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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/6
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崇剛とダルレシアンが大将。彼らが落とされれば、この戦いは負けとなる。ふたりを守ように控えていたナールが、ふと右手を大きくかかげた。
荒野の果てから黒い塊が猛スピードで向かってくる。ナールにみるみる近づいてきて、その正体が明らかになる――大鎌だ。
二メートル越えをしている天使の背丈よりも大きい武器。
崇剛はあごに神経質な手を当てて、水色の瞳をついっと細めた。あの夜が鮮明に蘇る。情報を得たいばかりに、瑠璃を守りたいばかりに、奮闘した苦い夜――。
朦朧とする意識の中だったが、自身の首を切ったのは大鎌だった。あの重い鉄が地面を引きずられてくる、ズーズーと不気味な音が耳にこびりついている。
首が切られたあとに見た、ナールの赤い目ふたつ。
カミエが倒したのも大鎌を持った敵だった。同じ人物だと、彼は言わなかった。
そこから考えると、ナールがあの夜にいた大鎌の敵という可能性は消え去らない。彼は一体何者なのだ――。
崇剛が疑問に思っている隣で、大鎌を肩にかかげたナールに、シズキが催促する。
「貴様も戦え」
ナールは大鎌を体の前に立てて、街でナンパするように軽薄的に話し出した。
「これさ、扱いが難しいんだよね」
「大鎌など振ればいいだけだろう」
シズキの不機嫌顔にさらに磨きがかかる。何を寝ぼけたことを言っているのだ。これだけ大きな刃物だ。数打ちゃ当たるではないが、数振りゃ当たるだろう。拳銃よりも格段に簡単な武器ではないか。
「カミエがさ」
白い袴姿の男の名が、ナールの綺麗な唇から出てきて、シズキの鋭利なスミレ色の瞳は戦場で戦うカミエを捉えた。またあの男のことだ。
「修業バカがどうした?」
「前に教わったの。あいつ武術得意だからさ」
指導を直々に賜ったという。修業のために生きているような、あの男に。
「その通りに使えばいいだろう」
ナールの彫刻像のように彫りの深い横顔を、シズキは少しだけにらんだ。
「それがさ」
器用さが目立つ手で、ナールは大鎌を真っ直ぐ持ち上げて、自分と並行になるようにするが、急に専門用語だらけになった。
「武器の正中線と俺の正中線を合わせて、重力に逆らわずに持ち上げろって」
その通り、発泡スチロールのように軽々と大鎌を後ろへ倒し、「で、武器の重みだけでおろすって」腕の力は極力抜くと、落下速度だけでも地面にガシャんと刃がめり込んだ。
「?」
シズキは首をかしげる。ただ振り下ろせば、敵は倒せるだろうに。そんな難しいウンチクが必要か。あの修業バカは車の普通免許じゃ飽き足らず、F1レーサー並みの技術を要求するとは。
ノーリアクションのシズキの代わりに、すぐ隣で聞いていたラジュが言葉を添えた。
「そちらは、無住心剣流の教えです~」
三沢岳の山頂で、艶やかな刀さばきで敵を倒した技を、ナールに伝授していたカミエだった。
カミエは武道家で修業をすることが人生の全てだが、ナールはどちらかというと、体育会系ではなく頭脳派。
大鎌を自分の体と並行に立てようとしながら、赤い目ふたつでじっと見つめる。
「考えちゃうんだよね? こう武器と自分を合わせるって? ってさ」
カミエは修業という名の感覚で、武器を扱ってはいるが、理論で物事を考えるナールには、感覚という曖昧なものを体感できるセンスは持ち合わせていないのだ。
さっきから思っていたいたが、シズキの腹の中ではぐつぐつとマグマが沸騰するほどイライラとしていて、とうとう言ってしまった。
「理論はいいから、敵の中へ行って振るえば、それだけ大きな刃だ、誰かには絶対に当たるだろう」
それなのに、ナールは赤い目で、乱戦している戦場をただただ眺める。
「もっと効率いい戦い方したいんだよね」
おかしなことを言う。というか、この男らしい発想だと、シズキは思った。完璧なまでに合理主義者で無機質。それがナールを作る要素だ。
「そうね……? こうしちゃう?」――
軽薄的に言うと、大鎌を横向きに構え、何と手裏剣と同じように横滑りさせて敵陣へ放り投げた。
いきなり迫ってきた大鎌の鋭い刃に、敵はひとたまりもなかった。
