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Hiiho

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一玖架市太=堕落 3

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翌日

市太は自分の部屋から見える架の部屋の窓を眺めていた。
昨夜は開きっぱなしだった架の部屋のカーテンは、今朝からずっと閉じられたままだった。


  架、寝てんのかな・・・。それともずっと一玖と・・・


確かめる勇気は市太には無かった。



何もしないままベッドに横になり、昼過ぎにスマホが震える音で起き上がる。

『イチ暇? カラオケ行かね?』

ロック画面には、昨日一緒に飲み会へ行っていたつばさからのメッセージ。
出掛ける気分では無かったが数メートル先で一玖と架が昨夜の様に抱き合っているのかと考えると、気を紛らわせたくもなり『いいですよ』と市太は返事を返す。



電車に乗り数駅、つばさとの待ち合わせ場所へ行くと

「よお」

街路樹の植え込みを囲むブロックに座るつばさは市太に気付いて笑顔で手を上げる。

「珍しい。つばさくんひとり?他の先輩達は?」

いつも取り巻きのようなサークル仲間を引き連れているつばさが一人でいるのは稀だ。

「あー、昨日イチが帰った後、女の子たちと盛り上がっちゃってさ。結局朝まで乱交コース。で、全員死んでる」

「相変わらずクソだね。帰って正解だったわ」

「はは、まあ俺らのはヤリサーだから。そういう目的でしか集まんねぇって。お前も入ればいいのに」

「遠慮しとく。メシ食えるし飲み会は行くけど」

  ・・・そこで何度か女お持ち帰りしたから、俺もつばさくん達と同類だな。




近くのカラオケ店へ入り、個室に案内されるや否や つばさはソファの上で横になる。

「あークソ眠ぃ。イチ、ドリンク持ってきて」

「眠いならこんなとこ来ないで家で寝てれば良かったのに」

「うーん・・・とにかくジュース持って来いって」

「ハイハイ」

市太は空のグラスを2つ持ち、フロント近くのドリンクコーナーでコーラとオレンジジュースを入れて個室に戻ると、ソファに仰向けになり胸の下辺りで手を組んだつばさが目を閉じていた。

「何しに来たんだよ」

呆れつつテーブルにグラスを置いた市太は、本当に寝てしまったのか、と目を閉じたつばさの顔を覗き込む。
夏の間にした日焼けで薄い褐色になったつばさの肌。長い睫毛に高い鼻。小ぶりで形のいい唇。

  男のくせに美人なんだよなぁ。ヤリチンなのが勿体ない。

と心底思う。


「なあ イチ」

瞼を閉じたままのつばさが口を開く。

「・・・寝てなかったんすか。別に眠いなら寝てていーよ。俺あっちでマンガでも借りてくるから」

「なあ俺、どうしちゃったんだろうな?」

突然意味のわからない事を質問してくるつばさに、?マークが浮かぶ市太。

「昨日さぁ、久しぶりに女の子とセックスしたんだよ。・・・てか気持ち良くなるつもりだったんだよ」

「で?」

「勃つ。勃ちはすんだって」

「うん」

市太はオレンジジュースを飲みながら、流すようにつばさの話を聞く。

「挿入もできんだって」

「うん」

「でも足んねぇの。さみしーんだよ、ケツが」

「ぶっっっ」

口に含んだオレンジジュースを吹き出す市太。

「ちょっ、なんの話だよ!」


  昨日 架のあんな姿を見たばっかなのに、つばさくんまでケツって!


「・・・なあイチ。また弄ってくんない?」

「冗談やめろよ。俺いまそんな気分じゃ・・・つーかなんで俺?」

口から吹き出し飛び散ったジュースをおしぼりで拭きながら、市太はつばさをチラリと見る。
閉じていた瞼を開け縋るように自分を見るつばさの大きな瞳に、不覚にも下心を抱いてしまう。

「リゾバん時さ、イチに弄ってもらったじゃん?・・・で、その後なんかクセになっちゃって、向こうで引っ掛けた女の子達に頼んだりしたんだけどさぁ。まあフツーに引かれるじゃん?」

そりゃそうだ。と相手の女の子達に同情すらする市太。

「だからって男ナンパして、無理矢理チンポ突っ込まれるのもこえーし」

「・・・だから?」

「だから、イチに頼んでんの」

「俺なら、無理矢理突っ込んだりしないって?」

「しないだろ。お前はあのメス顔くんが好きなんだから」


  俺は、架が好きだ。できるなら架とセックスだってしたかった。
  だけど一玖に抱かれてた架は俺が想像していた綺麗なものじゃなくて、みっともなく腰を揺らして媚びるような甘ったるい掠れ声で喘いでて・・・

  俺以外を絶対に受け入れないと思ってたのに。他の男に汚されて堕ちた架を、俺はきっと許せない。


昨夜の出来事を思い出すと、架に対して軽蔑にも似た気持ちになる。
市太は自分勝手だと頭でわかっていても、心が、変わってしまった架を受けつけない。


「イチ・・・やっぱダメ?」

つばさの手が市太の手に触れて、しなやかな細い指が市太の指の間を縫うように絡まる。



「・・・いいよ」

市太は つばさの指を きゅっと握る。

「え、いいの?」

「自分で言っといてなんで驚くんだよ。ここでする? それともホテル行く?」

「・・・ここじゃ、マズイだろ」

「じゃあ出よう」

「え、・・・あ」

手を握ったままつばさを引っ張るように個室を出る。








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