エンシェントドラゴンは隠れ住みたい

冬之ゆたんぽ

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隠れ家――アンフェールとグレン4

アンフェールとグレンの罪悪感 ※

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 『精霊』アンフェールはグレンに別れを告げると決めた。
 決めたが、『弟』アンフェールに戻るなら今後グレンと同衾は望めない。

(最後に、ちょっと位いいだろう……。私達は番なのだから)

 アンフェールはこれを最後と決め、グレンと行ける所まで行くことにした。
 とはいえ精霊設定でいる幼体の形。挿入は無理だ。
 グレンのペニスは凶器に近い。
 あんな優しく穏やかなグレンにあんなものが生えているなんて、と毎回思う程の太さと長さだった。

(幼体だったアヴァロニアが、国王のものを突っ込まれて泣き叫んでいたのは結構なトラウマだ。アヴァロニアはほぼ私と同じ形だったしな……)

 挿入だけがセックスではない。
 アンフェールは神のごとき時間を生きてきた古竜種エンシェントドラゴンだ。
 今まで様々な性行為を経験してきたのだ。未経験なのは番のフェロモンを感じながらの睦み合いなわけで。

(グレンとお互い、性行為と認識しながら触れ合えるだけでもいいのだ)

 アンフェールは本日の指針をそう設定した。



◇◇◇



 食事と洗い物を終え、寝支度をし、今はグレンとベッドの上にいる。
 お互い全裸で重なり合い、肌を合わせている。
 魔力循環だ。

 立派になったグレンの身体。
 最初に出会った頃の面影はもう無く、厚みを増した男の身体になっている。

 腰の後ろに感じる彼の性器の気配。
 循環中滅多な事じゃ射精しなくなった彼も、魔力が出入りする刺激で勃起する。少し腰を動かせば、ちょん、とお尻に触れる熱っぽい剛直。
 欲しいな、という思いは胸に秘めたまま、アンフェールはグレンの乳首にちゅっと吸いついた。

「……っ」

 グレンはその刺激で僅かに顎が上がった。
 首を逸らすと浮き上がる喉仏のラインは美しい。あのカーブを舌でなぞり、歯を立てたいという欲求がむくむくと湧く。
 そのむくむくを解消するために、さらに乳首にむしゃぶりつく。
 グレンは乳首に執着するアンフェールを『赤子が母の愛を求めるようなものだ』と考えている事を知っている。まあるいほっぺの幼体が乳に吸いついてれば、確かにそう見えるだろう。
 彼の中ではアンフェールは穢れない精霊なのだ。
 だから、グレンはどんなに気持ち良くても善がり声はあげない。声を上げ、快感を得ている証を表に出す事は、アンフェールを穢すも同等と考えているからだ。
 
(本当、いじらしい。愛らしい……)

 アンフェールはそれを分かっていて、いつも弄っている。
 番に組み伏せられたい衝動とは別に、愛しさのままに可愛がりたい欲求もあるのだ。

「ふっ……! っ!」

 グレンは強く息を吐くようにして、身体を強張らせた。
 硬くなった身体が、しばらくして緩み、シーツにゆったりと沈み込む。
 目元が赤い。隠しきれていない、乱れた呼吸が色っぽい。

(達したのか。射精は起きていない。凄いな。ドライオーガズムでここまで反応を堪えるなんて。私なんかジタバタする方だが)

 ちらりと後ろに目をやれば、魅惑の性器が天を向いている。
 射精を伴わない絶頂故に萎えていない。可哀想なぐらい張っている。
 辛いだろうに、グレンはアンフェールに不埒な事はしない。あくまで『治療受ける』というスタンスを貫いている。

 いつもならこの後、グレンは寝室を出て自己処理している。
 アンフェールが手伝おうか、と進言しても困ったように微笑んで首を横に振るだけだ。ストイックな様子は好ましいけれど、もどかしい。

 グレンが性器の扱いを任せているのは、彼の閨係である男ただ一人で、それを考えるとモヤモヤとした嫉妬心も湧いたりする。

 初期の、グレンが魔力循環の奔流で我を忘れて乱れていた頃に、性器を弄っていれば良かった。
 そうすればなし崩し的に性器に触れる事を許されたろうに。
 まさかここまで頑なに治療というラインを守るとは思わなかった。後の祭りだ。

