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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
心霊探偵と心霊刑事/13
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やがて、崇剛は口を開いた。
「私には……三百五十一年前に関係しているように見えます。そちらの霊視は違うみたいですね」
よくある話だ、他の聖霊師が間違えることなど。五十年も変われば、時代背景もだいぶ違うだろう。異議を唱えるものが出てきた以上、このまま放置するわけにもいかない。
そうしてまた、沈黙がふたりに降りた。
「…………」
「…………」
妙な間が流れ、他の職員たちの咳払いや風の音が何度か起きた。国立は吸っていた葉巻を灰皿に乱暴に投げつける。
「情報渡しやがれ。てめえだけ、持ってくんじゃねえ。バックドロップだ!」
「えぇ、構いませんよ」
しれっと了承した。優雅な貴公子はお気に入りになってしまった、マニアックな笑いが。
国立は葉巻を指に挟んで、油断も隙もないと思いながら、口の端でニヤリとする。
「テーブル挟んだ状態でできるか! てめえのバックを、オレが取んだろうが。いいから、言いやがれ。同じ笑い取ってくるんじゃねえ」
シリアスシーンにいつ仕掛けられるかわからない、笑いという名の罠。崇剛はくすくすと軽く笑い、さらに策の回収に入った。
「先ほど、そちらの近くを通ってきましたが、呪縛霊や地縛霊ではありませんでしたよ。審神者をしていないので、正確にはわかりませんが……」
「てめえ、知ってんなら最初から言ってきやがれ! 確かめるためだけに聞いてくるんじゃねえ」
国立はあきれた顔をした。合理主義にも程があると。事故が起きているのは知っていても、それが心霊関係とは限らない。しかし、国立が何の疑いもなしに、事件資料を取りに行けば、答えはもう出たのだ。
紅茶で気持ちを引きしめて、崇剛は真面目に話し出した。
「千恵さんの言葉と、念が見せた場面と関係しているかもしれません」
「どの言葉だ?」
「恩田 元を逮捕した時の、首のアザがいつできたかの質問に対する、千恵さんの回答は『三月の下旬……だったと思います』です」
崇剛に言われて、国立は思い出した。あの時何かが勘をかすめていったのは、これだったのだ。事件資料を一度引き寄せ、
「事故は三月二十五日から始まってやがる……。れで、気になったのか」
青白い煙を上げながら、崇剛へと戻した。
「念のほうは?」
ふたつの日付が意味するものは何なのかと推し量りながら、崇剛は優雅に微笑んだ。
「先週の四月十八日、月曜日、十七時十六分三十五秒過ぎに、ベルダージュ荘へきた千恵さんの生霊が念で見せた場面。ひとつ目は、大きな通りでの衝撃音がした――です。白血病と事故が関係しているかもしれませんね」
それきり、崇剛は何も言わず、紅茶をまた一口飲んだ。解けてしまった包帯を巻き直し、沈黙がやってきた。
「…………」
「…………」
まともに進みやしない。ドラッグがあった日には、崇剛は絶対にハマるタイプだと、国立は確信した。快楽にこれほど溺れるのだから。
「てめぇ、ニー バットだ! いい振りしきやがるな。言わねぇで帰えんじゃねえ。ひとつ目ってことは、他にもあるってことだろうが。情報共有して帰りやがれ」
膝を使う技は、ソファーに座っている自分たちにはできないと踏んで、崇剛はしれっと言ってのける。
「えぇ、構いませんよ」
ダガーでできた傷を麻痺させるような、狂乱する麻薬に酔いしれ、崇剛は少しだけくすくす笑ったが、冷静な頭脳で平常へすぐに戻った。
「ふたつ目は夜に断末魔が聞こえ、血の匂いがした。三つ目は落下したです」
「つうことは……、ふたつ目は恩田の夢と同じ。三つ目は転落事故のことだろな」
