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12話 俺も手伝おう
しおりを挟む騎士たちが休憩場所を確保している間、透とグレイドは二人で泉の周囲を散策することになった。
泉のほとりは木々に囲まれ、静かな水のせせらぎだけが聞こえる。鳥のさえずりが遠くに響き、神秘的な空気が漂っていた。
(……やっぱりここは、あの薬草がある場所だ)
透は足元の草をかき分けながら慎重に薬草を探す。ゲームの記憶を辿り、周りにある植物を確かめていく。
「確かこの辺りに……」
背後から、低く穏やかな声が響く。
「見つかりそうか? 透」
透は思わず振り返ると、グレイドがそっと近づき、膝を折って彼の隣にしゃがんだ。
「俺も手伝おう」
その言葉に、透の胸にじんわりと温かいものが広がる。一人で探す心細さが、一瞬にして消えていった。透は小さく息を吐き、嬉しさを隠そうとしながら答える。
「ありがとうございます……グレイドさん」
二人は肩が触れ合う距離で薬草を探す。わずかな体温の伝わりに、透の鼓動は速くなる。
(……落ち着け。これはただの薬草探しなんだから)
透が必死に自分をなだめながら目を凝らしていると、グレイドが薬草の特徴を問う。
「どんな見た目の薬草なんだ?」
「赤い葉っぱで、小さな白い花を咲かせているのが特徴です」
「赤い葉か……目立ちそうだが……」
透もそう思っていたが、なかなか見つからない。探し続けながら、薬になる別の草を採取していると、グレイドが声をあげた。
「……透! あれだろうか?」
グレイドが指さす先に、赤い葉っぱに可憐な白い花を咲かせた植物がひっそりと佇んでいた。
「あれです! さすがですね、グレイドさん!」
喜びで声を弾ませ、透は薬草のもとへと駆け寄った。グレイドは透に褒められて嬉しそうに微笑み、その後に続いた。
「こんなに早く見つかるなんて、運がいいな……」
エリクサーの素材の一つがすぐに見つかり、幸先がいいと感じながら、透が薬草にそっと触れようとした、そのときだった。薬草は突然生き物のように跳ねたかと思うと、透に向かって飛びつき、そのまま胸元に潜り込んだ。
「……え? うわ……!!」
透の声が森に響いた。彼は耳まで赤くなり、慌てふためく。
「透……!? 大丈夫か?」
グレイドが急いで駆け寄る。透は服の上から必死に薬草を押さえようとするが、草は巧みに逃げ、服の中で動き回り、捕まえられない。
「この……っ!」
焦りから、透はシャツのボタンを外し、グレイドに薬草を捕まえるように頼んだ。
「グレイドさん、お願いします! 捕まえてください!!」
「あ、ああ……」
透の信頼が込められた声に、グレイドはうなずく。だが、シャツをはだけさせた透の白く細い腰に、思わず視線が吸い寄せられ、身体の奥がじんわり熱を帯びた。すぐに気を引き締め、薬草を捕まえることに専念する。
「……くっ……素早いな……!」
薬草は透の胸元からお腹、背中へと逃げ回り、まるで悪戯好きな小動物のように透を弄ぶ。
「……くすぐったいです……っ!」
透は声を上げ、肩をすくめる。なんとか押さえて捕まえようとしても、草はすり抜けるように移動してしまう。
「透、そのまま動かないでくれ」
低い声が耳元に落ちる。次の瞬間、グレイドの大きな手が彼の腰を押さえた。力強い感触に、透の体はびくんと跳ねる。
「……あ……っ」
一瞬の声に、グレイドの呼吸が止まる。今度は透の胸元にくっついた薬草をつかもうとするが、草はまた別の場所へ逃げる。勢いあまって透の胸の突起をつねってしまった。
「うぁっ……!」
「す、すまない……!」
二人は顔を見合わせ、互いに赤面したまま困惑する。何度も手を伸ばすたびに、意図せず透の敏感なところに触れてしまうグレイド。透も自分で捕まえようとするが、薬草は楽しそうに飛び跳ねながら茂みの中へと消えていった。
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