エンシェントドラゴンは隠れ住みたい

冬之ゆたんぽ

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隠れ家――アンフェールとグレン2

アンフェールとやきもち ※

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 アンフェールとグレンは入浴を終えて、寝支度を済ませた。
 いつものように寝室のベッドの上で、仰向けで寝転がったグレンの上に、アンフェールはお腹をピッタリとくっつけるようにして乗っかっている。
 『魔力循環』をしながら寛いでいるのだ。
 寛いでいる、とは言っても寛いでいるのはアンフェールだけだ。グレンは呼吸も早く、頬を染め、目を潤ませている。序盤だというのに感じやすいグレンは既に出来上がっている。

「あれから閨係の人とは、進展あった?」

 アンフェールは穏やかに魔力を循環させながらグレンに戦果を問う。

 循環は最初はゆっくり、徐々に徐々に循環量を増やしていく。
 以前は只放出するだけだったグレンも、循環のコツが分かってきたようで、今は意識的にコントロールしながら魔力を渡してくれる。阿吽の呼吸だ。
 触れ合う肌と肌はじっとりと汗で濡れている。その湿度がアンフェールは好きだった。
 どことなく、グレンの汗は良い匂いがするのだ。舐めれば甘い。まるで『番』のようで、すごく不思議だ。
 グレングリーズの子孫だからだろうか。

「そ……そうだな。その、アンフェールが胸を……してくれるだろう? 手技をされると、閨でも疼くようになって……お願いして、少しだけ触れて貰ったんだ」

 グレンは色っぽく息を吐きながら、報告をしてくれた。恥ずかしいだろうに素直に報告してくれて、とても可愛い。

 ついに可愛い子孫が、乳首を弄って欲しいとおねだりをしたのか、とアンフェールは感慨深い気持ちになる。
 長い事乳首のみを弄ったり吸ったりした甲斐があった。閨係も、グレンの成長に感動の涙を流したろう。お兄さん力が高いなら喜んでくれたはずだ。
 まだ見ぬ――これからも見ることは無いだろう――閨係と、同志のハイタッチをした気分になった。

「そっか。良かった?」
「あ、ああ。良かったが……」

 グレンは『良かった』という割に口ごもる。

「胸の……形が変わったと……いわれた」
「ああ、乳首?」
「……っ」

 アンフェールがあけすけに『乳首』と口にしたせいで、グレンは可愛そうな位真っ赤になってしまった。
 性に関してまだまだうとい子孫はちょっとした言葉で恥じらってしまう。そこが可愛くて堪らないのだが、王として、男としてやっていく事を考えたらいささか不安だ。
 そういった事に耐性をつけさせねばならない。
 アンフェールは今後は言葉攻めも検討しなければ、と邪悪な戦略を練った。

 グレンはアンフェールが秒で邪な考えを検討した事を知らない。彼は恥じらいで目を伏せながら、指し示す様に指を乳首に当てた。

「……そうだ。その、これ・・は元には戻せないのだろうか」
「――なんで?」

 アンフェールは思わず食い気味に疑問を口にしてしまった。その乳首を戻したいなんてとんでもない。というか戻らないだろう、多分。
 グレンの今の胸のシルエットは大変美しい。煽情的だ。アンフェールが自分好みに育てた乳首だ。感度も良好なのに何が不満なのか。

「薄い服を……着ると、形が分かると……」
「ああ。でも、分かっちゃう服を着るのは閨の時だけでしょ? 閨の時にえっちな身体を相手に見せるのはいい事だと思うよ」

 そう言いながらアンフェールは薄物を纏ったグレンを想像した。
 薄い布越しにグレンの若くしなやかで男らしい身体が分かるのだ。そして、その布を押し上げる胸の尖りと、立派な陽根。きっと、見られる事を恥じらい、頬を染めて涙ぐむのだろう。性器は官能を求めてじんわりと濡れているに違いない。
 食うにしても食われるにしても、美味しそうな姿だ。

 アンフェールは竜種なので性における雄雌での役割分担があいまいだ。これは種族的なものだから仕方ない。
 王として男としての役割を求められるグレンが、雄を誘う身体をしていても、アンフェールは違和感を感じない。
 むしろ、色んなアプローチで快感を得られるなら良いんじゃないかぐらいに思っている。

 アンフェールはグレングリーズの性器を受け入れて、卵を産んだ経験もあるが、他の個体に挿入した経験だってある。
 むしろ、グレングリーズ以外との情交は挿入する側だったのだ。

「このように、ふしだらになった身体をみせて、いいことがあるのか?」
「美味しそうだから、いっぱい可愛がってもらえるよ」
「かわいがる……。しかし、はずかしい、のだ」
「ううん」

 やはり、慣れが必要だろうか。
 見られたり、触れられたり。たくさん愛されて可愛がられて、性接触が素晴らしい事だと、グレンに認識させないといけない。

「じゃあ、慣れるまで一杯可愛がってもらうしかないね。閨係のお兄さんに、もっとお胸を可愛がってもらお? 今は性器への手技だけでしょ? 最初にお胸を触ってもらう時間をつくればいいんだよ」
「そんな……」
「触られるの、良かったんでしょ? お兄さんなら毎晩、優しく触ってくれるよ。想像してみて? お兄さんにお願いして、いっぱい触ってもらうの」