国立がうなずくと、崇剛は何も言わなかった。天使も聖女もいない。全てが確定できないまま、時間だけが過ぎてゆのだ。
「私には……三百五十一年前に関係しているように見えます。そちらの霊視は違うみたいですね」
よくある話だ、他の聖霊師が間違えることなど。五十年も変われば、時代背景もだいぶ違うだろう。異議を唱えるものが出てきた以上、このまま放置するわけにもいかない。
そうしてまた、沈黙がふたりに降りた。
「…………」
「…………」
妙な間が流れ、他の職員たちの咳払いや風の音が何度か起きた。国立は吸っていた葉巻を灰皿に乱暴に投げつける。
「情報渡しやがれ。てめえだけ、持ってくんじゃねえ。バックドロップだ!」
「えぇ、構いませんよ」
しれっと了承した。優雅な貴公子はお気に入りになってしまった、マニアックな笑いが。
国立は葉巻を指に挟んで、油断も隙もないと思いながら、口の端でニヤリとする。
「テーブル挟んだ状態でできるか! てめえのバックを、オレが取んだろうが。いいから、言いやがれ。同じ笑い取ってくるんじゃねえ」
シリアスシーンにいつ仕掛けられるかわからない、笑いという名の罠。崇剛はくすくすと軽く笑い、さらに策の回収に入った。
「先ほど、そちらの近くを通ってきましたが、呪縛霊や地縛霊ではありませんでしたよ。審神者をしていないので、正確にはわかりませんが……」
「てめえ、知ってんなら最初から言ってきやがれ! 確かめるためだけに聞いてくるんじゃねえ」
国立はあきれた顔をした。合理主義にも程があると。事故が起きているのは知っていても、それが心霊関係とは限らない。しかし、国立が何の疑いもなしに、事件資料を取りに行けば、答えはもう出たのだ。
紅茶で気持ちを引きしめて、崇剛は真面目に話し出した。
「千恵さんの言葉と、念が見せた場面と関係しているかもしれません」
「どの言葉だ?」
「恩田 元を逮捕した時の、首のアザがいつできたかの質問に対する、千恵さんの回答は『三月の下旬……だったと思います』です」
崇剛に言われて、国立は思い出した。あの時何かが勘をかすめていったのは、これだったのだ。事件資料を一度引き寄せ、
「事故は三月二十五日から始まってやがる……。れで、気になったのか」
青白い煙を上げながら、崇剛へと戻した。
「念のほうは?」
ふたつの日付が意味するものは何なのかと推し量りながら、崇剛は優雅に微笑んだ。
「先週の四月十八日、月曜日、十七時十六分三十五秒過ぎに、ベルダージュ荘へきた千恵さんの生霊が念で見せた場面。ひとつ目は、大きな通りでの衝撃音がした――です。白血病と事故が関係しているかもしれませんね」
それきり、崇剛は何も言わず、紅茶をまた一口飲んだ。解けてしまった包帯を巻き直し、沈黙がやってきた。
「…………」
「…………」
まともに進みやしない。ドラッグがあった日には、崇剛は絶対にハマるタイプだと、国立は確信した。快楽にこれほど溺れるのだから。
「てめぇ、ニー バットだ! いい振りしきやがるな。言わねぇで帰えんじゃねえ。ひとつ目ってことは、他にもあるってことだろうが。情報共有して帰りやがれ」
膝を使う技は、ソファーに座っている自分たちにはできないと踏んで、崇剛はしれっと言ってのける。
「えぇ、構いませんよ」
ダガーでできた傷を麻痺させるような、狂乱する麻薬に酔いしれ、崇剛は少しだけくすくす笑ったが、冷静な頭脳で平常へすぐに戻った。
「ふたつ目は夜に断末魔が聞こえ、血の匂いがした。三つ目は落下したです」
「つうことは……、ふたつ目は恩田の夢と同じ。三つ目は転落事故のことだろな」
国立がうなずくと、崇剛は何も言わなかった。天使も聖女もいない。全てが確定できないまま、時間だけが過ぎてゆのだ。
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