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57 アメリアの目的
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「何故王女殿下が……ここは一体どこなのですか……!」
「ここがどこかなんて、今そんなことが重要かしら?」
アメリア王女は私を馬鹿にするかのようにフフッと笑った。
(王女殿下……一体何故私を……)
「どうしてこのようなことを……?」
「何故ですって……?私はずっと貴方を痛い目に遭わせてやりたいと思っていたわ」
「……」
そう言った彼女の瞳には、私に対する憎悪が宿っていた。
思い当たる節が無いわけではなかった。
おそらくあの舞踏会での一件だろう。
それでもここまで憎まれていたとは驚きだが。
「あの舞踏会の日からずっと貴方が憎かった。王女である私を公衆の面前で辱めておいてただで済むと思っていないでしょうね?」
「……私はただ人として正しいことをしたまでです」
「……」
王女殿下の顔が固まった。
そして眉をひそめてハァとため息をついた。
「この状況になってまでそんなことを口にするだなんて……愚かにも程があるわ。」
「私はあのときの行動が間違っていたとは思いません」
「どうやら絶対に信念を曲げないようね」
「はい」
「でも貴方のその考え、本当に愚かだわ」
王女殿下は椅子から立ち上がってゆっくりと私に近付いた。
「ねぇ、貴方随分と余裕があるみたいだけどもしかしてジークハルトが助けに来てくれるとでも思っているのかしら?」
「何を……」
「そりゃあそう思っちゃうわよね。貴方は二度もあの男に助けられたんだもの。でもね、今回ばかりはそうはいかないわ」
「どういうことですか………?」
私が尋ねると、王女殿下は口角を上げた。
「――あの男なら今頃死んでるから」
「……………え」
(死んでる……?どういうこと……?)
殿下の発言の意味をすぐには理解出来なかった。
そんな私を翻弄するかのように王女殿下は言葉を発した。
「王宮を離れたジークハルトの元に手練れの暗殺者たちを仕向けておいたわ。いくらあの男が剣術に優れているとはいえ、多勢に無勢。やられるのも時間の問題でしょうね」
「そ、そんな……!」
私だけではなく、王太子殿下まで始末しようとしているなんて。
(ど、どうにかして彼に知らせないと……!)
そうは思うものの、今の私に出来ることなど何もない。
「ああ、でもこうなったのも全部貴方のせいよ?」
「私……?」
「貴方がジークハルトと関わらなければ、彼が巻き込まれることも無かったでしょうね」
「……」
「人生で唯一優しくしてくれた男をこんな目に遭わせてしまうなんて……貴方って本当に疫病神なのね」
「……」
彼女の言うことは間違っていなかった。
アメリア王女の言う通り、最初から私と関わりを持たなければこのような目に遭うことも無かっただろう。
(私と出会わなければ……こんなことには……)
そんな後悔が今になって押し寄せてくる。
結局自分の気持ちを伝えられないまま、二度と会えなくなってしまうのか。
絶望に打ちひしがれる私の顔を見て、王女殿下がアハハッと声を上げて笑い始めた。
「最高じゃない!私はその顔が見たかったのよ!」
「……」
このようなことを平然とやってのける彼女はもはや人ではない。
女神の姿をした魔女だ。
「……」
絶望する私を嘲笑う彼女を呆然と見つめていたそのとき、ガチャリと部屋の扉が開けられた。
「あら、早かったのね」
「……貴方は」
中に入ってきたのは私の元夫であるルーカス様だった。
口ぶりからして、どうやら二人は協力者だったようだ。
「ちゃんとジークハルトを始末してきたのかしら?」
「ああ、君の計画通りだ。しっかりと事故死に偽装したからバレる心配は無い」
「……!」
彼は何の感情も宿していない、冷たい瞳で淡々とそう言った。
(ルーカス様……どうして……)
私の知っている彼はこのようなことをする人では無かった。
何がルーカス様をここまで変えてしまったのか。
(ああ……殿下……)
王太子殿下の死を知り、目の前が真っ暗になった。
「ここがどこかなんて、今そんなことが重要かしら?」
アメリア王女は私を馬鹿にするかのようにフフッと笑った。
(王女殿下……一体何故私を……)
「どうしてこのようなことを……?」
「何故ですって……?私はずっと貴方を痛い目に遭わせてやりたいと思っていたわ」
「……」
そう言った彼女の瞳には、私に対する憎悪が宿っていた。
思い当たる節が無いわけではなかった。
おそらくあの舞踏会での一件だろう。
それでもここまで憎まれていたとは驚きだが。
「あの舞踏会の日からずっと貴方が憎かった。王女である私を公衆の面前で辱めておいてただで済むと思っていないでしょうね?」
「……私はただ人として正しいことをしたまでです」
「……」
王女殿下の顔が固まった。
そして眉をひそめてハァとため息をついた。
「この状況になってまでそんなことを口にするだなんて……愚かにも程があるわ。」
「私はあのときの行動が間違っていたとは思いません」
「どうやら絶対に信念を曲げないようね」
「はい」
「でも貴方のその考え、本当に愚かだわ」
王女殿下は椅子から立ち上がってゆっくりと私に近付いた。
「ねぇ、貴方随分と余裕があるみたいだけどもしかしてジークハルトが助けに来てくれるとでも思っているのかしら?」
「何を……」
「そりゃあそう思っちゃうわよね。貴方は二度もあの男に助けられたんだもの。でもね、今回ばかりはそうはいかないわ」
「どういうことですか………?」
私が尋ねると、王女殿下は口角を上げた。
「――あの男なら今頃死んでるから」
「……………え」
(死んでる……?どういうこと……?)
殿下の発言の意味をすぐには理解出来なかった。
そんな私を翻弄するかのように王女殿下は言葉を発した。
「王宮を離れたジークハルトの元に手練れの暗殺者たちを仕向けておいたわ。いくらあの男が剣術に優れているとはいえ、多勢に無勢。やられるのも時間の問題でしょうね」
「そ、そんな……!」
私だけではなく、王太子殿下まで始末しようとしているなんて。
(ど、どうにかして彼に知らせないと……!)
そうは思うものの、今の私に出来ることなど何もない。
「ああ、でもこうなったのも全部貴方のせいよ?」
「私……?」
「貴方がジークハルトと関わらなければ、彼が巻き込まれることも無かったでしょうね」
「……」
「人生で唯一優しくしてくれた男をこんな目に遭わせてしまうなんて……貴方って本当に疫病神なのね」
「……」
彼女の言うことは間違っていなかった。
アメリア王女の言う通り、最初から私と関わりを持たなければこのような目に遭うことも無かっただろう。
(私と出会わなければ……こんなことには……)
そんな後悔が今になって押し寄せてくる。
結局自分の気持ちを伝えられないまま、二度と会えなくなってしまうのか。
絶望に打ちひしがれる私の顔を見て、王女殿下がアハハッと声を上げて笑い始めた。
「最高じゃない!私はその顔が見たかったのよ!」
「……」
このようなことを平然とやってのける彼女はもはや人ではない。
女神の姿をした魔女だ。
「……」
絶望する私を嘲笑う彼女を呆然と見つめていたそのとき、ガチャリと部屋の扉が開けられた。
「あら、早かったのね」
「……貴方は」
中に入ってきたのは私の元夫であるルーカス様だった。
口ぶりからして、どうやら二人は協力者だったようだ。
「ちゃんとジークハルトを始末してきたのかしら?」
「ああ、君の計画通りだ。しっかりと事故死に偽装したからバレる心配は無い」
「……!」
彼は何の感情も宿していない、冷たい瞳で淡々とそう言った。
(ルーカス様……どうして……)
私の知っている彼はこのようなことをする人では無かった。
何がルーカス様をここまで変えてしまったのか。
(ああ……殿下……)
王太子殿下の死を知り、目の前が真っ暗になった。
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