725 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/21
しおりを挟む
俺様天使などはさて置いて、ラジュはニコニコの笑顔で平然と、
「えぇ、嘘はついていませんよ~?」
クリュダが目を輝かせると、オレンジ色をした柔らかなウェエーブ髪が狂喜乱舞に動いた。
「それは、すぐに行かなくてはいけません!」
霊力で愛しの土偶を寝室へ瞬間移動させ、再び右手にシャベルを出現させて、熱にうなされたような叫び声を戦場の隅々に響き渡らせ、
「ガステガ~~~~!!!!」
敵陣の真ん中へ、盲目以外の何者でもなく、情熱を胸に走り出していった。
去ってゆく二百三十五センチのガタイのいい背中を眺めたまま、武器使用をさけたがる金髪天使――お姫様のナイトと化しているシズキは鼻でバカにしたように笑った。
そうして、隣に立っているトラップ天使を射殺すように見据える。
「ラジュ、貴様、今度は何を置いてきた? いくら貴様でも、クリュダの無駄足になることはしないとわかっている」
「クリュダが見つけてくるまで、お楽しみということです~。うふふふっ」
邪神界へスパイに行った成果のひとつは、笑いという策を抜け目なく張ることだった。ラジュの不気味な含み笑いが戦場に、オチという匂いをひどく漂わせながら怪しげに舞った。
*
猪突猛進の如く、クリュダは武器ではなく、シャベルだけで進んでゆく。本人に敵をなぎ倒すつもりはなくても、化石にたどり着きたいがためにガムシャラで、敵は巻き込まれて地獄へと送られ続ける。
そうして、無傷で邪神界軍の中央へやってきたクリュダだった。背中同士を向ける、戦場にはなかなかない布陣。危険極まりないが、化石に気を取られ、聖戦争の真っ只中だということもすっかり忘れている。
ここだと思われる場所を、クリュダはシャベルを使って、お目当てのものを傷つけないように慎重に掘り始めた。
「こちらでしょうか?」
聖なる白いチャイナドレスはふと前かがみになり、地面に手を当てる。シャベルを後ろへ下げると、ちょうど近づいてきた敵の腹に、持ち手が激突。
「うぎゃ~っ!」
断末魔など、遺跡バカには聞こえておらず、
「こちらにはありませんね」
地面を大きな手で触り、片足を軸にして真正面を向いた。敵の足がたくさん見えているにもかかわらず、そこは都合よく削除。クリュダの蒼色をした瞳には地面だけが映り込んでいた。
「あちらでしょうか?」
さっと立ち上がり、立派な両翼で移動しようとすると、後ろから敵の手が肩を叩いた。
しかし、化石に夢中のクリュダは正面を向いたまま、その手に自分のそれを添えて引っ剥がす。
「少々待っていただけますか? 今、発掘作業で忙しいので」
すっと瞬間移動し、敵陣真っ只中にまた現れ、クリュダひとりが武器も持たずに踏み込んできた。
邪神界側はみな、ぽかんとした顔をするが、地面しか見えていないクリュダは素早くかがみ込み、シャベルで掘り始めると、近づいてきた敵の腹に都合よく当たった。
「ぐわぁっ!」
本人が知らないところで、魂はまた浄化。しばらく慎重に掘っていたが、ふと手を止め、クリュダは首をかしげ、真剣な面差しになった。
「こちらにもありませんね。おかしいですね、場所は間違っていないと思うんですが……」
*
人とは違い、はるか彼方まで見渡せる天使の瞳。ラジュはにっこり微笑みながら、女性的な金の髪を風で揺らす。
「素晴らしいですね、クリュダは。発掘作業に夢中になっていて、本人が知らないうちに、シャベルの手持ち部分で邪神界の者を次々に倒しています~」
鋭利なスミレ色の瞳には、あちこち向きを変えて、シャベルで地面を掘り起こすたび、敵にそれがギャグみたいに当たり、地獄へと送られてゆく様子が映っていた。
「クリュダのやつ、武器よりシャベルのほうが有効的とはな、何とも滑稽だ。この戦いで武器を使わないつもりか?」
