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しおりを挟むそれは、独立記念日の前日――――
「ど、どうして……」
「「――エルマが二人居るの!?」」
思わず立ち上がるレイアとジータ。 無理もないわよね、この手品はどんな曲芸師にも出来ない大技だもの。
「はは、帰ってきちゃった……」
不肖の妹は苦笑い。 『帰ってきちゃった』じゃないわよ。
「あのねっ、普通なんの連絡も無しに戻ってくる!? どういうことよっ!」
私が怒鳴るとレイアが、
「ど、どういうことって、こっちが聞きたいよ……というか、エ、エルマはどっちなの?」
エルマにお説教を始めようとしたら、レイアがオロオロと首を左右に振って私とエルマの顔を確かめている。
そうね、これはもうちゃんと説明してあげないと。
「二人共、ついでにファビオもごめんね。 実は私はエルマの双子の姉、リリアナなの」
正体を明かすと、まず質問はジータから始まった。
「双子の姉……って、それいつからなの?」
「長期休みの後からね」
続けてレイアが、
「急に人が変わった……とは思ってたけど、ほ、本当に人が変わってたんだ……」
「つまり、二人足すとやっと人間の知能ということか」
「――ファビオには謝るんじゃなかったわ」
他にも聞きたいことはあるだろうけど、とにかく何で急にこうなったのかをエルマに聞かなきゃいけない。
「で、何で急に戻ってきたのよ」
「え、えっとー……」
言いづらそうにしながら、エルマはぼそぼそとその理由を語り出した。 それはまさに妹らしい理由で、
「……あそ、フランカの婚約者にちょっかい出して妹だって見破られたのね」
「姉さん、私のことフランカに話してたでしょー」
「妹が居るのを話して何が悪いのよ」
「私はこんな事もあろうかと、双子の姉は秘密にしてたのにぃ」
……『こんな事も』? それは、色々やらかして私と入れ替わる事?
「この……―――バカエルマッ!!」
「――ひっ!? ごっ、ごめんなさい……!」
今まで散々甘やかしてきたからね、久しぶりに本気で怒ったら驚いてるみたい。 でも、こうしないとダメだったんだ、人に迷惑かけ過ぎだもの。
「レイアに宿題やら掃除やらせるわ、そこら中で色目使って引っ掻き回して恥ずかしくないのッ!」
「もっ、もうしないってば!」
「そんなの信じられるか! 大体あんたは……」
――っと、それも大事だけど、もう明日しか時間は無いし、明日の勝負を残したままは戻れないわ。
「とにかく、こうなったらエルマにも協力してもらうからね」
「――協力? って、何を?」
ふふ、それはね――――
◆◇◆
「―――私の勝ちね、レオーネ」
ちょっとズルいやり方だけど、女の子相手にこのくらいのハンデ文句言わないわよね?
「じゃあ、オレの後ろ……」
「――振り向かないで!」
あなたが言ったのよ、レオーネ。
「ダメでしょ? 私はあなたの前に現れちゃ」
「……説明、無しか?」
そうね、それぐらい教えてあげるわ。
「トゥーリンドのクルホワイト子爵家、そこの姉妹は双子なのよ」
「………」
「さあ、今度は私の言うことを聞いてもらうわよ」
明日にはもう、私はここに居ない。
レイア、手紙書くわね。 エルマを甘やかさないでいいからね。
「お願いだから……」
ジータ、今度は良い男見つけるのよ。 きっとエルマはまた何かしでかすから、その時は厳しく叱ってやって。
そしてレオーネ、あなたは……
「――もっと、自由に生きて」
好きに生きているようで、あなたは何だかんだ面倒見が良いから。
「自由に……」
「だからってジータを見殺しにすんじゃないわよ、それを解決して自由に生きて」
「……全く、お前は勝手な女だな」
そうよ、結局クルホワイト家の双子はどっちも我儘なの。
……あと、これは教えてあげない。
振り向かせなかったのはね、本当は約束したからじゃないの。
見られたくないからよ……
「……楽しかったわ、これで、勝ち逃げ……させてもらうから……」
今の、こんな顔は――――…………
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