は前回と同じ、先に仮面を相手に取られた方が負け』」
「おいおい、まさかの果たし状か? それにもう――」
「『1回勝負なんて言ってないから、勝ち逃げしないでよね』――――以上だ」
レオーネの言葉を遮り読み終えると、ファビオはその手紙を手渡した。
「……何とも、諦めの悪い奴だ」
その文面を見つめ、レオーネはにやりと口端を上げる。
「――受けてやろう。 ファビオ、お前は向こう側か?」
「これはお前とエルマの勝負だ、手を出すつもりは無い」
さっきのように、レオーネはまた天井を見上げる。
「戦ってもないのに、愚痴って悪かったな……テオドアよ」
吹っ切れた顔をするレオーネを、何の事か解らないファビオは不思議そうに見ていた。
「明日は忙しくなりそうだ。 じゃじゃ馬な挑戦者と戦い、オレも――――挑戦者として戦わなきゃならないからな」
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