公式 1×1=LOVE

Hiiho

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過去×現在=荒療治 1

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新幹線で2時間半、一玖の兄嫁の迎えの車に乗り1時間半。架と一玖は、北陸地方にある一玖の兄が経営する大きな旅館へと到着する。


「架くん、車酔いしなかった?」

一玖の義姉にあたる えみ が架に問いかける。

「大丈夫です。ありがとうございます」


  親の車でも匂いに酔って気持ち悪くなるのに、えみさんの車は一玖の部屋と同じ匂いがしてて、それだけで平気だった。俺、やっぱりこの匂いが好きなんだ。

「良かった~。いっくんから、架くんは白檀の匂いじゃないと無理だからって聞いたから、昨日 車屋さんにクリーニングしてもらって、旅館と同じ匂いの芳香剤置いといたの」

「ええ!? ・・・すみません。なんか、気を使わせちゃって・・・」

そこまでしてもらわなくてもいいのに・・・、と架は心苦しくなる。

「俺が急に誘ってバイトに来てもらうんだから、これくらい当然だよ」

「こーら、いっくんは何もしてないでしょ。まあ、バイトを一人連れて帰って来たことは褒めてあげるけど」

「だろ?バイト代、期待してるから」

「それはお兄ちゃんに頼みな」

「えみちゃんのケチ」

一玖とえみのやり取りに、架は思わず吹き出す。

「一玖、いつもは結構大人っぽいのに、子供みたいで可愛いな」

「架くん、いっくんはホントガキんちょだよ?騙されてるなぁ」

「えみちゃんと兄貴より11も下なんだからガキに見えても仕方ないけど、架は俺のことガキ扱い禁止。いっこしか違わないからムカつく」

なんでだよ、と思いつつも、そんな一玖も可愛らしく見えてしまう架。


  イヤイヤ、違う。この『かわいい』は単純にガキっぽいって意味で、決して一玖本人がかわいいって意味じゃない。


自分に対してよく分からない言い訳をする。


  昨日から、なんか変だ・・・。何となく一玖を直視できないし、目が合ってしまうとなんか気まずい。
  話題を変えた方がいいな。


「あー、そういえば いちも家族から『いっくん』て呼ばれてんだよな。あだ名一緒じゃん」

「今はいいよ、市太さんの話は」

少しだけ不機嫌になる一玖。架は気にもしない様子。

「あ、そうそう、いっくんのお部屋、うちの子の子供部屋にしちゃったのよ~。社員寮も今いっぱいだし。最上階のVIPフロア、暫くご予約入ってないから2人で一部屋使って?」

「えっ!? いい一玖と、ど、同室ですか?」

「友達なんだから問題無いでしょ?」

「あ・・・はい」


  マジかよ。同室なんて聞いてない。友達ではあるけど、なんか色々とマズイ気がするんだけど・・・


「案内するわね」

架の心配を余所に、えみは旅館の裏へ回り従業員出入り口へと2人を連れて行く。


立派な表玄関とは違った簡素なドアを開けた瞬間、ふわっと漂う白檀の香り。
従業員専用のエレベーターに乗り、20階建ての最上階のフロアへ。


架は鼻で大きく息を吸い「はあ・・・」と蕩けるような溜息を吐き出す。

「この香り、好きなの?いっくんのお母様が旅館の為に調香したオリジナルの香りなの。サンダルウッドをベースにベンゾインとイランイランと・・・あと樹木系の何だったかな?忘れちゃったから企業秘密って事にしとくわね」

「言われてもよくわかんないんで大丈夫です。でもすごい好きかも」

「お客様に嫌味に感じさせないくらいの濃さで満たしてしてるつもりだけど、どうかな?」

「本当にちょうどいい感じで香ってて、癒し効果めっちゃあると思います」

「あーん、もう嬉しい!それがウチの売りなのよ~!ちなみに この香りは上階の3フロアと共同フロアで、他の客室フロアは違う4種類の香りなの!架くんといっくんはリネン担当してもらうから、後で他のフロアの香り、感想聞かせてね」

「はい」


  違う匂いのフロアもあるのか・・・。大丈夫かな、俺。



「ここが2人に使ってもらうお部屋よ。はい鍵。移動で疲れたでしょ?明日からコキ使うから、今日はゆっくり休んで」

一玖に部屋のカードキーを渡し、エレベーターに乗る えみ。


一玖と架2人しかいないフロアが、しんと静まり返る。

「とりま入ろっか」

一玖に促され客室へと入る。

広い和室の先には日本海を一望できる露天風呂。
左奥の部屋は大きなベッドがふたつ並んでいる。

「兄貴のヤツ、俺が友達連れてくって言ったから見栄張ったな。こんな部屋使わせてくれるなんて。ホントこういうとこ親父そっくり」

「俺はラッキーだけど。市太の部屋以外に泊まるなんてないし。修学旅行とか行ったこと無くてさぁ。初旅館がこんないい部屋なんてすげぇ」

部屋の中をウロチョロと見回る架。

「どこもかしこも一玖の部屋と同じ匂い!」

「架、それ無意識なの?ほんっと悪どいんだけど」

部屋を歩き回る架を背後から抱き捕まえる一玖。


  しまった。部屋の豪華さに浮かれて、同室は色々とヤバイんじゃ・・・なんて思ってたの忘れてた。


「一玖!あ、あのさ、そういう過度なスキンシップはどうかと思うぞ、俺は!」


  一玖と触れ合うと、何故か罪悪感でいちの顔がチラつく。一玖にこうされたい、したいのは、いちだと思うから。


「なんで?市太さんとはピッタリ過ぎるくらいくっついてんじゃん。友達なら普通でしょ?」

「そう、なのかもしんねぇけど」

「俺のこと、意識しちゃってる?」

一玖の言葉に、架はドキリとする。

「好きになっちゃった?」

「違う!絶対に!」

否定する唇を裏切るように早まる心音。




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