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高校生×幼馴染=恋の予感 1
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「悪い・・・俺、今日休む・・・」
いつものように朝、市太を起こしに来た架。
市太の青白い顔を見て、その額に手を当てる。
「結構 熱ある」
「・・・すげー寒い」
「これからまだ上がってきそうだな~。病院は?」
「あまりにしんどくて夜中に救急行った。風邪」
「そっか」
「平気か?ひとりで」
自分の体よりも俺の事 心配してくれんの?
架は市太の優しさに胸がじわっと熱くなる。
「へーきだし。人の事より自分の体心配しろよ。しっかり寝てさっさと治せよな」
「具合悪くなったら、連絡しろよ。すぐに行くから」
「ふっ、俺より具合悪くなんだろ、それ。マジだいじょぶだから」
市太は昔からずっと変わんねーな。いつだって俺を優先してくれる。幼なじみとして大事に思ってくれる。それにずっと甘えて来たけど、そろそろ本気で離れなきゃ、いちに悪い。
二枚重ねにしたマスクを装着し、架は市太の家を出て駅へと向かう。
やっぱり1限から入ってるとラッシュと重なって人が多い。
隣に市太がいないと思うと急に不安になって足が竦むな。もう一枚マスク着けとこ。
駅のホームの端で、なるべく人混みを避けるように俯き電車を待つ架。
背中に近付く気配と視界に入る影が気になると、嗅ぎたくないのに何かを確かめるように鼻から息を吸ってしまう。
他人のにおいに体が反発して、額に汗が滲んでくる。
いくらトラウマだからって、別に犯されたわけでもないのに・・・どうして俺、こんな体になっちゃったんだよ・・・!
吐き気がする、目眩がする。いっそここで倒れてしまえたら楽に・・・
「おにーさん、大丈夫?」
突然顔を覗き込まれて驚いた架は、その相手から距離を取ろうと一歩横に足を出す。
が、立っているのもやっとの体を支えきれずにフラつき、ホームの外側へと傾いてゆく。
やば、落ち・・・
「あっ!! ・・・ぶね・・・っ」
ホームから落ちると思った瞬間、顔を覗き込んできた男に腕を引かれ、勢いで男の胸に飛び込む形になる。
市太と違う匂いと感触に、ぞわりと鳥肌が立ち呼吸が苦しくなる。
「ごめ・・・なさい、触ん・・・ないでっ」
込み上げてくる吐き気に自然と涙が溜まって、助けてくれた相手にこんな事を言うのが心苦しくて、けれどどうしていいかわからずパニックに陥りそうになる架。
「何もしないから落ち着いて。 ゆっくり息して」
背中に回された男の手が上下して、唾を飲み込みなんとか深呼吸する。
あ・・・、この人の匂い、改めて嗅ぐとそんなに気になんない。むしろちょっと安心するかも。なんで・・・?
「落ち着いた?」
「え・・・、あ、ハイ。・・・すみませんでした」
顔を上げると、相手は自分と同じくらいの男性だとようやく認識して、着ているのが学制服だとわかり高校生なのだと気付く。
「いーよ。俺、兄が軽いパニック障害なんだ。こーゆーの小さい時から見てて慣れてるから」
「そ、ですか」
自分より歳下なのに、動じる事無く対応する高校生に対して架は恥ずかしくなり、体を離し少し距離を取る。
「今日はひとりなんだ」
「えっ?」
「いつもイケメン二人でイチャついてるから目立ってるよ、おにーさんたち」
「あー・・・」
気まずい。やっぱそういう風に見られてんのか、俺達。自分のことでいっぱいいっぱいで、周りの視線なんて気にしてなかった。
「ゲイカップルなの?今日はケンカでもした?」
「違う!俺はいいけど、あいつの事そーゆー風に思われてたら困る!」
俺のせいで いちが偏見の目で見られるのは嫌だ。
「ふーん。おにーさんの片想いか」
「それも違う!俺が、他人のにおいが苦手で、それわかってくれてるからあいつが・・・」
なに初対面のヤツにこんな話してんだよ俺。別に本当の事なんてこいつにとっちゃどうでもいい話だろ。
「他人のにおい? じゃあ、おにーさんからしたら俺もクサイってこと?」
「キミは・・・」
こんな事言っていいのかわかんねぇけど
「なんか大丈夫みたい。ごめん、上から言ったみたいになってるけど」
何言ってんだか と思いつつ、遠慮の無い男子高校生につられて、架はつい正直に答えてしまう。
「臭くないなら、一緒に電車乗ってい?」
「は・・・?」
「他人のにおいからおにーさんを守ればいいんでしょ?あのイケメンがしてたみたいに」
「イヤ、いいよ。悪いし。知らない子に迷惑かけらんねーし」
つーか匂いは平気でも、知らない男子高校生ってだけでなんか抵抗・・・
「神谷 一玖。有学館高校3年。いつもこの時間の電車に乗ってる。週3ペースでおにーさん達の事見かけてる」
いきなり自己紹介をする一玖に架は少し圧倒される。
有学館!? 偏差値激高いおぼっちゃま校じゃん!こんなワケわかんなそうなヤツが金持ちで秀才なのか。世の中わかんねぇな。
「おにーさんは?」
「えっ?俺、は・・・、速水 架。青陵大学1年」
「かける」
呼び捨てかよ。初対面のうえに歳上だぞ俺。
「もう知らない人じゃないよね。俺の事はいっくって呼んで。ホラ電車来たよ。乗ろ、架」
一玖は架の手を引き電車に乗り込むと、架をドア横の隅、壁の方を向くように立たせ後ろから囲う。
「さすがに向かい合わせは まだ気まずいから。不在のボディガードにも悪いしね」
大学へは2駅。架の方が先に電車を降りる。
「助かったよ、ありがとな。えと、いっく・・・?」
「んーん。こっちこそありがと。またね、架」
閉じたドアの窓越しに、笑顔でヒラヒラと手を振る一玖。
なんかよくわかんねぇヤツだったけど、マジ助かった。知り合いになったくらいで礼を言うなんて、素直で可愛いヤツなのかも。
にしても俺、いち以外にも大丈夫な匂いってあったんだな。
架は新たな発見に少しだけ気持ちが軽くなる。
けれど、一玖の「ありがとう」の本当の意味をまだ知らない。
いつものように朝、市太を起こしに来た架。
市太の青白い顔を見て、その額に手を当てる。
「結構 熱ある」
「・・・すげー寒い」
「これからまだ上がってきそうだな~。病院は?」
「あまりにしんどくて夜中に救急行った。風邪」
「そっか」
「平気か?ひとりで」
自分の体よりも俺の事 心配してくれんの?
架は市太の優しさに胸がじわっと熱くなる。
「へーきだし。人の事より自分の体心配しろよ。しっかり寝てさっさと治せよな」
「具合悪くなったら、連絡しろよ。すぐに行くから」
「ふっ、俺より具合悪くなんだろ、それ。マジだいじょぶだから」
市太は昔からずっと変わんねーな。いつだって俺を優先してくれる。幼なじみとして大事に思ってくれる。それにずっと甘えて来たけど、そろそろ本気で離れなきゃ、いちに悪い。
二枚重ねにしたマスクを装着し、架は市太の家を出て駅へと向かう。
やっぱり1限から入ってるとラッシュと重なって人が多い。
隣に市太がいないと思うと急に不安になって足が竦むな。もう一枚マスク着けとこ。
駅のホームの端で、なるべく人混みを避けるように俯き電車を待つ架。
背中に近付く気配と視界に入る影が気になると、嗅ぎたくないのに何かを確かめるように鼻から息を吸ってしまう。
他人のにおいに体が反発して、額に汗が滲んでくる。
いくらトラウマだからって、別に犯されたわけでもないのに・・・どうして俺、こんな体になっちゃったんだよ・・・!
