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最後の恋は神さまとでした
おまけの打ち上げ/2
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「昔話や、趣味の話です」
「そういえば、明と月さんの趣味って何ですか?」
明引呼は肉の切れ端を口へ押し込んだ。
「オレは仕事仕事でよ、趣味っつうのがあんまりねえんだよな」
「月さんは?」
「僕は盆栽です」
颯茄はパッと笑顔になって話を拾った。
「素敵な盆栽なんですよね。家族で大きな木を眺めているモチーフで作ってあったりとかするんです」
精巧にできたミニチュア――箱庭で、颯茄は盆栽など興味がなかったのに、一気に楽しみに変わったのだった。メインのステーキよりも、野菜やスープを口に運んでいる月命に、妻は問いかける。
「あと最近、始めたことありますよね?」
「お茶です」
「縁側と日本庭園を自宅に作ったんです。月さん用に」
「えぇ、作っていただきました」
ニコニコの笑顔というよりは、今はにっこり微笑んでいる月命だった。
「最初は遠慮してたんです。洋風のガーデニングを、子供たちが楽しんでやっているので、景観を壊してはいけないと言って」
颯茄は庭園ができるまでの経緯を考えると、なぜだかほっとするのだった。
「でも、家族じゃないですか。やってほしいわけですよ。庭の隅の方が空いていたので、そこに日本庭園作って、茶室に縁側もあるんです。離れなので、そこへ行くまでは金色の渡り廊下を歩いてゆくんです」
「明引呼をはじめとする、みんなが遊びにきてくれますよ」
「今では、夫婦の憩いの場と化してます」
天井と壁も金色に塗られている、廊下を歩いてゆくと、自然と心が落ち着いていき、縁側へ立つ頃には和の心で望めるのだ。
颯茄はステーキを小さく切って、口の中へ入れて肉汁と肉の弾力をかみしめるように味わう。何度食べてもあきのこないどころか、いくらでも食べられてしまう美味しさが麻薬のように、彼女に襲いかかる。
まだ話は途中で、彼女は何とか誘惑に打ち勝ち、順番の人の名を呼んだ。
「それでは、次の人は光さんです。どうでしたか?」
「よくまとまっていたのではありませんか」
「ありがとうとざいます。バイセクシャルの複数婚の突破口となる人物の一人が光さんなので、どうしても、話が多くなってしまいました」
何度もバランスを見た結果だったが、訂正するにしても、どうしても抜かすわけにもいかず、苦渋の選択をしたところだった。
「いいんじゃない?」
旦那たちから賛同を得たところで、颯茄はほっと胸をなで下ろした。
「じゃあ、同じ時期に出たというか、同い年の従兄弟である夕霧さんはどうでしたか?」
「躾隊の制服を着たのが懐かしかった」
芸術的な美しさでワイングラスを持ち上げた夕霧命は、珍しく目を細めて微笑んでいた。颯茄はテーブルに身を乗り出す。
「確かにそうだ! 昔着てたのが嘘みたいに、今は袴姿が板についてしまっているので、忘れてた」
姿勢がいいのではなく、人としての魅力と色気が臭い出る立ち姿で、何を着ても似合ってしまうのだ。颯茄はステーキのことも忘れ、夕霧命の出立を思い出して堪能する。
「キスの修業とかどうしたの?」
孔明の声に我に返り、颯茄はいつの間にか閉じていたまぶたを開いた。
「それは別のところで使ったので、今回のに入れてません。そういう話入れたら、もっと長くなってます」
結婚するのが目的で、結婚後のことはほとんど入れていなかった。駆け足で追ってきた、みんなの馴れ初め。
「それでは、孔明さん」
「ボク~?」
「そうです。どうでしたか?」
「あってるところもあれば、そうじゃないところもあったかも?」
静かに食べていた旦那たちが驚きの声を上げた。
「マジか!?」
「孔明のところだけ、撮り直しじゃない?」
夫たちから意見が上がるが、颯茄は慣れた感じで聞き流す。
「いやいや、もう終わってますよ。放送までしちゃったし」
「嘘かも?」
孔明はそう言って、春風が吹いたみたいに柔らかにふふっと笑った。罠だった。颯茄は憤慨したふりをする。
「もう、悪戯ばっかりして」
「孔明の話は少々切なかったです~」
