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しおりを挟むナリアお嬢様の侍女には、ルミアを含めて3人の娘が選ばれた。侍女仲間と一緒に馬車に乗り込み皇城へ向かう。
馬車で、他の侍女達が話しかけてきた。
「初めまして、私はロキシー。レナリア商会副会長の姪なの。ナリアとは遠い親戚になるのよ。貴方はルミーでしょ。凄いわね。夫人に認められる人なんてなかなかいないわよ。」
ロキシーは、淡いクリーム色の髪色で、大きな瞳の可愛い娘だった。ロキシーの隣に座るグレイの髪色の細身の娘が言った。
「正直、ルミーが来てくれて助かるわ。私はクライよ。ナリアお嬢様って結構癖があるの。少しでも気に入らないと癇癪を起すし、貴方も気を付けてね」
ルミーは言った。
「昨日初めてナリアお嬢様にお会いしたのですが、なんだか私に敵意を持っていらっしゃるように感じました。」
「まあ、ナリアはずっと金クジャクのネックレスが欲しいって言っていたから、夫人が貴方に渡したことが気に入らないのかもしれないわ」
「さすがに、ナリアお嬢様でも、取り上げたりしないと思います。夫人にはお嬢様も太刀打ちできません。大丈夫ですよ」
「ナリアお嬢様は婚約者として城へ向かうのですよね。もしかして皇子様の婚約者に選ばれたのですか?」
ルミアが尋ねると、二人は顔を見合わせて笑った。
「ふふふ。ちょっと違うわ。本当の事を言うとね。ナリアが自称しているだけなの。去年第3皇子が国境付近で襲撃を受けた時に、レナリア商会がお助けしたの。商会の治療院で第3皇子が治療をしている時に、ナリアが一目惚れしてしまったみたいで、それからずっと第3皇子の婚約者だ。運命の恋だって騒いじゃって」
「ナリアお嬢様も、かなり発信力がある方ですから。レナリア商会の総力を使って、新聞や小説、雑誌、絵本に広告。ありとあらゆる媒体に皇子と商人の娘の恋を宣伝させて、もう大騒ぎになりました。結構人気なんですよ。『王子を救った娘』って小説知らないですか?中央劇場で演劇まで開催しています。とうとう皇室が黙ってなくて、ナリアお嬢様が皇城に招かれる事になりました」
「城に上がってこれ以上騒ぐなって事だと思うわ」
「巻き込まれた私達は、泣く泣く付いていくしかありません」
この世の終わりのように暗い顔で悲しそうに言う二人にルミアは問いかけた。
「皇城ですよね。素敵な場所ではないのですか?」
「城にはね、皇子の婚約者候補がウジャウジャいるのよ。魑魅魍魎の巣窟よ。ここ数年は帝国各地だけでなく外国からも、年頃の娘がやってくるの。皇城で働いている知り合いに聞いたのだけど…もう毎日戦争のように姫やお嬢様達がやりあっているらしいわよ。それに第2皇子に手を付けられた場合はより悲惨な事になるわ。遊びつくされて最終的に娼館に送られた子までいるって噂よ」
クライは、ルミーの手を指さして言った。
「ねえ、ちょっと、ルミー。貴方その指輪は?」
ルミーは、ロンから貰ったシルバーの指輪をそっと撫でた。
「これは…」
ロキシーが言う。
「ちょうどいいわ。貴方、夫がいる事にしなさいよ。第2皇子は処女厨だから、生娘にしか興味がないのですって。自分の身は自分で守らないとね」
二人は、ニヤリと笑い手の功をルミアに見せてきた。二人の指には金の指輪が嵌まっていた。
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