人気アイドルだって、普通に恋して嫉妬もする男性ですから ～短編集～

〈ケイタの話〉コウキの彼女にご挨拶

今夜はdulcis〈ドゥルキス〉の最年長、アラタ主催の懇親会。つまりは、飲み会がある。

参加率の悪いコウキが彼女を誘って参加するとなったので、これは面白そうだと、急いで仕事を終わらせて来たのに、飛行機が遅れて遅刻らしい。


『はじめまして、佐倉美咲です』


店に来たコウキの彼女は、想像したよりずっと普通の女の子だった。あ、容姿のことじゃないよ。美人というより、可愛い系。学年で2、3番目にモテるだろうなって感じ。伝わるかな。


自分と同じ芸能人、もしくは関係者とばかり飲むようになって久しい。業界に染まっていない、ごく普通の雰囲気の女の子は久しぶりだな。

ファンに手を出すと、アラタが鬼のように怒るから、手近な所でしか飲めないのはつまらない。


「美味しいですね、このワイン」


グラスを手に屈託の無い笑顔を見せる。


「ボクがお相手じゃ嫌？それとも、年下はキライ？」


美咲たちゃんは、頬を赤らめうつむいた。なんだ、簡単に落とせちゃったらつまらないな


人のものには興味ないよ。欲しがったところで虚しくなるからね。

友だちの持っている、最新ゲーム、ピカピカの自転車、優しいママとパパ。あったらいいなと思うものは、数えたらキリがない。


ただ、幸せそうな笑顔を見ると、羨ましいなぁと思うから、少しだけ悪さがしたくなる。


「ケイタさんは、彼女はいないんですか？」

「いないよ。エッチする相手と、飼い主ならいるけど」


キョトンとされた。まぁ、いいよ、理解は求めませんから。


「好きな人は、いるよ」

「片思い、ですか？」

「まぁ、そうだね。結婚しちゃったから」

「そうですか」


あれ？なんで美咲ちゃんが落ち込むのかな。


「奪っちゃおうかな」

「だめ、不倫はだめです」


腕で大きくバツをつくる。しょっぱい顔して、かわいいじゃん。


「えーー、まじめだね」

「叶わなくても、先が無くても、その人を好きだと思う気持ちは、否定せずに大事にしてください」


わかるような、わからないような。

真っ直ぐ真剣な目で言われたら、納得するしかないのかな。ほわんとした雰囲気なのに、ちゃんと芯が通っているのかな。


「好きな気持ちは自分だけのものですよ」


もしかしたら、ただの酔っぱらいの戯言なのかもしれないね。


ボクの隣に座ったら、グラスが空になることはないからね。ホスト経験者だから、飲ませ上手なんだ。

美咲ちゃんは気付いていないかもしれないけれど、結構な量を飲ませちゃったもの。ほら、ボトルも空っぽだ。


「ボク、美咲ちゃんのこと、好きになっちゃうかも」


そのときだ。


個室のとびらが開く音に振り替えると、鬼みたいな顔のコウキが、文字通り仁王立ちしていた。



★お読みいただきありがとうございます★

ケイタが主役の物語性もぜひご覧ください(_ _)

さみしがりやの末っ子アイドルは、仕事ばかりの30才バツイチに愛されたい

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