双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

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 メリッサを抱えて馬車まで戻り、御者がドアを開けると沈んだ顔のジータが見えた。 その隣にメリッサを座らせ、思わぬ展開ではあったが、これでレオーネの第1戦目は何とか幕を閉じた。

「……レオ、後で逢いに来てくれる?」

「ああ、ちゃんと手当てしてもらえよ、ジータもな」

 レオーネは御者に「二人を頼む」、と言ってドアを閉めようとしたが、

「――レ、レオっ!」

「どうした?」

「……上着これ、もらっていい?」

 首元を隠すように上着を掴み、メリッサはよく分からないおねだりをしてくる。

「今年から記念祭で女は上着を欲しがるらしい……好きにしろ」

 ドアが閉まり、車内には複雑な関係性の二人が残される。 メリッサはダンテをどうも思っていなくても、ジータからすれば自分は婚約破棄の原因、更に言えば、それが無ければ今回の事件だって起こらなかった、そう考えてしまう。
 どう詫びようにも許されないだろうが、何も言わずにはいられなかった。

「メ、メリッサさ――っ……?」

 意を決して口を開いた時、頬にひんやりとした手が触れた。

「こんなに腫れて、私の為にすみません」

「………」

 逆に謝られてしまい、感極まったジータの瞳から溢れる。 その涙は頬を伝い、添えられた手を濡らす。

「レオの言ったように、私も悪いのです」

 ダンテを利用したメリッサ、ジータを騙したダンテ、それに流されたジータ。 事の大小はあれど、それぞれに犯した罪はあったのだ。

 ジータの背をさすりながら、メリッサは戦利品の上着に顔を埋めた。


「レオの初恋は……私……」





 ◆◇◆





 再戦の地、グレイターズガーデンに着いたレオーネは人混みに揉まれる。

「これは骨が折れそうだ」

 今日の賑わいは普段日の比ではない、この中からエルマを見つけるのは至難の業だろう。 だがそれは相手も同じ事。

「あいつの事だ、また曲芸師やらに夢中になってるところを仕留めればいい」

 後ろを取られない自信はある、レオーネは余裕の心持ちでエルマ探し始めた。 ―――が、


「……居ないな、まさかまだ来てないのか? それともファビオから何か策を……―――っ!」

 何かに気づいた様子のレオーネ、その目に映ったのは子供達に追いかけられるピエロの面。

「そうか、なるほどな」

 今日、グレイターズガーデンには子供達の遊び相手をするピエロが何人も放たれている。 それに意識を高めてみると、さっきからよく目に入るピエロが一人。 それも、徐々に自分へと距離を詰めているのがわかる。

「一般の仮面をしているとは限らない……て事だ。 あいつにしては考えたな」

 こちらが気づいたと悟られないように、レオーネはさり気なくそのピエロの容姿を確認する。 すると背丈、何より栗色の髪がエルマと一致した。

 そして遂に勝負の時、ピエロは子供に追いかけられたフリをしてレオーネの背に迫る。

「悪くなかったが、残念だったな」

 その台詞に一瞬ピエロは動きを止めてしまう、そしてレオーネは素早く振り返り―――

「今度もオレの勝ち……」

 ピエロの面を上にずらすと、そこには間違いなくエルマの顔があった。 だが、

「お前……その傷……」

 1度お仕置にエルマのおでこを弾いたのを思い出す。 その時には無かった傷、それも、それは明らかに古傷だった。


「―――私の勝ちね、レオーネ」


 その時、目の前に居る筈のエルマの声が背後から聞こえ、


「…………ど、どうなってる?」


 戸惑うレオーネの顔に、それを隠す仮面はもう無かった。


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