吐き気がする、目眩がする。いっそここで倒れてしまえたら楽に・・・
「おにーさん、大丈夫?」
突然顔を覗き込まれて驚いた架は、その相手から距離を取ろうと一歩横に足を出す。
が、立っているのもやっとの体を支えきれずにフラつき、ホームの外側へと傾いてゆく。
やば、落ち・・・
「あっ!! ・・・ぶね・・・っ」
ホームから落ちると思った瞬間、顔を覗き込んできた男に腕を引かれ、勢いで男の胸に飛び込む形になる。
市太と違う匂いと感触に、ぞわりと鳥肌が立ち呼吸が苦しくなる。
「ごめ・・・なさい、触ん・・・ないでっ」
込み上げてくる吐き気に自然と涙が溜まって、助けてくれた相手にこんな事を言うのが心苦しくて、けれどどうしていいかわからずパニックに陥りそうになる架。
「何もしないから落ち着いて。 ゆっくり息して」
背中に回された男の手が上下して、唾を飲み込みなんとか深呼吸する。
あ・・・、この人の匂い、改めて嗅ぐとそんなに気になんない。むしろちょっと安心するかも。なんで・・・?
「落ち着いた?」
「え・・・、あ、ハイ。・・・すみませんでした」
顔を上げると、相手は自分と同じくらいの男性だとようやく認識して、着ているのが学制服だとわかり高校生なのだと気付く。
「いーよ。俺、兄が軽いパニック障害なんだ。こーゆーの小さい時から見てて慣れてるから」
「そ、ですか」
自分より歳下なのに、動じる事無く対応する高校生に対して架は恥ずかしくなり、体を離し少し距離を取る。
「今日はひとりなんだ」
「えっ?」
「いつもイケメン二人でイチャついてるから目立ってるよ、おにーさんたち」
「あー・・・」
気まずい。やっぱそういう風に見られてんのか、俺達。自分のことでいっぱいいっぱいで、周りの視線なんて気にしてなかった。
「ゲイカップルなの?今日はケンカでもした?」
「違う!俺はいいけど、あいつの事そーゆー風に思われてたら困る!」
俺のせいで いちが偏見の目で見られるのは嫌だ。
「ふーん。おにーさんの片想いか」
「それも違う!俺が、他人のにおいが苦手で、それわかってくれてるからあいつが・・・」
なに初対面のヤツにこんな話してんだよ俺。別に本当の事なんてこいつにとっちゃどうでもいい話だろ。
「他人のにおい? じゃあ、おにーさんからしたら俺もクサイってこと?」
「キミは・・・」
こんな事言っていいのかわかんねぇけど
「なんか大丈夫みたい。ごめん、上から言ったみたいになってるけど」
何言ってんだか と思いつつ、遠慮の無い男子高校生につられて、架はつい正直に答えてしまう。
「臭くないなら、一緒に電車乗ってい?」
「は・・・?」
「他人のにおいからおにーさんを守ればいいんでしょ?あのイケメンがしてたみたいに」
「イヤ、いいよ。悪いし。知らない子に迷惑かけらんねーし」
つーか匂いは平気でも、知らない男子高校生ってだけでなんか抵抗・・・
「神谷 一玖。有学館高校3年。いつもこの時間の電車に乗ってる。週3ペースでおにーさん達の事見かけてる」
いきなり自己紹介をする一玖に架は少し圧倒される。
有学館!? 偏差値激高いおぼっちゃま校じゃん!こんなワケわかんなそうなヤツが金持ちで秀才なのか。世の中わかんねぇな。
「おにーさんは?」
「えっ?俺、は・・・、速水 架。青陵大学1年」
「かける」
呼び捨てかよ。初対面のうえに歳上だぞ俺。
「もう知らない人じゃないよね。俺の事はいっくって呼んで。ホラ電車来たよ。乗ろ、架」
一玖は架の手を引き電車に乗り込むと、架をドア横の隅、壁の方を向くように立たせ後ろから囲う。
「さすがに向かい合わせは まだ気まずいから。不在のボディガードにも悪いしね」
大学へは2駅。架の方が先に電車を降りる。
「助かったよ、ありがとな。えと、いっく・・・?」
「んーん。こっちこそありがと。またね、架」
閉じたドアの窓越しに、笑顔でヒラヒラと手を振る一玖。
なんかよくわかんねぇヤツだったけど、マジ助かった。知り合いになったくらいで礼を言うなんて、素直で可愛いヤツなのかも。
にしても俺、いち以外にも大丈夫な匂いってあったんだな。
架は新たな発見に少しだけ気持ちが軽くなる。
けれど、一玖の「ありがとう」の本当の意味をまだ知らない。
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