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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
刑事は探偵に告げる/5
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ダルレシアンを運ぶ人間は涼介――その可能性が非常に高い。それなのに、涼介を呼び出すだけ呼び出しておいて、崇剛に運べと命令する。無駄足もいいところだ。まったくもって無慈悲極まりないラジュだった。
「うふふふっ、もうひとりは内緒です~」
人間よりもはるか遠くを見渡せる天使の瞳には、ベルダージュ荘を回り込んで、雑木林を少し足を取られながら向かってくる、ガタイのいい男が映っていた。
天使が六人と守護霊の少女がひとり。肉体に戻ってしまったダルレシアンの体に触れない人々。
崇剛が犠牲になるのか――。
その時だった、旧聖堂の壊れかけた木の扉が、ドンと破壊するような勢いで中へ押し入れられたのは。はつらつとしているが少し鼻にかかる声が切羽詰まったように響き渡った。
「崇剛っ!? さっき、いつものやつがした」
ドアが押された風圧で砂埃が舞い上がり、薄闇の中で気が狂ったように埃が踊る。
「えぇ」
床に跪いていた崇剛は神経質な顔を、入り口へやりながら悟る。涼介が先にきたのだ――と。
それと同時に、四月二十九日、金曜日から待ち続けた機会がめぐってきたと、優雅な策略家は冷静な水色の瞳をついっと細めた。
黒のアーミーブーツにホワイトジーンズ。洗いざらしのシャツ。扉を押さえている左手には結婚指輪。執事の涼介が息を切らして立っていた。
霊感のない彼には、他に人影は見当たらず、優雅に返事を返してきた主人を見つけ、木でできたボロボロの扉から拍子抜けしたみたいに手を離した。
「ん? あれ、お前が倒れてると思ってきたんだが……。間違ったことなんてなかったのにな、今まで」
しゃがみ込んでいる瑠璃色の貴族服へ、執事の影が近づいてくる。
「私ではなく彼です、倒れたのは……」
素知らぬ振りをして、崇剛は密かに罠を発動する。
(ダルレシアンは涼介に運んでいただきましょう。私はまだ、こちらの場所を離れられませんからね)
漆黒の長い髪が床に雪崩れ込み、正体をなくしている凛々しい眉をした男の顔を見つけ、涼介は薄暗くて最初は気づかなかったが、
「誰――!!」
背筋に悪寒が衝撃的に走った。旧聖堂中に執事の少し鼻にかかった声が轟いた。
「ゆ、夢の中のやつ!?」
その場で、黒いアーミーブーツは小さく右へ左へ行ったりきたりする。
「昨日の今日で!? 心の準備がまだ出来てないんだが……」
人が倒れている。執事の気持ちなど後回しで、崇剛は半ば強引に話を進めた。
「彼はダルレシアン ラハイアット。ラハイアット家の末裔です」
魔導師が言えない代わりに、主人は執事へ手際よく伝え、心の中で可能性の数値を変化させた。
(涼介には予知夢を見るという傾向がある。事実として確定ですね)
いつも通りの平和な夕食だと思って、息子と一緒に楽しく準備をしていたが、青天の霹靂とはまさにこのことで、涼介は思考がついていけなくて、ぼんやりする瞳に、金糸で装飾されたローブと黒いロザリオが映っていた。
「苗字が一緒――末裔……?」
崇剛は腕力がないながらも、参列席からダルレシアンを引きずり出して、執事に引き渡そうとする。
「詳しいことはあとで話します。涼介、彼を屋敷へ運んでください」
と、冷静に言っているが、心の中は違っていた。
早くこちらから出て行っていただけませんか?
あなたとダルレシアンがいなくなる前に、どなたかがこちらへきてしまいます。
そうなると、自室のドアを開けてきた意味がなくなってしまいます。
崇剛は策を成功させたいのだ。半年近くも待った好機を逃したくないのだ。神が与えてくださったのだから。待ち人はもうすぐそこにきているかもしれない。その人の情報がどうしてもほしい。
「うふふふっ、もうひとりは内緒です~」
人間よりもはるか遠くを見渡せる天使の瞳には、ベルダージュ荘を回り込んで、雑木林を少し足を取られながら向かってくる、ガタイのいい男が映っていた。
天使が六人と守護霊の少女がひとり。肉体に戻ってしまったダルレシアンの体に触れない人々。
崇剛が犠牲になるのか――。
その時だった、旧聖堂の壊れかけた木の扉が、ドンと破壊するような勢いで中へ押し入れられたのは。はつらつとしているが少し鼻にかかる声が切羽詰まったように響き渡った。
「崇剛っ!? さっき、いつものやつがした」
ドアが押された風圧で砂埃が舞い上がり、薄闇の中で気が狂ったように埃が踊る。
「えぇ」
床に跪いていた崇剛は神経質な顔を、入り口へやりながら悟る。涼介が先にきたのだ――と。
それと同時に、四月二十九日、金曜日から待ち続けた機会がめぐってきたと、優雅な策略家は冷静な水色の瞳をついっと細めた。
黒のアーミーブーツにホワイトジーンズ。洗いざらしのシャツ。扉を押さえている左手には結婚指輪。執事の涼介が息を切らして立っていた。
霊感のない彼には、他に人影は見当たらず、優雅に返事を返してきた主人を見つけ、木でできたボロボロの扉から拍子抜けしたみたいに手を離した。
「ん? あれ、お前が倒れてると思ってきたんだが……。間違ったことなんてなかったのにな、今まで」
しゃがみ込んでいる瑠璃色の貴族服へ、執事の影が近づいてくる。
「私ではなく彼です、倒れたのは……」
素知らぬ振りをして、崇剛は密かに罠を発動する。
(ダルレシアンは涼介に運んでいただきましょう。私はまだ、こちらの場所を離れられませんからね)
漆黒の長い髪が床に雪崩れ込み、正体をなくしている凛々しい眉をした男の顔を見つけ、涼介は薄暗くて最初は気づかなかったが、
「誰――!!」
背筋に悪寒が衝撃的に走った。旧聖堂中に執事の少し鼻にかかった声が轟いた。
「ゆ、夢の中のやつ!?」
その場で、黒いアーミーブーツは小さく右へ左へ行ったりきたりする。
「昨日の今日で!? 心の準備がまだ出来てないんだが……」
人が倒れている。執事の気持ちなど後回しで、崇剛は半ば強引に話を進めた。
「彼はダルレシアン ラハイアット。ラハイアット家の末裔です」
魔導師が言えない代わりに、主人は執事へ手際よく伝え、心の中で可能性の数値を変化させた。
(涼介には予知夢を見るという傾向がある。事実として確定ですね)
いつも通りの平和な夕食だと思って、息子と一緒に楽しく準備をしていたが、青天の霹靂とはまさにこのことで、涼介は思考がついていけなくて、ぼんやりする瞳に、金糸で装飾されたローブと黒いロザリオが映っていた。
「苗字が一緒――末裔……?」
崇剛は腕力がないながらも、参列席からダルレシアンを引きずり出して、執事に引き渡そうとする。
「詳しいことはあとで話します。涼介、彼を屋敷へ運んでください」
と、冷静に言っているが、心の中は違っていた。
早くこちらから出て行っていただけませんか?
あなたとダルレシアンがいなくなる前に、どなたかがこちらへきてしまいます。
そうなると、自室のドアを開けてきた意味がなくなってしまいます。
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