双子の妹と学園生活を交換したら、話が違います

なかの豹吏

文字の大きさ
27 / 27

27,

しおりを挟む
 

「はぁ」

 私は今リリアナとして、久しぶりに自分の学園に向かっている。 それは嫌な訳じゃないし、むしろ戻って来れて喜ばしい事、なんだけど……

「はぁ」

 何故か止まらないため息。

「何ため息吐いてんのよっ、久しぶり!」

「――わっ! た、ただいま、フランカ」

 後ろから肩を叩いて来た親友との再会、久しぶりに顔を見れて気持ちが少し晴れた。 そうだ、エルマの事を謝らなくちゃね。

「居ない間、妹が迷惑かけてごめんなさい」

「いいわよ、ただ、言ってた通りの子だったわね」

 本当、お恥ずかしい限りでございます。

「――あっ、そういえば私の入れ替わりって知ってるのフランカだけ?」

「あとはルドワードね、他の皆は気づいてないと思う」

 そっか、やっぱり気づかないものなのね。

「アイツ、エルマに鼻の下伸ばしてたから半べそかくまで説教してやったわ」

「そ、そう」

 一番の被害者はルドワードか、可哀想に……。

 フランカと雑談をしながら歩いていると、一際目立つ長身が私達を追い越し、

「………」

 振り向いて私を見ている、何故か黙ったまま。

「お、おはようアインシュ」

「………」

 クラスメイトのアインシュ、背が高くて結構女の子に人気らしいけど、無愛想だからあまり話した事は無い。

「リリアナ、お前」

 ――あっ、喋った。

「今までどこ行ってた」

「え」

 あ……あれ? ソレ、どゆこと?

 その後、アインシュは私をひと睨みしてから先に行ってしまった。

「……あの、フランカさん?」

「いや、アレはノーマークだったわ、表情変わらないから」





 ◆





 ――――数週間後。


 アインシュは周りに何か言うタイプじゃないし、何事も無く私は日常を送っている。 ただ、

「はぁ」

 気がつけばため息を吐いてる自分が居る。 これ、癖になったら嫌だな。 
 ……もういい加減認めよう。 そう、ため息の原因は分かってる、それは―――

「会いたいんだ……でも、そんなこと願ったって……」

 会えないし、それに、私だけ想ってても仕方ない。

「はぁ」

 登校途中、ついに立ち止まってしまった。 ……フランカも元気無いって気にしてるし、それも悪いよね。 

「おい」

「――っ!? ア、アインシュ……」

 いつの間にか横に立っていたアインシュは、いつもに増して無愛想な顔をしていた。 

「それ、やめろ」

 ……やめろ? ため息の事かな。
 まあ、見ていて良い気分はしないわよね。 それは分かってる、分かってるけど、

「別に迷惑かけてないでしょ、ほっといてよ」

 つい嫌な言い方をしてしまった。 ダメだ、これじゃ八つ当たりだわ。

「見ていて気分が悪い」

 ……なによ、コイツいつもより喋るじゃない。

「じゃあ見なきゃいいでしょ? 勝手に見て文句言わないでよ」

 止まらない棘のある言葉。 
 最近解禁した気の強いリリアナが出てきちゃってるわ、悪い形で。

「………」

「………」

 朝から道の真ん中で睨み合いとは、私何やってんだろ。 とは思いながらも引くに引けずにいると、


「揉め事か? こんなデカい男と勇ましいな」

「――っ!」


 それは……聞いたことのある、聴きたかった声だった。


「今日から同じ学園に通う事になった、よろしくな」


 声を掛けてきた男の子は、ため息が出る程規格外な美男子で……


「確か一つ貸しがあったよな、園内の案内を頼む」

「な、なんで……?」


 現れるなって言ったくせに……


「お前が言ったんだぞ? 自由に生きろって」


 確かに言った。
 そうか、勝負は一勝一敗。 どうやら、


「……ちゃんと、解決してから来たんでしょうね……」

「もちろんだ、ジータの事は心配するな」


 ―――勝ち逃げはさせてくれないみたい。


「し、仕方ないわね、借りは返すわ。 ……ついてらっしゃいっ!」


 言っとくけど、私はあのおっきなお邸が目当てなんだからね。



 ――――レオーネ。





 ◇





 その日、学園に転校生がやって来た。

 某大国の大公侯爵令息、そしてもう一人は――――



「皆さん、卒業まで1年も無い短い間ですが、どうぞよろしくお願い致します……



 ――――メリッサ・ストレイロードです――――




しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

松竹梅
2022.03.12 松竹梅

22.リリアナはリベンジマッチに闘志を…→エルマではないでしょうか

度々申し訳ありません
最終話まで読み、大変面白かったです。
続きが読みたいような…これはこのままでいいような

反映させなくて大丈夫です

2022.03.12 なかの豹吏

反映させないとお返事出来ないので反映しましたm(_ _)m

これは私の実力不足なのですが、これは誰かの独白ではなくナレーションなので、エルマ扮するリリアナを、あえてナレーションの時は本人リリアナと書いております。
分かりにくくてすみません(;_;)

解除
s
2022.03.04 s

その後が気になりすぎる…!!

2022.03.05 なかの豹吏

感想ありがとうございます!

そうですね、ここで終わるつもりだったので、先を書くならタイトルが……(--;)

解除
りん
2022.03.04 りん

レオーネきてくれた🥰♡と思ったらメリッサまで?!

2022.03.04 なかの豹吏

感想ありがとうございます!

レオーネの初恋がメリッサなら、メリッサの初恋はかなり遅れてレオーネになったようです(^ ^)

解除

あなたにおすすめの小説

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。