18 / 45
17
しおりを挟む
黄色や赤に染まった紅葉や、楓、銀杏の葉が舞う大通りを、豪華な馬車が列をなして走っていく。将来の皇妃への歓声があがり、通りの人々はインダルア王国の国旗を振り二人の姫の美しさを口々に称えた。
ルーナ姫とリーナ姫が帝国へ旅経つのをルミアは城から眺め下ろしていた。
二人の姉姫は、たびたびルミアに嫌がらせをしてきた。
社交や礼儀作法で劣っていたルミアが、すぐに二人に追いつき教師から褒められる事が気に入らないらしい。リリアンナ妃に甘やかされて育った二人の姫の帝国語は覚束なく、帝国へ向かったとしても、他国からも何人も招かれている皇子の婚約者候補に勝るとは思えなかった。
第2妃のリリアンナ妃も付き添いとして帝国へ暫く滞在するみたいだ。
父王は本当にリリアンナ妃に無関心だ。妃が他国に滞在するなんて考えられないのに。
ルミアは、少し微笑みながら窓から離れ、城の最北にある古い書庫へ向かった。
夏の終わりに見つけた古い書庫には、普段は図書室に置かれていない古い本や外国の本が保管されている。
ルミアには調べたい事がある。あの日ロンから渡されたシルバーの指輪は、インダルア王国の物ではない。指輪の裏側に文字のような文様が刻まれており、外国語だと分かる。ルミアには読む事ができなかった。
書庫の中はひんやりと涼しく、狭い通路に沢山の本が並べられていた。帝国の書物を中心にルミアは分厚い本をパラパラと捲った。
いつの間にか日が暮れ夕方になっていた。帝国語で書かれている分厚い本の中に指輪の文様と同じ文字を見つけた。
『ライカー国』
どうやら十数年前に滅びた国の文字らしい。帝国との戦争で滅び吸収されたと書かれている。
ライカー国があった場所は、帝国の西端で、インダルア王国からは帝国を縦断しなければ辿り着けない。
「ロン。貴方はどこにいるの?」
書庫を出たルミアは、薄暗くなった裏口を抜けて、迷路庭園の中に入っていった。
枯葉に囲まれたコテージはやはり静まり返っている。
誰も訪れた気配がない。
ずっとルミアは待っている。
城の豪華は部屋を与えられ、十分な教育と、たくさんの衣装や宝石を手に入れた。塔で生活していた時とは比べものにならない程の待遇を受けている。だけど、本当に欲しいものがどうしても足りない。
歓迎しているように見える父王だが、なにかが可笑しい。
父王はルミアの事を気にかけているように見える。
だけど、、、
王はルミアを教育し、王女の衣を着せ、その進歩を教師に尋ねるが、ルミアには話しかけてこない。目の前にいるのに、第3王女という殻だけを大事にしているようだ。
優しそうなルクラシア王妃とは、殆ど接点がない。公共の場で遠くに会釈を交わす程度だ。
弟王子ルキアは、病弱らしく部屋に籠る事が多い。城に移って半年になるのに王子ルキアに一度も会った事がなかった。
コテージのドアを開けて中に入る。
一瞬大柄なロンが長い腕を広げて椅子に座っているように見えた。
目をこすりもう一度見ると、薄暗い部屋に古びたテーブルと椅子だけが置かれていた。
分かっている。ロンはいなくなった。
ずっと待っている。
一人で、暗闇の中。
ただ貴方が来てくれるのを。
「ロン。どこにいるの?逢いたい。逢いたいの」
暗闇の中ルミアは一筋の涙を流した。
ルーナ姫とリーナ姫が帝国へ旅経つのをルミアは城から眺め下ろしていた。
二人の姉姫は、たびたびルミアに嫌がらせをしてきた。
社交や礼儀作法で劣っていたルミアが、すぐに二人に追いつき教師から褒められる事が気に入らないらしい。リリアンナ妃に甘やかされて育った二人の姫の帝国語は覚束なく、帝国へ向かったとしても、他国からも何人も招かれている皇子の婚約者候補に勝るとは思えなかった。
第2妃のリリアンナ妃も付き添いとして帝国へ暫く滞在するみたいだ。
父王は本当にリリアンナ妃に無関心だ。妃が他国に滞在するなんて考えられないのに。
ルミアは、少し微笑みながら窓から離れ、城の最北にある古い書庫へ向かった。
夏の終わりに見つけた古い書庫には、普段は図書室に置かれていない古い本や外国の本が保管されている。
ルミアには調べたい事がある。あの日ロンから渡されたシルバーの指輪は、インダルア王国の物ではない。指輪の裏側に文字のような文様が刻まれており、外国語だと分かる。ルミアには読む事ができなかった。
書庫の中はひんやりと涼しく、狭い通路に沢山の本が並べられていた。帝国の書物を中心にルミアは分厚い本をパラパラと捲った。
いつの間にか日が暮れ夕方になっていた。帝国語で書かれている分厚い本の中に指輪の文様と同じ文字を見つけた。
『ライカー国』
どうやら十数年前に滅びた国の文字らしい。帝国との戦争で滅び吸収されたと書かれている。
ライカー国があった場所は、帝国の西端で、インダルア王国からは帝国を縦断しなければ辿り着けない。
「ロン。貴方はどこにいるの?」
書庫を出たルミアは、薄暗くなった裏口を抜けて、迷路庭園の中に入っていった。
枯葉に囲まれたコテージはやはり静まり返っている。
誰も訪れた気配がない。
ずっとルミアは待っている。
城の豪華は部屋を与えられ、十分な教育と、たくさんの衣装や宝石を手に入れた。塔で生活していた時とは比べものにならない程の待遇を受けている。だけど、本当に欲しいものがどうしても足りない。
歓迎しているように見える父王だが、なにかが可笑しい。
父王はルミアの事を気にかけているように見える。
だけど、、、
王はルミアを教育し、王女の衣を着せ、その進歩を教師に尋ねるが、ルミアには話しかけてこない。目の前にいるのに、第3王女という殻だけを大事にしているようだ。
優しそうなルクラシア王妃とは、殆ど接点がない。公共の場で遠くに会釈を交わす程度だ。
弟王子ルキアは、病弱らしく部屋に籠る事が多い。城に移って半年になるのに王子ルキアに一度も会った事がなかった。
コテージのドアを開けて中に入る。
一瞬大柄なロンが長い腕を広げて椅子に座っているように見えた。
目をこすりもう一度見ると、薄暗い部屋に古びたテーブルと椅子だけが置かれていた。
分かっている。ロンはいなくなった。
ずっと待っている。
一人で、暗闇の中。
ただ貴方が来てくれるのを。
「ロン。どこにいるの?逢いたい。逢いたいの」
暗闇の中ルミアは一筋の涙を流した。
71
あなたにおすすめの小説
私達、政略結婚ですから。
潮海璃月
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
【完結】あなたの瞳に映るのは
今川みらい
恋愛
命を救える筈の友を、俺は無慈悲に見捨てた。
全てはあなたを手に入れるために。
長年の片想いが、ティアラの婚約破棄をきっかけに動き出す。
★完結保証★
全19話執筆済み。4万字程度です。
前半がティアラside、後半がアイラスsideになります。
表紙画像は作中で登場するサンブリテニアです。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら
雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」
「え?」
伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。
しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。
その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。
機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。
そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。
しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。
*他サイトでも公開しております。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います
珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。
最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。
それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる