私は男爵令嬢ですよ?

だましだまし

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イルザックの考え

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翌朝、また我が家は少々バタついた。

まさかの断ったのに王子が!?と思えばイルザック・バーレイン…。
わざわざ迎えに来たらしい。

「あの…もう元気なんですが…」
「ああ、その…話したいことがある。だから一緒に登校して欲しい。王子たちが何か言わないよう寄り合い馬車の乗り降り場で降ろすから」

多分精一杯優しく話しているだろうに使用人もお母様も凄く引きつっている。
後で聞いたところ眼力が怖かったらしい…。
強面系イケメン、そんな怖いかなぁ。

で、そんな気が回せるならと、とりあえず馬に乗せてもらうことにした。
お母様や使用人を怖がらせているのに断って怒らせたら大変だしね。
あと…ちょっと彼の馬に乗りたかったのは正直、ある。

彼の愛馬は本当にキレイな栗色の馬で珍しい事に瞳が青い。
しかも大きくて筋肉質なのが見て分かるイルザック様にピッタリな馬なのだ。

意外な事に乗せてくれた場所は後ろで口説いてくる感じではない。
ありがたいし馬の揺れは心地良いし最高だ。

「こいつの事も…リックの事も怖くないんだな」
背中越しにそう言われた。
「大きくて立派でキレイなのに怖いわけないじゃないですか」
「敬語はいらない…。そうか…キレイか…」
「目も優しいです…優しいし青いのも珍しいわ」

顔が見えないから何を感じたのか分からないけど少し黙った。
何か変なことを言ったかと不安になると同時だった。
「頼む!」
と、大きな声が聞こえ思わずビックリした。
「なにを!?」
こちらも思わず裏返った声だけど大きく返してしまうとそれにビックリしたのが伝わった。

そのせいなのかヒラリとイルザック様だけ馬から降りて綱をひき始める。
いや、違う。
改めて顔を見て「頼む」と言ってきたので切実さを訴えるために顔を見て言うことにしたらしい。
ただ、繰り返されても何を頼みたいのかさっぱり分からない。

「頼む、だけじゃなくて、内容によるから頼みたい事を話してもらえないかな?」

少しの沈黙のあと、やっと彼は頼むしか伝えてないのに気付いたと言った。まじか。

「俺には…ソフィルナという婚約者がいる…伯爵令嬢だ」
知っている。
その兄には委員の判子を貰うときにお世話になった記憶がある。
結果的にファルス先輩とあのあと話せたから良かったけど。
「その…ソフィルナは…俺を見るたびお前の母親と同じ反応をする…」
「…えっと……」
怯えてたのがバレてたら気不味い。
「俺を怖がる」
バレてたわ、お母様。
申し訳なくて謝るも首をふられた。
「良いんだ。よくある普通の反応だ…。周りを威圧出来るのは騎士の素質としてありがたいと思うしな。ただ…」
「ただ…?」

「ソフィルナに怖がられるのが辛いんだ。どうしたらお前みたいに怖がらなくなる?教えてくれ!ずっと2人になって聞きたかったんだ!」

…ん?ずっと2聞きたかった?
「私のそばにいつもいたのって…」
「2人になる隙がないかと思ってな。入学式で俺を怖がらなかった時からどうしたら良いか聞きたかった。こんな女々しいこと、誰にも聞かせられない」

なんという事でしょう。
色々と間違った行動をしているのに自覚がありません。

「まず…多分ソフィルナ様はイルザック様が私に懸想していると勘違いしている」
「え!!!!」
心底驚いている。鈍過ぎではなかろうか。
「あと私が怖くないのに理由はない。怖くないから怖くない。」
「そ…そんな…」
「イルザック様に苦手な物はないの?」
「え?…えと…オクラのネバネバが…」
意外と可愛い苦手である。
「オクラが好きな人になぜ好きか理由を聞いたら好きになれますか?」
「無理だ!弟が好きだが全く理解できない」
「私が怖くないって話をしてもそうなると思います」
「なんてことだ…!」

なんてことだ、はこちらのセリフである。

「…もしかして、怖がらせるからとあまり会ってないのでは?」
「良く分かったな。なるべく接しないように、見ないようにしている」
分かりやすく逆効果である。
そりゃそれで私に侍ってたら婚約者の兄も怒るわな。

「まず私の近くにはもう来ないほうが良いかな。誤解されてるし」
「あぁ、それは困る。だが…俺の希望だったんだ…」
がっくり肩を落とし馬に跨り直して少し足を早める彼が可哀想になってきた。

「手紙はどうかな?」
「え?」
「手紙で気持ちを伝えたら怖いとかないでしょ?あとは彼女のお兄さんを交えて会ったら恐怖も薄れないかな?」
「!」
「オクラの話とか、親しみやすいから手紙に書いたらどう?それだけだと変だからご飯誘う手紙とかにさ」
「やっぱりアンジェは俺の希望だった!ありがとう!そうする!接さないようにと言うが何かあれば頼ってくれ!力になるからな!」
そう振り向き笑顔で言われたけどその笑顔は確かにちょっと怖いかもと思える眼力だった。
どうやら気持ちが高ぶると顔が怖くなるらしい。
少し気の毒である。

少し他の人の気持ちがわかったところで「前を見てくれないのは怖い」と言いつつ友達が一人増えたような気持ちになった。
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