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最後の恋は神さまとでした
本気のサヨナラの向こうに/4
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「ここで問題だ! 歴史上で明智といえば!」
「あの、本能寺を燃やしちゃった人だよね?」
倫礼(仮)は即答だった。何て言い草だと思って、コウは女の頭をパシンと叩いた。
「お前バカだなぁ。あれはきちんとした理由があったんだぞ。嫉妬でもない恨みでもない、神の領域の話だ」
赤と青のくりっとした瞳を、女はまっすぐ見つめて、宝物でももらったように微笑んだ。
「うん、知ってるよ。あの時代だけじゃなくて、今の私たちも幸せに暮らせるようにしたことだって」
神の領域へと上がった孔明が理解したことと、倫礼(仮)はまったく同じ解釈をしていた。
光秀の人柄は知っている。尊敬できる人物と関わることができて、それだけでとても幸せな気持ちになる。
コウはなぜか偉そうにふんぞり返った。
「あれは究極の慈愛の精神だ」
「その人の娘さんが、自分に力を与えてくれるんだね?」
「そうだ」
自分のような魂も宿る価値のない人間に手を貸してくれる。尊い存在に出会い感動の涙が今度は頬を伝ってゆく。
「じゃあ、感謝……しなくちゃ……ね」
神経を研ぎ澄まして、霊感で見える世界を広げていっても、もう誰もそこにいない。失踪してきた家族の誰にも魂は宿っていない。憎しみや恨みの矛先がどこにもない。
激変してしまった地球上で、倫礼(仮)は戸惑いと悲しみの渦に飲まれ続ける。
しばらく待っていた彼女が泣き止むことはなく、コウは珍しく優しく声をかけた。
「泣いても何も変わらないぞ。何でも明るく前向きに取らないとな。学んだだろう? 今までの魂で」
「そう……だね」
三十人近く魂が入れ替わり、人それぞれの価値観や気持ちを、間接的ではなく直接的に学べたいい経験だった。完璧な人は誰もいなかったが、尊敬すべきところはたくさんあった。
性格や好みが変わる。それは彼女に多大な影響をもたらしていて、今女は本当の自分がどんななのか、好きなものが何なのか、どんな性格なのかわからなくもなっていた。
そんな気持ちも、神であるコウは読み取って、暖かい毛布でもかぶせるように優しく言う。
「お前の霊的な名前はこれ以上は変わらないから、もう安心しろ」
「うん……」
変わらないということは、未来を見る神からすれば、自身は霊層が低いまま、魂が宿ることなく一生を終え、倫礼の本体に吸収されるという意味だ。
あれだけ学んだ理論だったが、孔明のように条件が何で、叶える方法がどれかを彼女は感情を抜きにして考えることができなかった。
光は差し込んでいるのに、顔を膝に埋めたまま見ようとしていない――あきらめてしまったのだ。
「だから、明智 倫礼の名を名乗ってもいい」
「うん、ありがとうございます」
コウはまるで最後の別れというように、ひとつひとつ言い残してゆく。
「お前の霊層ならギリギリ選択権はある。神さまがお前の全てをコントロールすることはない。その代わりお前の責任で全てをやれ」
「うん……」
決められた人生という線路に乗せられないが、幸せばかりとは限らない未来。
倫礼の気持ちを待たずして、コウの話は続いてゆく。
「それから、大人の神様に会ったら、そいつのことよく見るんだぞ」
「うん……」
「あとは、今まで話題に上った神なら、お前が呼べばきてくれる。神様は人間みたいに、差別はしないからな。魂の入っていないお前でも、入っているやつと同じように守護してくれるぞ」
「うん……」
大きな朗報だった。今まで伝えられた神の名前は百近くにのぼる。彼らが守護神となってくれるのだ。鬼に金棒とはまさしくこのとだった。
コウは緑色の光を発しながら、ふわふわと蛍火のように上がってゆく。
「それから、霊感を使って占い師にはなるなよ」
「どうして?」
「占いは人の人生を背負う。過去世を見るならなおさらだ。お前は人の影響を受けやすい。だから、お前には向かない。精神を壊すぞ」
「そうか……」