「えぇ、嘘はついていませんよ~?」
クリュダが目を輝かせると、オレンジ色をした柔らかなウェエーブ髪が狂喜乱舞に動いた。
「それは、すぐに行かなくてはいけません!」
霊力で愛しの土偶を寝室へ瞬間移動させ、再び右手にシャベルを出現させて、熱にうなされたような叫び声を戦場の隅々に響き渡らせ、
「ガステガ~~~~!!!!」
敵陣の真ん中へ、盲目以外の何者でもなく、情熱を胸に走り出していった。
去ってゆく二百三十五センチのガタイのいい背中を眺めたまま、武器使用をさけたがる金髪天使――お姫様のナイトと化しているシズキは鼻でバカにしたように笑った。
そうして、隣に立っているトラップ天使を射殺すように見据える。
「ラジュ、貴様、今度は何を置いてきた? いくら貴様でも、クリュダの無駄足になることはしないとわかっている」
「クリュダが見つけてくるまで、お楽しみということです~。うふふふっ」
邪神界へスパイに行った成果のひとつは、笑いという策を抜け目なく張ることだった。ラジュの不気味な含み笑いが戦場に、オチという匂いをひどく漂わせながら怪しげに舞った。
*
猪突猛進の如く、クリュダは武器ではなく、シャベルだけで進んでゆく。本人に敵をなぎ倒すつもりはなくても、化石にたどり着きたいがためにガムシャラで、敵は巻き込まれて地獄へと送られ続ける。
そうして、無傷で邪神界軍の中央へやってきたクリュダだった。背中同士を向ける、戦場にはなかなかない布陣。危険極まりないが、化石に気を取られ、聖戦争の真っ只中だということもすっかり忘れている。
ここだと思われる場所を、クリュダはシャベルを使って、お目当てのものを傷つけないように慎重に掘り始めた。
「こちらでしょうか?」
聖なる白いチャイナドレスはふと前かがみになり、地面に手を当てる。シャベルを後ろへ下げると、ちょうど近づいてきた敵の腹に、持ち手が激突。
「うぎゃ~っ!」
断末魔など、遺跡バカには聞こえておらず、
「こちらにはありませんね」
地面を大きな手で触り、片足を軸にして真正面を向いた。敵の足がたくさん見えているにもかかわらず、そこは都合よく削除。クリュダの蒼色をした瞳には地面だけが映り込んでいた。
「あちらでしょうか?」
さっと立ち上がり、立派な両翼で移動しようとすると、後ろから敵の手が肩を叩いた。
しかし、化石に夢中のクリュダは正面を向いたまま、その手に自分のそれを添えて引っ剥がす。
「少々待っていただけますか? 今、発掘作業で忙しいので」
すっと瞬間移動し、敵陣真っ只中にまた現れ、クリュダひとりが武器も持たずに踏み込んできた。
邪神界側はみな、ぽかんとした顔をするが、地面しか見えていないクリュダは素早くかがみ込み、シャベルで掘り始めると、近づいてきた敵の腹に都合よく当たった。
「ぐわぁっ!」
本人が知らないところで、魂はまた浄化。しばらく慎重に掘っていたが、ふと手を止め、クリュダは首をかしげ、真剣な面差しになった。
「こちらにもありませんね。おかしいですね、場所は間違っていないと思うんですが……」
*
人とは違い、はるか彼方まで見渡せる天使の瞳。ラジュはにっこり微笑みながら、女性的な金の髪を風で揺らす。
「素晴らしいですね、クリュダは。発掘作業に夢中になっていて、本人が知らないうちに、シャベルの手持ち部分で邪神界の者を次々に倒しています~」
鋭利なスミレ色の瞳には、あちこち向きを変えて、シャベルで地面を掘り起こすたび、敵にそれがギャグみたいに当たり、地獄へと送られてゆく様子が映っていた。
「クリュダのやつ、武器よりシャベルのほうが有効的とはな、何とも滑稽だ。この戦いで武器を使わないつもりか?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる