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最後の恋は神さまとでした
これ以上は無理!/3
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電話の向こうで調子よく答えた張飛に、孔明はまだ疑いを解かない。
『なら、いいんだけど……』
『俺っちも、光秀さんにお世話になるっすか』
感慨深いため息交じりに張飛が言った。
『張飛は聖獣隊で同じ職場だったもんね』
『そうっす。まさか義理の父親になるとは夢にも思わなかったっす。孔明と結婚するとは思ってたっすが……』
『そうだったんだ』
大雑把で見落としているかと思いきや、張飛は意外と細かいところに気づいているのだ。ひとりヤキモキしていたのが嘘のように、孔明の心を温かくする。
『宇宙船で他の宇宙へ行く時、俺っち寂しかったす。孔明と離れ離れになるんすから』
『全然そんな風には見えなかったけど……』
絆とラブラブで去ってゆく後ろ姿は今でも鮮明に覚えている。
『空元気ってやつっすよ』
胸を締めつけられるような想いはお互い様だったようだ。孔明は結婚という敵の大将へとうとう一手をかける。
『ところで、張飛、話があるんだけど……』
『何すか?』
今回の企みを張飛に言い渡して、意識は今へと戻ってきた。計画通りうまくいったのだ。孔明はほくそ笑みながら、座席の上で足を妖艶に組み替えた。
明智家では子供たちが大泣きをしていた。大先生は独身生活を長い間楽しんできた。唯一の弱点は、家庭を知らないことだ。大失態を放っておくわけにはいかず、
「電話、電話」
倫礼は携帯電話をタップした。
「あ、つながった」
さっきの圏外も嘘だったのかもしれない。しかしそんなことよりも、今は泣いている子供たちをどうにかしなくては。
「孔明さん、子供たちが今は兄弟がこれ以上増えるのは無理だって、泣き出しちゃいましたよ」
テレビ電話の画面の中で、孔明の凛々しい眉がハの字に歪んだ。新米パパは慣れない感じで謝る。
『ごめ~ん。泣かせるつもりじゃなかったんだけど、ごめんね、みんな。パパが急いだばっかりに、辛い思いさせちゃったみたいで』
大先生の策は子供たちにしっかり阻止されてしまったのである。
知らない大人がやってきて、パパになると言う。今までは、誰かのパパで知ってる大人だった。それならば、倫礼は孔明に提案した。
「結婚はしばらくおいておいて、張飛さんが家族で遊びにくればいいんじゃないですか? そうしたら、少しずつ慣れてくだろうし」
『そうだね、それがいいね』
子供たちは目を真っ赤にしていたが泣き止んで、親指を口に加えている子が何人かぼうっとしばらく立っていた。
*
首都のある宇宙から、遠くの宇宙へ移動して、打ち合わせをしながら、講演内容や日程を決めていく日々が、孔明と紅朱凛に始まった。そして、必ずと言っていいほど同じところで引っかかるのだ。
「お金という制度を利用して――」
「お金とは何ですが?」
やけになまった言葉で聞き返される。陛下が統治されてから広まった経済制度のお金。それは遠くの宇宙にはまだ広まっていない。広まっていたとしても、使う必要がないと考えている人が大勢いる。そんな現実に孔明は出会ってしまったのだ。
地球で生きてきてから、今日までの日々を総動員して、講義の内容を立てようにも、根本的な価値観が違っている。孔明は自然と、宇宙船の窓から星々を眺め考えることが多くなった。
(他の宇宙はお金という制度がほとんど存在してない。ボクの理論じゃ通用しない。もっと勉強を重ねないといけない)
あちこちの宇宙で本を買いあさり、片っ端から記憶してゆく日々。寝る暇も惜しんで頭に叩き込む。だが、疲れの色が見えてきた。
長い間、助手をしてきた紅朱凛はある日、ホテルのベッドで眠りにつく前に、心配そうに話しかけた。
「一度休んだほうがいいんじゃない?」
「ううん、陛下のご意思を貫きたい」