倫礼は思い出す。気さくで人の良さそうな人の過去世が殺人鬼だったという話もあったと。罪を償っている以上、その人を責めることは誰にもできないのだ。
「あの、本能寺を燃やしちゃった人だよね?」
倫礼(仮)は即答だった。何て言い草だと思って、コウは女の頭をパシンと叩いた。
「お前バカだなぁ。あれはきちんとした理由があったんだぞ。嫉妬でもない恨みでもない、神の領域の話だ」
赤と青のくりっとした瞳を、女はまっすぐ見つめて、宝物でももらったように微笑んだ。
「うん、知ってるよ。あの時代だけじゃなくて、今の私たちも幸せに暮らせるようにしたことだって」
神の領域へと上がった孔明が理解したことと、倫礼(仮)はまったく同じ解釈をしていた。
光秀の人柄は知っている。尊敬できる人物と関わることができて、それだけでとても幸せな気持ちになる。
コウはなぜか偉そうにふんぞり返った。
「あれは究極の慈愛の精神だ」
「その人の娘さんが、自分に力を与えてくれるんだね?」
「そうだ」
自分のような魂も宿る価値のない人間に手を貸してくれる。尊い存在に出会い感動の涙が今度は頬を伝ってゆく。
「じゃあ、感謝……しなくちゃ……ね」
神経を研ぎ澄まして、霊感で見える世界を広げていっても、もう誰もそこにいない。失踪してきた家族の誰にも魂は宿っていない。憎しみや恨みの矛先がどこにもない。
激変してしまった地球上で、倫礼(仮)は戸惑いと悲しみの渦に飲まれ続ける。
しばらく待っていた彼女が泣き止むことはなく、コウは珍しく優しく声をかけた。
「泣いても何も変わらないぞ。何でも明るく前向きに取らないとな。学んだだろう? 今までの魂で」
「そう……だね」
三十人近く魂が入れ替わり、人それぞれの価値観や気持ちを、間接的ではなく直接的に学べたいい経験だった。完璧な人は誰もいなかったが、尊敬すべきところはたくさんあった。
性格や好みが変わる。それは彼女に多大な影響をもたらしていて、今女は本当の自分がどんななのか、好きなものが何なのか、どんな性格なのかわからなくもなっていた。
そんな気持ちも、神であるコウは読み取って、暖かい毛布でもかぶせるように優しく言う。
「お前の霊的な名前はこれ以上は変わらないから、もう安心しろ」
「うん……」
変わらないということは、未来を見る神からすれば、自身は霊層が低いまま、魂が宿ることなく一生を終え、倫礼の本体に吸収されるという意味だ。
あれだけ学んだ理論だったが、孔明のように条件が何で、叶える方法がどれかを彼女は感情を抜きにして考えることができなかった。
光は差し込んでいるのに、顔を膝に埋めたまま見ようとしていない――あきらめてしまったのだ。
「だから、明智 倫礼の名を名乗ってもいい」
「うん、ありがとうございます」
コウはまるで最後の別れというように、ひとつひとつ言い残してゆく。
「お前の霊層ならギリギリ選択権はある。神さまがお前の全てをコントロールすることはない。その代わりお前の責任で全てをやれ」
「うん……」
決められた人生という線路に乗せられないが、幸せばかりとは限らない未来。
倫礼の気持ちを待たずして、コウの話は続いてゆく。
「それから、大人の神様に会ったら、そいつのことよく見るんだぞ」
「うん……」
「あとは、今まで話題に上った神なら、お前が呼べばきてくれる。神様は人間みたいに、差別はしないからな。魂の入っていないお前でも、入っているやつと同じように守護してくれるぞ」
「うん……」
大きな朗報だった。今まで伝えられた神の名前は百近くにのぼる。彼らが守護神となってくれるのだ。鬼に金棒とはまさしくこのとだった。
コウは緑色の光を発しながら、ふわふわと蛍火のように上がってゆく。
「それから、霊感を使って占い師にはなるなよ」
「どうして?」
「占いは人の人生を背負う。過去世を見るならなおさらだ。お前は人の影響を受けやすい。だから、お前には向かない。精神を壊すぞ」
「そうか……」
倫礼は思い出す。気さくで人の良さそうな人の過去世が殺人鬼だったという話もあったと。罪を償っている以上、その人を責めることは誰にもできないのだ。
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