「どうした? アンフェール」

 グレンは心配そうな顔でアンフェールに声を掛けてくれた。いけない、と邪な思いを隠す様に笑顔で取り繕う。

「ううん、なんでもないよ。出会った頃を思い出しちゃっただけ。グレン、大人になったなぁって」
「アンフェールは変わらないな」

 アンフェールの言葉に、グレンのこちらを思いやる表情が、ふっと翳った。

「ずっと……変わらないのだろうか。それとも精霊の成長は遅いのか?」
「気になる?」
「気になる。私は……」

 そこまで言ってグレンは言葉を止めてしまった。何かを振り切る様に微かに首を振っている。
 言いかけて止められると、何が言いたかったのか非常に気になる。確実にアンフェールに伝えにくい事だ。そうに違いない。

「グレン?」
「……いや。その、幼子に悪さをしている様に感じる時があってな。
 治療だと分かっているし、アンフェールが幼子でない事は知っているのだが。そもそも人間じゃないといえばそうなのだが……」
「ふうん」

 アンフェールが続きを促すと、グレンは少し間を開けてから口を開いた。
 それが先程止まった言葉の正しい続きなのかどうかは分からない。そもそも悪さと呼べる何かをされた記憶も無い。
 魔力循環をする度にグレンの乳首を弄り倒しているアンフェールの方が、よっぽどイタズラっ子だ。

「悪さをしているのはぼくの方だよ、グレン。グレンは何もしないじゃないか」
「何もしていないという事は無いだろう? その、喉も撫でるしだな……」
「喉……。ペットを可愛がるようなものじゃない。している内に入らないよ」
「ペット……」

 ペットという単語で何を想像したかは分からないけれど、グレンはポッと頬を赤らめた。
 言葉だけでこんなに照れるなんて、相変わらず純情だ。
 そもそも『喉を撫でる』はそんなに恥じらう行為ではない。アンフェールの性感帯だとはいえ。

「んん。じゃ、ぼくが悪さを教えてあげるよ」
「アンフェール?」

 アンフェールは身体を起し、膝歩きでずりずりとグレンの腰の上に座った。
 グレンの勃ち上がったペニスを会陰で押しつぶすようにしている。

(さて。どう言いくるめようか。……考える程でもないか。毎度、魔力循環後は自慰をこなさねば耐えられないようだからな。
 竜種の体液をここに塗り付ければ、我慢など出来ないだろう)

 アンフェールは小さなお尻を揺らし、後孔から溢れた蜜をグレンの陰茎に擦り付ける。
 柔らかな会陰で感じるのは滾りに滾った熱と、ゴツゴツとした感触だ。
 ボコボコと浮いた血管も、筋張った硬さも、張り出した亀頭も、グレンの穏やかな性質と対極にある。
 グレンはこの性器にコンプレックスを抱いていたようだけど、アンフェールはむしろ好みだ。
 純情な彼に卑猥でしかないものがぶら下がっているという、アンバランスさが堪らないのだ。

 卑猥と言えば乳首もだ。
 散々吸ったので赤く色づき、ぷっくりと立ち上がっている。大人になり厚みの増した男らしい胸に、達せるほどの性感帯と化した飾りが乗っている。
 グレンはペニスだけでなく、どこもかしこもイヤらしいな、とアンフェールは満足げに笑った

「あ、アンフェール!」
「グレンは何もしなくていいよ」

 魔力循環中の高まりで、アンフェールの後孔はぬるぬると濡れて、腿の辺りまで滴っている。会陰もアナルも雄を求めて感度が高まっている。
 幼い穴には収まらないけれど、擦るぐらいなら。この逞しい雄で、陰部を擦るだけでも気持ちよくなるはずだ。
 グレンだって満更じゃないだろう。彼の亀頭は先走りですっかり濡れてしまっている。

(凶悪で美味そうな性器だ。今の年齢の人型で繋がってしまいたい。腹の中で感じたらどれだけ気持ちいいだろう)

 アンフェールは舌なめずりをしながら、体重を掛けて腰を揺らした。

 アンフェールの陰部は幼体なのでツルツルとしている。
 蜜でぬるつくそこで、グレンのペニスを滑る様に刺激する。竜種の交接は巨大なペニスを受け入れる分、蜜の粘度が高く、量も多い。
 魔力を含む蜜で濡らされ、擦られると快感が強く生じる。 
 前世アンフェールはグレングリーズ以外と交わる時は挿入する側だった。数多の竜の蜜を味わったが、魔力が多い個体であればあるほど気持ちが良かった。