大変なことほど、やりがいはあるし、面白い。ただ、量と歴史が膨大なだけで、これを突破した向こうに、陛下のご命令に添えるという喜びが待っている。その一心で、孔明は前に進もうとしていた。
『なら、いいんだけど……』
『俺っちも、光秀さんにお世話になるっすか』
感慨深いため息交じりに張飛が言った。
『張飛は聖獣隊で同じ職場だったもんね』
『そうっす。まさか義理の父親になるとは夢にも思わなかったっす。孔明と結婚するとは思ってたっすが……』
『そうだったんだ』
大雑把で見落としているかと思いきや、張飛は意外と細かいところに気づいているのだ。ひとりヤキモキしていたのが嘘のように、孔明の心を温かくする。
『宇宙船で他の宇宙へ行く時、俺っち寂しかったす。孔明と離れ離れになるんすから』
『全然そんな風には見えなかったけど……』
絆とラブラブで去ってゆく後ろ姿は今でも鮮明に覚えている。
『空元気ってやつっすよ』
胸を締めつけられるような想いはお互い様だったようだ。孔明は結婚という敵の大将へとうとう一手をかける。
『ところで、張飛、話があるんだけど……』
『何すか?』
今回の企みを張飛に言い渡して、意識は今へと戻ってきた。計画通りうまくいったのだ。孔明はほくそ笑みながら、座席の上で足を妖艶に組み替えた。
明智家では子供たちが大泣きをしていた。大先生は独身生活を長い間楽しんできた。唯一の弱点は、家庭を知らないことだ。大失態を放っておくわけにはいかず、
「電話、電話」
倫礼は携帯電話をタップした。
「あ、つながった」
さっきの圏外も嘘だったのかもしれない。しかしそんなことよりも、今は泣いている子供たちをどうにかしなくては。
「孔明さん、子供たちが今は兄弟がこれ以上増えるのは無理だって、泣き出しちゃいましたよ」
テレビ電話の画面の中で、孔明の凛々しい眉がハの字に歪んだ。新米パパは慣れない感じで謝る。
『ごめ~ん。泣かせるつもりじゃなかったんだけど、ごめんね、みんな。パパが急いだばっかりに、辛い思いさせちゃったみたいで』
大先生の策は子供たちにしっかり阻止されてしまったのである。
知らない大人がやってきて、パパになると言う。今までは、誰かのパパで知ってる大人だった。それならば、倫礼は孔明に提案した。
「結婚はしばらくおいておいて、張飛さんが家族で遊びにくればいいんじゃないですか? そうしたら、少しずつ慣れてくだろうし」
『そうだね、それがいいね』
子供たちは目を真っ赤にしていたが泣き止んで、親指を口に加えている子が何人かぼうっとしばらく立っていた。
*
首都のある宇宙から、遠くの宇宙へ移動して、打ち合わせをしながら、講演内容や日程を決めていく日々が、孔明と紅朱凛に始まった。そして、必ずと言っていいほど同じところで引っかかるのだ。
「お金という制度を利用して――」
「お金とは何ですが?」
やけになまった言葉で聞き返される。陛下が統治されてから広まった経済制度のお金。それは遠くの宇宙にはまだ広まっていない。広まっていたとしても、使う必要がないと考えている人が大勢いる。そんな現実に孔明は出会ってしまったのだ。
地球で生きてきてから、今日までの日々を総動員して、講義の内容を立てようにも、根本的な価値観が違っている。孔明は自然と、宇宙船の窓から星々を眺め考えることが多くなった。
(他の宇宙はお金という制度がほとんど存在してない。ボクの理論じゃ通用しない。もっと勉強を重ねないといけない)
あちこちの宇宙で本を買いあさり、片っ端から記憶してゆく日々。寝る暇も惜しんで頭に叩き込む。だが、疲れの色が見えてきた。
長い間、助手をしてきた紅朱凛はある日、ホテルのベッドで眠りにつく前に、心配そうに話しかけた。
「一度休んだほうがいいんじゃない?」
「ううん、陛下のご意思を貫きたい」
大変なことほど、やりがいはあるし、面白い。ただ、量と歴史が膨大なだけで、これを突破した向こうに、陛下のご命令に添えるという喜びが待っている。その一心で、孔明は前に進もうとしていた。
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