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最後の恋は神さまとでした
神が空から降りてきた/3
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「記憶が定着してからの、全ての物事を覚えており、そこから可能性を導き出して、世のため人のために策を投じ、人々に幸せをもたらした。そなたの策は完璧だった」
孔明の功績を全て知っていると言うことだ。しかもそれは、純粋に策だけを見ればの話をしている。孔明は食い下がった。
「しかし、私の戦略ははずれ、戦いの全てに勝利はしていません。なぜ、このようなことが起こったのでしょう?」
知りたかった、孔明は長い月日知りたかった。それでも原因は死んで突き止めた。神である陛下には、人間である自身の心の声は今も聞こえているだろう。
陛下が予測した通り、孔明はそこを知りたがった。今の態度からして、本人は未だ対策が生み出せない。頭脳の人間には頭脳を持って制する。忠誠心を得るには、孔明の求めている答えを告げることだ。
陛下は少しだけ珍しく微笑む。
「そなたのその考え方ならば、人間同士では十分通用する。右に出るものはおるまい。しかし、そなたは大切なことをひとつ忘れていた」
「どのようなことですか?」
孔明はそう聞いて、ゴクリと生唾を飲み込んだ。自分がずっと考えてきたことだ、あの策が破られ、それに対してどんな対策をするべきだったのかが未だにわからないのだ。ここへ話を仕向けた陛下ならご存知だろう。
「この世界で大切なことは策ではない。心だ。人間のそなたが思ったこと考えたことは、そなたよりも霊層が上の霊や神の域のものには筒抜けだ。人を幸せにしたいと望んでいるそなたを、邪神界のものが邪魔するのは当然だ。そなたの作戦が失敗に終わるように、地上にいる人間を動かした。それは、この世界の者とっては簡単だ。つまり、そなたは考えていることを隠すべきだった――」
自分の中で考えて、勝つ可能性の高いものを選び取れば、それは霊的な存在には次に取る言動が筒抜けなのだ。思考回路を隠す。それでは思案できないのでは?
会いたいと思っていた人物は陛下だった。聞きたかった答えを持っているのも陛下だ。孔明は恐れ多くも正直に質問した。
「陛下は私と同じように、地上で生きていたとうかがっています。戦争を指揮する王として生きていらっしゃったとも聞いております。しかし、私のように負けることはございませんでした。邪神界に知られないために、どのような方法を用いたのですか? 神としてのお力を使われたのですか?」
「肉体を持った神はどこにも存在しない。私はそなたと同じ条件で指揮を取った」
輪廻転生を陛下も繰り返し、下々の者の苦しみや人間としての死の恐怖、そして邪神界――悪の感情を知っているからこそ、どこまでも強く優しくいられるのだ。
「それではなぜ?」
「それはこう考えていたからだ」
こうして、陛下の口から孔明が一番聞きたかった情報がもたらされた。
「あれがこうで、そうがああだから、こうする――だ」
自分の記憶力なら、指示語に置き換えても、何を意味しているのかわかる。それを陛下もしていて、数々の戦いに勝利したと言うことは、自分を超えているのだ。孔明は跪いて、頭を深く垂れた。
「参りました。陛下にお慕い申し上げます」
自分が負けたのだ。それなのに、陛下はやはり他の上に立つものとは違っていた。
「これからは、お前の望むことをするがよい」
「暖かいお言葉ありがとうございます」
孔明はさらに頭を深く下げた。場が静かになると、神世の住人となったと男から、天使の証である光る輪っかも立派な両翼も消え去った。
もうここにいる誰にも自分の心はのぞかれなくなり、神――平等となった。孔明は謁見の間から速やかに出てゆく。
(恐怖政治は続かない。人々を従わせるには言葉でなく、行動で示すほうが伝わる。だから、陛下は僕の職業を命令しない)
自分と入れ違いに、次の順番の人が呼ばれ陛下の前へ歩いてゆくのを背中にして、孔明は城の広い廊下を見渡した。
(ボクが神さま? 神さまの世界はどんなところなんだろう?)
