明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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歌を作ってみた

スローダンス:明引呼の場合

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「明、今いい?」
「おう、いいぜ」

 ドアの向こうから、明引呼のしゃがれた声が返ってきた。颯茄が中をのぞくと、

「仕事終わった?」

 明引呼はソファーに寝転がっていた。首だけもたげて、

「何言ってんだ? 今日は休みだろ」
「それなのに、書斎にいるの?」
「ここは居心地がいいんだよ」
「そうなんだ。いい職場でよかったね」
「職場も何も、自宅で仕事なんだからよ。快適さ重視だろ」

 社長として毎日、農場へ行っていた頃が懐かしい。孔明の助言のもと、在宅勤務となったが、明引呼はこれはこれでよかったのだ。

 颯茄はソファーのそばまで歩いていき、

「今日はね。明のことを思って書いた曲を持ってきたよ」
「おう、そりゃ、楽しみだ。聞かせろや」

 物悲しいバラードが流れ出した。

【スローダンス】

お前と幻のスローダンス
愛の言葉つぶやいて
今夜はお前とスローダンス
儚い夢はまた夢

楽しそうにダンスを踊る二人
グラス傾け眺める
もっとシンプルなら 悩んだりもしない

お前が男で 結婚していて
素直になれるはずもなく 嘘をつき続ける

お前と踊りたいスローダンス
月明かりが照らし出す
今夜は一人でスローダンス
温もり思いながら


追いかけては逃げていくお前
去ると追いかけてきて
気のないそぶりなら ジレンマに落ちない

俺が男で 結婚していて
惚れてしまったのがツキで 偽りに満ちる

お前と幻のスローダンス
愛の言葉つぶやいて
今夜はお前とスローダンス
儚い夢はまた夢


お前と踊りたいスローダンス
月明かりが照らし出す
今夜は一人でスローダンス
温もり思いながら

触れてもいいのかスローダンス
愛の言葉ささやいて
今夜は本気でスローダンス
心も体も通って

今夜はお前とスローダンス

触れてもいいのかスローダンス

Youtubeリンク
https://youtu.be/-oZB1F1UhH4 


 曲が終わると、明引呼はソファの上で寝返りを打った。

「これって、貴とのことってか?」
「月さんとの方がよかった?」

 颯茄が首を傾げると、ブラウンの長い髪が肩からサラッと落ちた。

「あれとダンス踊るんならよ。それなりにサマになってったんじゃねえか。オレと貴だと、でけえ男二人で踊ることになんぜ」
「それが素敵なんでしょ。だから、この相手は貴増参さんだよ」
「切ねえ歌だな。惚れてんのに、何もできねえんだからよ」

 明引呼は気怠くソファーから起き上がった。急に目線が高くなった夫を妻は見上げる。

「実際そうだった?」
「だろ。どっちも結婚してんだぜ。ガキもいるしよ。オレはどうしちまったんだって、少しは悩んだぜ」
「悩むよね。同性愛のない世界で、同性を好きになって、しかも相手も自分も結婚してるなんて。詰んだって感じだよね」
「がよ、世の中意味のねえことなんてねえんだよ。からよ、そのうちどうにかなったかもなって思ってたぜ」
「さすが、神様。心が強くて前向きだ」

 颯茄は携帯を小脇に抱えて、称賛の拍手を送った。

「今夜、貴増参と踊っか。踊ったことねえんだよな、あれとは」
「ないの!?」

 妻としてはびっくりである。愛し合っているのだから。

「ねえだろ。ダンスパーティーに行くわけでもねえし、家には他に踊る相手なんてたくさんいんだからよ」
「そうか。私は光さんと踊ったことあるけどね」

 颯茄は思い出すと、ふわふわとしてしまうのだ。明引呼はしっかり突っ込む。

「れってよ。踊りに行ったんじゃなくて、に行ったんだろ」
「それは光さんと私じゃ避けられないでしょ」

 近くに寄れば、大人の情事に必ずなってしまう、颯茄と光命。

「踊れえや、踊りに行ったんだから。してねえで」
「それができたら、今頃こうなってない」

 ドアの向こうの廊下を、子供たちがキャーキャー言いながら通り過ぎてゆく。

「ガキ増えまくって大変だからな」
「それは光さんが子供を欲しかるからなんだよね」
「あれは、結婚したら変わるタイプだっだな」
「あ、光さんと明がダンスを踊ればいいんじゃない?」
「その組み合わせもいいな」

 明引呼は今夜、誰とスローダンスを踊るのか――。
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