「うぎゃぁ~!」
「うわ~!」
次々と体が切断され、魂が浄化されてゆく。
ナールの空っぽになった手のひらを見つめて、シズキはバカにしたように鼻で笑った。
「貴様、どういうつもりだ? 武器を敵に投げるとは戻ってこないだろう」
荒野の果てから黒い塊が猛スピードで向かってくる。ナールにみるみる近づいてきて、その正体が明らかになる――大鎌だ。
二メートル越えをしている天使の背丈よりも大きい武器。
崇剛はあごに神経質な手を当てて、水色の瞳をついっと細めた。あの夜が鮮明に蘇る。情報を得たいばかりに、瑠璃を守りたいばかりに、奮闘した苦い夜――。
朦朧とする意識の中だったが、自身の首を切ったのは大鎌だった。あの重い鉄が地面を引きずられてくる、ズーズーと不気味な音が耳にこびりついている。
首が切られたあとに見た、ナールの赤い目ふたつ。
カミエが倒したのも大鎌を持った敵だった。同じ人物だと、彼は言わなかった。
そこから考えると、ナールがあの夜にいた大鎌の敵という可能性は消え去らない。彼は一体何者なのだ――。
崇剛が疑問に思っている隣で、大鎌を肩にかかげたナールに、シズキが催促する。
「貴様も戦え」
ナールは大鎌を体の前に立てて、街でナンパするように軽薄的に話し出した。
「これさ、扱いが難しいんだよね」
「大鎌など振ればいいだけだろう」
シズキの不機嫌顔にさらに磨きがかかる。何を寝ぼけたことを言っているのだ。これだけ大きな刃物だ。数打ちゃ当たるではないが、数振りゃ当たるだろう。拳銃よりも格段に簡単な武器ではないか。
「カミエがさ」
白い袴姿の男の名が、ナールの綺麗な唇から出てきて、シズキの鋭利なスミレ色の瞳は戦場で戦うカミエを捉えた。またあの男のことだ。
「修業バカがどうした?」
「前に教わったの。あいつ武術得意だからさ」
指導を直々に賜ったという。修業のために生きているような、あの男に。
「その通りに使えばいいだろう」
ナールの彫刻像のように彫りの深い横顔を、シズキは少しだけにらんだ。
「それがさ」
器用さが目立つ手で、ナールは大鎌を真っ直ぐ持ち上げて、自分と並行になるようにするが、急に専門用語だらけになった。
「武器の正中線と俺の正中線を合わせて、重力に逆らわずに持ち上げろって」
その通り、発泡スチロールのように軽々と大鎌を後ろへ倒し、「で、武器の重みだけでおろすって」腕の力は極力抜くと、落下速度だけでも地面にガシャんと刃がめり込んだ。
「?」
シズキは首をかしげる。ただ振り下ろせば、敵は倒せるだろうに。そんな難しいウンチクが必要か。あの修業バカは車の普通免許じゃ飽き足らず、F1レーサー並みの技術を要求するとは。
ノーリアクションのシズキの代わりに、すぐ隣で聞いていたラジュが言葉を添えた。
「そちらは、無住心剣流の教えです~」
三沢岳の山頂で、艶やかな刀さばきで敵を倒した技を、ナールに伝授していたカミエだった。
カミエは武道家で修業をすることが人生の全てだが、ナールはどちらかというと、体育会系ではなく頭脳派。
大鎌を自分の体と並行に立てようとしながら、赤い目ふたつでじっと見つめる。
「考えちゃうんだよね? こう武器と自分を合わせるって? ってさ」
カミエは修業という名の感覚で、武器を扱ってはいるが、理論で物事を考えるナールには、感覚という曖昧なものを体感できるセンスは持ち合わせていないのだ。
さっきから思っていたいたが、シズキの腹の中ではぐつぐつとマグマが沸騰するほどイライラとしていて、とうとう言ってしまった。
「理論はいいから、敵の中へ行って振るえば、それだけ大きな刃だ、誰かには絶対に当たるだろう」
それなのに、ナールは赤い目で、乱戦している戦場をただただ眺める。
「もっと効率いい戦い方したいんだよね」
おかしなことを言う。というか、この男らしい発想だと、シズキは思った。完璧なまでに合理主義者で無機質。それがナールを作る要素だ。
「そうね……? こうしちゃう?」――
軽薄的に言うと、大鎌を横向きに構え、何と手裏剣と同じように横滑りさせて敵陣へ放り投げた。
いきなり迫ってきた大鎌の鋭い刃に、敵はひとたまりもなかった。
「うぎゃぁ~!」
「うわ~!」
次々と体が切断され、魂が浄化されてゆく。
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