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リレーするキスのパズルピース
魔法と結婚/4
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ファイル二。
藤色の剛毛で少し長めの短髪。鋭いアッシュグレーの瞳。駆け引きという名のカウンターパンチを仕掛けてくる男。
「そうか。じゃあ、明引呼……」
「それも違う」
否定という情報で、候補者が絞られてゆく。独健は今度は、今目の前にいる男と同じように、ある意味有名な人物を思い返す。
ファイル三。
漆黒の長い髪。聡明な好青年。瑠璃紺色の瞳。罠だとわからないように仕掛けてくる、策士のプロ中のプロ。
「じゃあ、また孔明にか?」
前にも、孔明に蓮は何かされたみたいな言い方だった。銀の長い前髪は疑問という動きで、首を傾げる。すると、隠していた鋭利なスミレ色の右目があらわになった。
「またとはどういう意味だ?」
ひとまず今は、愛していると言ってこいと策を仕掛けた人を捜索中。
「それはまたあとでだ。候補はまだいるからな」
ということで、独健は別の話は置いておいて、次の人物に迫った。
ファイル四。
ほとんど姿を表すことのない瞳。だが、それがひとたび、まぶたという扉から解放されると、災いを起こすような邪悪な目。女性的なマゼンダの長い髪。あの男も策士である。ただ、負ける、失敗する可能性の高いものを選ぶという自虐的な人物。
だが、独健は恐怖で震えそうになる。その人の名を言ってしまったがために、今この場に召喚されて現れるのではないかという戦慄の中で、恐る恐る唇が動いた。
「月……」
蓮はバカにしたように鼻で笑った。
「こんな簡単なことも当てられないとは、所詮お前の頭は紙クズ――」
暴言を浴びせられようが、二千年以上生きている独健には、そんなの取り合うレベルにも満たない。
「そう言うってことは、違うんだな」
そよ風でも交わすように次へ。
ファイル五。
山吹色のボブ髪。どこかいっているようでありながら、宝石のように異様にキラキラと輝く黄緑色の瞳。十七禁ワードは言うわ、私、僕、俺がごちゃ混ぜだわの、予測不可能な男。挙げ句の果て、無意識の直感という罠を仕掛けてきて、自身の言動に首を傾げる人物。
「焉貴……」
「…………」
さっきまで返ってきた返事がここでなくなった。なぜかはわからないが、蓮の綺麗な唇は微動だにしなかった。
だが、独健は知っていた。ふたりは大親友。友達に罠を仕掛けるとは、いくらあの風雲児でもしない。しかし、神から直感でもまた受けて、言動を起こしたのかと思って、何度も首を縦に振って、考え考えうなずいた。
「そうか……なるほどな。……焉貴に罠を仕掛けられたのか。珍しいな、お前と焉貴の間で策略なんて……」
「一度もそんなことはしていない。あいつは」
やはり、大親友には策など不要だったらしい。独健はしめたと思いニヤリとした。
「これも違うってことで……」
ラストふたり。隣の職場で、遠目に何度も見たことのある男を思い浮かべた。
ファイル六。
無感情、無動のはしばみ色の瞳。極端に短く切られた深緑の髪。一点集中で正直な男。
「夕霧……はあり得ないな。あれは真っ直ぐだから」
口にしてみたものの、違和感だらけだった。絶対不動で言ってこいということはあっても、罠を張れるような人物ではない。
そして最後。
ファイル七。
冷静な水色の瞳。紺の肩より長い髪。優雅な策士。
「残るはひとり。光だ。当たりだろう?」
蓮は気まずそうに咳払いをして、鏡のまわりにある裸電球へ瞳をやった。
「んんっ!」
「視線そらしたってことは合ってるってことだろう?」
二千三十六年に比べたら、八年など、赤子の手をひねるよりも容易いことだった。だが、蓮は肯定せず、態度デカデカでこんなことを言ってきた。
「早く、俺に言え。聞いてやる」
話が終わったと独健は思っていたが、まだ要求されたので、独健は少しだけ驚いた。
「お前、何を言ってるんだ?」
ゴーイングマイウェイの蓮と感覚的な独健。ふたりの間で、ちょっとした会話の行き違いが起きていた。だが、ここから話が、まるで雪が溶けた地面の上を、ソリが無理やり滑ろうとするように、ガリッガリに引っかかり続け始める。
劣勢になりたくない蓮。
恥ずかしやがり屋の独健。
蓮は独健とは視線を合わせずに、言おうとしたが、頭文字付近でつまずきまくりだった。
「んんっ! あ……あい……」
「あい? ん?」
独健の若草色の瞳には、横顔を見せている蓮が映っていた。だが、秀麗なそれがどんどん怒り色に染まっていき、こっちをにらみつけたかと思うと、とうとう怒鳴り声を上げた。
「あぁ~! 愛しているの返事だっっ!」
独健は思わず吹き出した。
