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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time for thinking/6
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銀のロザリオを小指で引っかくように、何度も揺らしながら、崇剛はさらに考えをめぐらせる。
四月十八日、月曜日、二十時五分二秒以前の瑠璃の言葉――
『他にも、除霊の札を二百作れと申しておったわ!』
四月二十九日、金曜日、九時十二分三十五秒以降――
直感――天啓を受けた涼介と話した内容は、呪縛霊、地縛霊、怨霊、浮遊霊の違いについてでした。
同じく、四月二十九日、金曜日、十一時二十五分十四秒から十一時四十一分五十六秒の間――
ラジュ天使の恩田 元に対する言葉は、
『この者が霊的な理由によって、人生の途中で死ぬ可能性は0%です~』
これら四つの事実から、導き出せることは以下の三つです。
恩田 元が過去世で、二百人殺したとは限らない――。
四月二十一日、木曜日、二時十三分五十四秒以降――
私が悪霊たちに襲われた日。
少なくとも二百人いた悪霊たちが、全員、恩田 元に対して恨みを持つ怨霊だけとは限らない。
すなわち、浮遊霊なども混じっていたという可能性が出てくる。
同時に、以下の可能性も出てくる。
恩田 元は邪神界の他者によって利用されている――
己自身が最優先の悪の世界。人を利用することは当然のように起きる。我先に上へと登りたいがために、互いの足の引っ張り合い。
口では嘘をつけるが心は嘘をつけない。醜さの集合体と言っても過言ではない、悪辣《あくらつ》な世界。
崇剛は何も感じることなく、理論的に事実を拾い上げて、平常を保っていた。彼の脳裏で前から三桁の数字が迫ってくる。
一五六……。
恩田 元が過去世で殺した人数は百五十六人。
残りの四十四人は便乗してきたという可能性が99.99%――
一旦思考を止めて、聖女にうかがいを立ててみたが、百年の重みを感じさせる幼い声は返ってこなかった。
ワイングラスで変則的な円を描き、ルビー色の水面を揺らす。冷静な水色の瞳で眺めながら、春雷で湿った空気に声をにじませた。
「一生涯で、百五十六人を殺す――。やはり通常では考えられません。これだけの数の人間を殺すのは……」
あの黄ばんだ聖霊寮の壁と不浄な空気、国立の鋭い眼光が、記憶の浅い部分へ引き上げられた。あの男に言った言葉は、
「人を殺すことが正当化できる理由が、何らかの要因であったかもしれませんね」
あらゆる可能性を考えても、そこには殺人というバッドエンディングしなかった。
集中力を促す効果のある青に囲まれた自室で、崇剛はロッキングチェアの肘掛けにもたれた。
「そうですね……? 職業もしくは立場であるという可能性が76.65%――。人を殺す職業、立場……?」
今まで読んできた本を収納している、脳の中にある書庫を風が吹き抜けるような速度で、ひっかかるデータを拾い上げてきた。
「シャーマンもしくは神主……。贄などを捧げます。ですが、一生のうちに捧げる数が百五十六人は多すぎます。そうなると、人柱を行ったという可能性ができます」
自身のうちにある本棚の、ある場所で崇剛は歩みを止め、一冊の本をパラパラとめくり、必要なページを開いた。
人柱とは――
大規模建造物――橋、堤防、城、港湾施設などが災害や敵襲によって破壊されないように神に祈願する目的で、人間を土や水中に生きたまま沈めたりする風習のことを言います。
グラスを傾け、サングリアの柑橘系の香りで、思考を切り替える。
「しかしながら……」
氷の刃という異名を持つ視線は、カーテンのプリーツに向けられ、否定の一途をたどる。
恩田 元は夢の中で斬られています。
恨みを買った人たちからの仕返しである、は……。
先ほど、瑠璃の審神者によって確定しています。
事実が合いません。
従って、別の職業である……という可能性が99.99%――
視線を落とすと、一休みというように、書斎机のペンスタンドで斜めに止めっている羽ペンが、ガス灯のオレンジ色の光に優しく包み込まれいた。
「恩田 元は過去世で、何を用いて人を斬ったのでしょう?」
四月十八日、月曜日、二十時五分二秒以前の瑠璃の言葉――
『他にも、除霊の札を二百作れと申しておったわ!』
四月二十九日、金曜日、九時十二分三十五秒以降――
直感――天啓を受けた涼介と話した内容は、呪縛霊、地縛霊、怨霊、浮遊霊の違いについてでした。
同じく、四月二十九日、金曜日、十一時二十五分十四秒から十一時四十一分五十六秒の間――
ラジュ天使の恩田 元に対する言葉は、
『この者が霊的な理由によって、人生の途中で死ぬ可能性は0%です~』
これら四つの事実から、導き出せることは以下の三つです。
恩田 元が過去世で、二百人殺したとは限らない――。
四月二十一日、木曜日、二時十三分五十四秒以降――
私が悪霊たちに襲われた日。
少なくとも二百人いた悪霊たちが、全員、恩田 元に対して恨みを持つ怨霊だけとは限らない。
すなわち、浮遊霊なども混じっていたという可能性が出てくる。
同時に、以下の可能性も出てくる。
恩田 元は邪神界の他者によって利用されている――
己自身が最優先の悪の世界。人を利用することは当然のように起きる。我先に上へと登りたいがために、互いの足の引っ張り合い。
口では嘘をつけるが心は嘘をつけない。醜さの集合体と言っても過言ではない、悪辣《あくらつ》な世界。
崇剛は何も感じることなく、理論的に事実を拾い上げて、平常を保っていた。彼の脳裏で前から三桁の数字が迫ってくる。
一五六……。
恩田 元が過去世で殺した人数は百五十六人。
残りの四十四人は便乗してきたという可能性が99.99%――
一旦思考を止めて、聖女にうかがいを立ててみたが、百年の重みを感じさせる幼い声は返ってこなかった。
ワイングラスで変則的な円を描き、ルビー色の水面を揺らす。冷静な水色の瞳で眺めながら、春雷で湿った空気に声をにじませた。
「一生涯で、百五十六人を殺す――。やはり通常では考えられません。これだけの数の人間を殺すのは……」
あの黄ばんだ聖霊寮の壁と不浄な空気、国立の鋭い眼光が、記憶の浅い部分へ引き上げられた。あの男に言った言葉は、
「人を殺すことが正当化できる理由が、何らかの要因であったかもしれませんね」
あらゆる可能性を考えても、そこには殺人というバッドエンディングしなかった。
集中力を促す効果のある青に囲まれた自室で、崇剛はロッキングチェアの肘掛けにもたれた。
「そうですね……? 職業もしくは立場であるという可能性が76.65%――。人を殺す職業、立場……?」
今まで読んできた本を収納している、脳の中にある書庫を風が吹き抜けるような速度で、ひっかかるデータを拾い上げてきた。
「シャーマンもしくは神主……。贄などを捧げます。ですが、一生のうちに捧げる数が百五十六人は多すぎます。そうなると、人柱を行ったという可能性ができます」
自身のうちにある本棚の、ある場所で崇剛は歩みを止め、一冊の本をパラパラとめくり、必要なページを開いた。
人柱とは――
大規模建造物――橋、堤防、城、港湾施設などが災害や敵襲によって破壊されないように神に祈願する目的で、人間を土や水中に生きたまま沈めたりする風習のことを言います。
グラスを傾け、サングリアの柑橘系の香りで、思考を切り替える。
「しかしながら……」
氷の刃という異名を持つ視線は、カーテンのプリーツに向けられ、否定の一途をたどる。
恩田 元は夢の中で斬られています。
恨みを買った人たちからの仕返しである、は……。
先ほど、瑠璃の審神者によって確定しています。
事実が合いません。
従って、別の職業である……という可能性が99.99%――
視線を落とすと、一休みというように、書斎机のペンスタンドで斜めに止めっている羽ペンが、ガス灯のオレンジ色の光に優しく包み込まれいた。
「恩田 元は過去世で、何を用いて人を斬ったのでしょう?」
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