 アンフェールの現在の魔力量であれば、グレンは相当気持ちいいはずだ。
 事実、目の前のグレンは既に溶けそうな顔をしている。 

「だ、だめだ、アンフェール……」
「大丈夫。怖がらないで」

 アンフェールは安心させるように微笑みながら、グレンの拒絶を封殺した。
 グレンは口ではダメだダメだとうわごとの様に繰り返しているけれど、腰は僅かに動いている。無意識であっても快感を拾おうとしている。
 彼も気持ちいいのだ。
 竜種の蜜を初めて味わうのだから仕方ない。理性の壁なんて脆いものだろう。

「ぐれん、きもちい? ……きもちいいね……あ、ほら、おちんちん、びくびくしてるね……」
「……っ、あんふぇーる……」
「こんなに、びくびくで、かわいそ……。ぴゅってして、らくになろ?」
「だ、だめ、だめだ……あ、あッ……」

 グレンは泣きそうな顔をしながら、顔を真っ赤にして身悶えしている。
 抵抗しようと思えば抵抗できる。グレンは力も強いし、アンフェールは小さく軽い。押し退けないという事は、ほぼ受け入れているのだ。
 それでも最後の抵抗か、グレンは喘ぐことをしない。ああ、とか、ううとか小さな声で呻いている。
 その、慎ましさが余計にアンフェールを煽るのだ。

「ぼくもきもちいいよ、ぐれん……せっくすみたいだね」
「~~~~ッ!」

 その言葉で、グレンは快感を極めてしまった。

 身体に何度も力が入り、白濁をビュービューと飛ばしている。
 アンフェールが上に乗っているので、角度的にグレンの腹に吐き出されている。その様子をアンフェールは逃さずに見つめた。
 量も多く濃い精液だった。
 グレンは若い頃から精液の量が多かった。交雑種だからかもしれない。
 人間の射精をアンフェールは何度か見た事がある。比べるとグレンの精液の質は、人間よりも竜種に近いかもしれない。

 グレンの精液は青臭いのに、好ましいと感じてしまう。番のフェロモン臭だ。
 アンフェールはすんすんと匂いを嗅ぎながら、拭き布を使い、グレンの腹に付着した精液を拭きとった。

 これがグレンとの最後の性行為なのだ。
 だから番の性フェロモンの匂いを保管することにした。拭き布には『保存プリザーベーション』を掛けておく。戦利品だ。
 神のごとき古代竜エンシェントドラゴンの矜持はどうした、と思わないではないけれど、番の香りというのはそれ程に魅惑的なのだ。
 アンフェールは欲求に素直だった。

「綺麗になったよ、グレン」

 グレンは声掛けにハッと我に返ったように、アンフェールの方を向いた。
 アンフェールの蜜が余程効いたのか、グレンは絶頂後、自失状態のようにボーっとしていた。
 力無く横になったままのグレンは、アンフェールが拭き布を用意し、拭き取り、保存し、またベッドに戻ってきて彼の脇にぺたんこ座りする一連の過程を認識していないようだ。
 割と情けない事をしている自覚はあるので、それは有難かった。

「す……すまない、アンフェール」
「どうして謝るの? 悪さをしたのはぼくだよ? 幼く見えても、ぼくはこういう悪さをする程度に中身は成熟しているんだ。だからグレンは何にも悪くないんだよ」
「私、は……」

 アンフェールの言葉にグレンはたどたどしく言葉を返すも、言い出せないように口をつぐんでしまった。
 そして傷ついたような目をして顔を逸らしてしまう。

 アンフェールの見た目は幼い。性接触する上で、そう言う部分にグレンが忌避感を覚えるのは理解できる。
 それにグレンはアンフェールを過剰に神聖視している部分がある。『穢れない精霊』とかいうやつだ。
 だからアンフェールは、自身の汚い部分をグレンに知らしめないといけないと思った。
 グレンはアンフェールの接触で快感を得る度に、罪人にでもなった様な顔をする。あれは頂けない。壁は打ち壊さないといけない。

 グレンが罪を感じる事なんて何もない。そう、教えたかった。

 案の定グレンは苦し気に眉を寄せている。
 そして、告解でもするんじゃないかと思われる程神妙に口を開いた。


「私は……アンフェールに浅ましい色欲を感じる事があるのだ。親友に、そんな事を感じてはならないと……分かっているのだ。すまない……こんな……」


 そう言ってグレンは、ポロリと涙を零した。

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