 その言葉に想像したのか、グレンが一際色っぽい顔をした。

「想像した? お兄さんはどうやって触るのかな。優しくしてくれる? それとも、ちょっとイジワルしちゃうのかな?」
「あ……っ、やさし、けど……ちょっと、イジワル、する、んだ……」
「そうなんだ」

 ちょっとイジワルするのか。その気持ちは分かる。顔を真っ赤にして涙ぐむグレンを性的に追い詰めたくなるのは、男心があれば当然湧いてくる欲求だ。
 しかもグレンはそんなプレイが嫌では無いのだろう。先程から強く興奮する様子がうかがえる。これは魔力循環によってグレンの魔力を受け取っているから分かる事だ。
 こんなに恥ずかしがり屋のグレンが、閨係の行為を受け入れているのだ。閨係は手練れなのだ。

 アンフェールは、閨係と二人、協力してグレンを育てているのだ、という思いを新たにした。

 先程から魔力を注ぎ込んで可愛がっている乳首はしっかりと立ち上がっている。クニクニと嬲っても、キュッと摘まんでもグレンはいい反応を返す。
 すっかり開発され、立派な性感帯だ。魔力循環による魔力の刺激が無くとも、閨係の熟達した手技で乳首を愛撫すれば、いずれここだけで達する事も出来るかもしれない。
 何のブーストも無しで、触られただけで達するようになったら、グレンは羞恥で泣いてしまうんだろうか。そう思うとアンフェールはゾクゾクといきり立つのだ。

 人間の雄は無射精で達する事が出来ると、人間の社会に混じった時に聞いた。
 そんな子孫の姿をアンフェールは見てみたいな、と思う。

「あっ……」

 アンフェールはグレンの乳首を、指先で強く弾いた。

 魔力循環で感度が高まり、羞恥から何度も身体を震わせていたグレンは、その鋭い刺激で精を漏らしたようだ。
 竜種の嗅覚で精の匂いを嗅ぎ取る。いつも通り、濃く芳醇な匂いだ。若い精は好い。その匂いに、アンフェールの幼いアナルが疼いた。
 濃厚なグレンの精を胎で受け止める事を考えるとすごくクるのだ。
 グレンはいつもの様に漏らした事を恥じらっている。アンフェールから目を逸らして、荒くなった呼吸を整えている。

「ふふ。出ちゃったね。ちょっと、やきもち妬いちゃう」

 アンフェールはそう言って、ペロリと唇を舐める。
 グレンが目線を上げ、アンフェールを見る。不思議そうな顔をしている。

「やきもち」
「ぼくがグレンを一番可愛がりたいな、って。お兄さんに可愛がられる想像で出しちゃったって事は、想像の中のお兄さんが、すっごくグレンを可愛がったってことでしょ?」

 やきもちを焼いた事が分かりやすいように、ぷぅと頬を膨らませてみた。グレンの好む、子供じみた、精霊っぽい表情だ。
 グレンはアンフェールの態度に、しばらく目をパッチリさせて驚いていた。それからふっと力を抜いたように、表情を緩めた。
 笑った。
 その表情に、何故かアンフェールの胸はドキンと跳ねた。
 笑っていてもどこか翳を帯びているグレンが、屈託なく幸せそうに笑ったからかもしれない。

「……やきもちを焼かれて嬉しいと感じた。何故だろう」
「うん?」

 グレンはアンフェールのやきもち頬っぺを両手の平で包んだ。ぷに、とアンフェールのふくふくした頬っぺが寄せられて唇が尖る。
 変な顔にされてしまった。その顔にクスクス笑うグレンに、アンフェールは尖った唇のまま、むぅ、と理不尽さに眉を寄せた。

「何でって……」

 『何故だろう』という問いに対して、アンフェールは『分からない』としか答えようがない。
 グレンの気持ちはグレンにしか分からない。むしろ何故聞いてくるんだと思う。
 アンフェールは自身の気持ちは理解している。このヤキモチは祖先おじいちゃんとして子孫まごを一番可愛がりたいって気持ちだ。

 アンフェールとグレンは風呂で双満月の友になった。親友だ。
 親友から好意を向けられて嫌、って感じる事はあまり無いだろう。だからグレンは嬉しいんじゃなかろうか。多分。知らないけど。

「ぼくがグレンの事を大好きだって分かったから嬉しいのかな。親友になったもんね」

「……そうだな。親友だ」

 アンフェールの回答に、グレンは一呼吸置いてから同意してくれた。
 その表情は穏やかな日向から陰に入った様に、ほんのちょっとだけ寂しげに変化した。それがアンフェールは不思議だった。

 グレンは魔力循環に大分慣れてきた。アンフェールが十分と思う程流しても苦しんだりはしない。
 それでも、終わったらアンフェールは沢山グレンを褒める。グレンが自分自身を好きになれるように。

 アンフェールはグレンの頬っぺに、頑張ったねのキスをした。グレンも逆の頬っぺにキスをしてくれる。
 頬っぺに触れるだけのキスはくすぐったくて、二人、思わず笑ってしまう。


 親友って良いな。
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