ステーキをのんびり食べている月命から意見が飛んできた。
「そういえば、明と月さんの趣味って何ですか?」
明引呼は肉の切れ端を口へ押し込んだ。
「オレは仕事仕事でよ、趣味っつうのがあんまりねえんだよな」
「月さんは?」
「僕は盆栽です」
颯茄はパッと笑顔になって話を拾った。
「素敵な盆栽なんですよね。家族で大きな木を眺めているモチーフで作ってあったりとかするんです」
精巧にできたミニチュア――箱庭で、颯茄は盆栽など興味がなかったのに、一気に楽しみに変わったのだった。メインのステーキよりも、野菜やスープを口に運んでいる月命に、妻は問いかける。
「あと最近、始めたことありますよね?」
「お茶です」
「縁側と日本庭園を自宅に作ったんです。月さん用に」
「えぇ、作っていただきました」
ニコニコの笑顔というよりは、今はにっこり微笑んでいる月命だった。
「最初は遠慮してたんです。洋風のガーデニングを、子供たちが楽しんでやっているので、景観を壊してはいけないと言って」
颯茄は庭園ができるまでの経緯を考えると、なぜだかほっとするのだった。
「でも、家族じゃないですか。やってほしいわけですよ。庭の隅の方が空いていたので、そこに日本庭園作って、茶室に縁側もあるんです。離れなので、そこへ行くまでは金色の渡り廊下を歩いてゆくんです」
「明引呼をはじめとする、みんなが遊びにきてくれますよ」
「今では、夫婦の憩いの場と化してます」
天井と壁も金色に塗られている、廊下を歩いてゆくと、自然と心が落ち着いていき、縁側へ立つ頃には和の心で望めるのだ。
颯茄はステーキを小さく切って、口の中へ入れて肉汁と肉の弾力をかみしめるように味わう。何度食べてもあきのこないどころか、いくらでも食べられてしまう美味しさが麻薬のように、彼女に襲いかかる。
まだ話は途中で、彼女は何とか誘惑に打ち勝ち、順番の人の名を呼んだ。
「それでは、次の人は光さんです。どうでしたか?」
「よくまとまっていたのではありませんか」
「ありがとうとざいます。バイセクシャルの複数婚の突破口となる人物の一人が光さんなので、どうしても、話が多くなってしまいました」
何度もバランスを見た結果だったが、訂正するにしても、どうしても抜かすわけにもいかず、苦渋の選択をしたところだった。
「いいんじゃない?」
旦那たちから賛同を得たところで、颯茄はほっと胸をなで下ろした。
「じゃあ、同じ時期に出たというか、同い年の従兄弟である夕霧さんはどうでしたか?」
「躾隊の制服を着たのが懐かしかった」
芸術的な美しさでワイングラスを持ち上げた夕霧命は、珍しく目を細めて微笑んでいた。颯茄はテーブルに身を乗り出す。
「確かにそうだ! 昔着てたのが嘘みたいに、今は袴姿が板についてしまっているので、忘れてた」
姿勢がいいのではなく、人としての魅力と色気が臭い出る立ち姿で、何を着ても似合ってしまうのだ。颯茄はステーキのことも忘れ、夕霧命の出立を思い出して堪能する。
「キスの修業とかどうしたの?」
孔明の声に我に返り、颯茄はいつの間にか閉じていたまぶたを開いた。
「それは別のところで使ったので、今回のに入れてません。そういう話入れたら、もっと長くなってます」
結婚するのが目的で、結婚後のことはほとんど入れていなかった。駆け足で追ってきた、みんなの馴れ初め。
「それでは、孔明さん」
「ボク~?」
「そうです。どうでしたか?」
「あってるところもあれば、そうじゃないところもあったかも?」
静かに食べていた旦那たちが驚きの声を上げた。
「マジか!?」
「孔明のところだけ、撮り直しじゃない?」
夫たちから意見が上がるが、颯茄は慣れた感じで聞き流す。
「いやいや、もう終わってますよ。放送までしちゃったし」
「嘘かも?」
孔明はそう言って、春風が吹いたみたいに柔らかにふふっと笑った。罠だった。颯茄は憤慨したふりをする。
「もう、悪戯ばっかりして」
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ステーキをのんびり食べている月命から意見が飛んできた。
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