「ぶっ!」
そっぽ向いたまま、蓮は両腕を組み、俺様全開で命令した。
「早く言え」
藤色の剛毛で少し長めの短髪。鋭いアッシュグレーの瞳。駆け引きという名のカウンターパンチを仕掛けてくる男。
「そうか。じゃあ、明引呼……」
「それも違う」
否定という情報で、候補者が絞られてゆく。独健は今度は、今目の前にいる男と同じように、ある意味有名な人物を思い返す。
ファイル三。
漆黒の長い髪。聡明な好青年。瑠璃紺色の瞳。罠だとわからないように仕掛けてくる、策士のプロ中のプロ。
「じゃあ、また孔明にか?」
前にも、孔明に蓮は何かされたみたいな言い方だった。銀の長い前髪は疑問という動きで、首を傾げる。すると、隠していた鋭利なスミレ色の右目があらわになった。
「またとはどういう意味だ?」
ひとまず今は、愛していると言ってこいと策を仕掛けた人を捜索中。
「それはまたあとでだ。候補はまだいるからな」
ということで、独健は別の話は置いておいて、次の人物に迫った。
ファイル四。
ほとんど姿を表すことのない瞳。だが、それがひとたび、まぶたという扉から解放されると、災いを起こすような邪悪な目。女性的なマゼンダの長い髪。あの男も策士である。ただ、負ける、失敗する可能性の高いものを選ぶという自虐的な人物。
だが、独健は恐怖で震えそうになる。その人の名を言ってしまったがために、今この場に召喚されて現れるのではないかという戦慄の中で、恐る恐る唇が動いた。
「月……」
蓮はバカにしたように鼻で笑った。
「こんな簡単なことも当てられないとは、所詮お前の頭は紙クズ――」
暴言を浴びせられようが、二千年以上生きている独健には、そんなの取り合うレベルにも満たない。
「そう言うってことは、違うんだな」
そよ風でも交わすように次へ。
ファイル五。
山吹色のボブ髪。どこかいっているようでありながら、宝石のように異様にキラキラと輝く黄緑色の瞳。十七禁ワードは言うわ、私、僕、俺がごちゃ混ぜだわの、予測不可能な男。挙げ句の果て、無意識の直感という罠を仕掛けてきて、自身の言動に首を傾げる人物。
「焉貴……」
「…………」
さっきまで返ってきた返事がここでなくなった。なぜかはわからないが、蓮の綺麗な唇は微動だにしなかった。
だが、独健は知っていた。ふたりは大親友。友達に罠を仕掛けるとは、いくらあの風雲児でもしない。しかし、神から直感でもまた受けて、言動を起こしたのかと思って、何度も首を縦に振って、考え考えうなずいた。
「そうか……なるほどな。……焉貴に罠を仕掛けられたのか。珍しいな、お前と焉貴の間で策略なんて……」
「一度もそんなことはしていない。あいつは」
やはり、大親友には策など不要だったらしい。独健はしめたと思いニヤリとした。
「これも違うってことで……」
ラストふたり。隣の職場で、遠目に何度も見たことのある男を思い浮かべた。
ファイル六。
無感情、無動のはしばみ色の瞳。極端に短く切られた深緑の髪。一点集中で正直な男。
「夕霧……はあり得ないな。あれは真っ直ぐだから」
口にしてみたものの、違和感だらけだった。絶対不動で言ってこいということはあっても、罠を張れるような人物ではない。
そして最後。
ファイル七。
冷静な水色の瞳。紺の肩より長い髪。優雅な策士。
「残るはひとり。光だ。当たりだろう?」
蓮は気まずそうに咳払いをして、鏡のまわりにある裸電球へ瞳をやった。
「んんっ!」
「視線そらしたってことは合ってるってことだろう?」
二千三十六年に比べたら、八年など、赤子の手をひねるよりも容易いことだった。だが、蓮は肯定せず、態度デカデカでこんなことを言ってきた。
「早く、俺に言え。聞いてやる」
話が終わったと独健は思っていたが、まだ要求されたので、独健は少しだけ驚いた。
「お前、何を言ってるんだ?」
ゴーイングマイウェイの蓮と感覚的な独健。ふたりの間で、ちょっとした会話の行き違いが起きていた。だが、ここから話が、まるで雪が溶けた地面の上を、ソリが無理やり滑ろうとするように、ガリッガリに引っかかり続け始める。
劣勢になりたくない蓮。
恥ずかしやがり屋の独健。
蓮は独健とは視線を合わせずに、言おうとしたが、頭文字付近でつまずきまくりだった。
「んんっ! あ……あい……」
「あい? ん?」
独健の若草色の瞳には、横顔を見せている蓮が映っていた。だが、秀麗なそれがどんどん怒り色に染まっていき、こっちをにらみつけたかと思うと、とうとう怒鳴り声を上げた。
「あぁ~! 愛しているの返事だっっ!」
独健は思わず吹き出した。
「ぶっ!」
そっぽ向いたまま、蓮は両腕を組み、俺様全開で命令した。
「早く言え」
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