制服も様々なものがあり、人間だけでなく、他の種族も当たり前のように話して、笑っている世界。それに違和感を持っている、新参者の自分はまだまだ心を磨かなくてはと思う孔明だった。
散策する。どんな政治形態なのか、どんな人々がいて、どんな話をしているのか。白い薄手の着物はゆったりと廊下を歩きながら、精巧な頭脳に記録しながら、自身の名前について考える。
(亮って漢字の意味は、明るい。ボクの名前は、孔明。重複表現だと思う)
歩いても歩いても廊下が続き、終わりがこない広大な城。さっきすれ違った人の話では、陛下の家だけでも地球五個分あるとという、桁違いの場所。
(それに、亮の漢字のもうひとつの意味は、まこと誠実。ボク、策が成功するためなら、嘘はたくさんつくんだよね。ボクにあってないと思う……。だから、死んでからやめちゃった)
孔明の功績を全て知っていると言うことだ。しかもそれは、純粋に策だけを見ればの話をしている。孔明は食い下がった。
「しかし、私の戦略ははずれ、戦いの全てに勝利はしていません。なぜ、このようなことが起こったのでしょう?」
知りたかった、孔明は長い月日知りたかった。それでも原因は死んで突き止めた。神である陛下には、人間である自身の心の声は今も聞こえているだろう。
陛下が予測した通り、孔明はそこを知りたがった。今の態度からして、本人は未だ対策が生み出せない。頭脳の人間には頭脳を持って制する。忠誠心を得るには、孔明の求めている答えを告げることだ。
陛下は少しだけ珍しく微笑む。
「そなたのその考え方ならば、人間同士では十分通用する。右に出るものはおるまい。しかし、そなたは大切なことをひとつ忘れていた」
「どのようなことですか?」
孔明はそう聞いて、ゴクリと生唾を飲み込んだ。自分がずっと考えてきたことだ、あの策が破られ、それに対してどんな対策をするべきだったのかが未だにわからないのだ。ここへ話を仕向けた陛下ならご存知だろう。
「この世界で大切なことは策ではない。心だ。人間のそなたが思ったこと考えたことは、そなたよりも霊層が上の霊や神の域のものには筒抜けだ。人を幸せにしたいと望んでいるそなたを、邪神界のものが邪魔するのは当然だ。そなたの作戦が失敗に終わるように、地上にいる人間を動かした。それは、この世界の者とっては簡単だ。つまり、そなたは考えていることを隠すべきだった――」
自分の中で考えて、勝つ可能性の高いものを選び取れば、それは霊的な存在には次に取る言動が筒抜けなのだ。思考回路を隠す。それでは思案できないのでは?
会いたいと思っていた人物は陛下だった。聞きたかった答えを持っているのも陛下だ。孔明は恐れ多くも正直に質問した。
「陛下は私と同じように、地上で生きていたとうかがっています。戦争を指揮する王として生きていらっしゃったとも聞いております。しかし、私のように負けることはございませんでした。邪神界に知られないために、どのような方法を用いたのですか? 神としてのお力を使われたのですか?」
「肉体を持った神はどこにも存在しない。私はそなたと同じ条件で指揮を取った」
輪廻転生を陛下も繰り返し、下々の者の苦しみや人間としての死の恐怖、そして邪神界――悪の感情を知っているからこそ、どこまでも強く優しくいられるのだ。
「それではなぜ?」
「それはこう考えていたからだ」
こうして、陛下の口から孔明が一番聞きたかった情報がもたらされた。
「あれがこうで、そうがああだから、こうする――だ」
自分の記憶力なら、指示語に置き換えても、何を意味しているのかわかる。それを陛下もしていて、数々の戦いに勝利したと言うことは、自分を超えているのだ。孔明は跪いて、頭を深く垂れた。
「参りました。陛下にお慕い申し上げます」
自分が負けたのだ。それなのに、陛下はやはり他の上に立つものとは違っていた。
「これからは、お前の望むことをするがよい」
「暖かいお言葉ありがとうございます」
孔明はさらに頭を深く下げた。場が静かになると、神世の住人となったと男から、天使の証である光る輪っかも立派な両翼も消え去った。
もうここにいる誰にも自分の心はのぞかれなくなり、神――平等となった。孔明は謁見の間から速やかに出てゆく。
(恐怖政治は続かない。人々を従わせるには言葉でなく、行動で示すほうが伝わる。だから、陛下は僕の職業を命令しない)
自分と入れ違いに、次の順番の人が呼ばれ陛下の前へ歩いてゆくのを背中にして、孔明は城の広い廊下を見渡した。
(ボクが神さま? 神さまの世界はどんなところなんだろう?)
制服も様々なものがあり、人間だけでなく、他の種族も当たり前のように話して、笑っている世界。それに違和感を持っている、新参者の自分はまだまだ心を磨かなくてはと思う孔明だった。
散策する。どんな政治形態なのか、どんな人々がいて、どんな話をしているのか。白い薄手の着物はゆったりと廊下を歩きながら、精巧な頭脳に記録しながら、自身の名前について考える。
(亮って漢字の意味は、明るい。ボクの名前は、孔明。重複表現だと思う)
歩いても歩いても廊下が続き、終わりがこない広大な城。さっきすれ違った人の話では、陛下の家だけでも地球五個分あるとという、桁違いの場所。
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