9 / 16
〈コウキの話 3〉過度な嫉妬にご用心
しおりを挟む
某テレビ局の楽屋。音楽番組の収録前のこと。
「おはよう、コウキ君。今日よ時間ピッタリね」
メイクの加奈子さんが笑顔で迎えてくれる。
「おはよー、コウキ」
顔面、炭入りパックで真っ黒なのはアラタだ。
dulcis〈ドゥルキス〉の入り時間は、毎回決まって年齢順だ。
だいぶ早く余裕を持って来るアラタ、10分前到着を厳守する俺、時間ピッタリに同い年コンビのジュンとサクヤ、最後は遅刻常習犯のケイタだ。
「え、誰がどこに行くって?」
ドライヤーをかけながらが聞き流していた会話、そこに『美咲ちゃん』というワードが入った。
「美咲ちゃんが、美容クリニックに行くんだって。さっき、愛香から電話で聞いた」
アラタは顔パックをはがし、鏡の前に座ると、加奈子さんが化粧を施し始めた。
「アラタが通ってるクリニック?」
「そう」
日本で一番有名と言っても過言ではない、男性専用の美容クリニック。そのCMに出演しているアラタだが、実際には、もっと小さな馴染みのクリニックに、足繁く通っているのは知っている。
「美咲は何しに?」
「脱毛でもするんじゃない?」
「え、何で?」
「夏は肌の露出が増えるから、暑くなる前に通うのはよくあることだけど」
露出だって?冗談じゃない。
「アラタ君の通っているクリニック、院長が超イケメンで話題のところよね」
アラタの目元にアイラインを入れながら、加奈子さんが口を挟む。
うん。アラタのアイメイクは加奈子さんが一番上手いな。
「愛香の従兄なんだ。医者、金持ち、イケメン、超絶テクニシャン、ついでにサディスト」
「なにそれ、最高じゃない!」
「なんだそれ、最悪じゃないか!」
俺と加奈子さんの真逆な言葉に、アラタが楽しそうに笑った。
「ちょっと待て。美咲の脱毛って、どこをやる気なんだ」
そもそも、毛深くもないのに必要ない。
「セルフケアは手間だし、肌を痛めるのよ。それに、自分の手が届かないところこそ、プロにお願いするのがいいのよね」
「そうそう、全身ツルツルで不快感おさらば」
「セックスの感度も上がるわよ」
「ねーーーー」
全身ツルツルな2人が盛り上がる。
「電話してくる」
楽屋を出ようとしたが、加奈子さんの手に阻まれた。
「ダメ!次はコウキ君の番!さっさと終わらせないと、あと3人残ってるんだから」
仕方なく鏡の前に座ると、楽屋の扉が開いた。
「おはようございます」
真面目な挨拶はジュン。
「おはよーーす」
気の抜けた軽い挨拶はサクヤだ。
「コウキ君、不機嫌そうですね」
「眉間にシワ寄せると、加奈子さんに怒られるのに」
テーブルに置かれた弁当を品定めしながら、2人がボソボソと話しているが、聞こえてるんだよ、全部。
案の定、ファンデーションを塗る加奈子さんに睨まれた。
「そんなに心配しなくても、ちゃんと女性スタッフがやってくれるよ」
メイクを終えたアラタだ。
「医者にまで嫉妬してたら、キリが無いわね。婦人科だって、男性医師は多いからね」
「は、婦人科?」
それは、仕方ない。いや、そうなのか?探せばいるだろ、女医くらい。
「おはようございまぁす」
神経を逆撫でする、甘い声。
「ケイタ、遅刻!」
最年少で後輩が最後って、どういうことだよ。甘やかされ過ぎだろう。
「うわぁ、不機嫌モードじゃん。なになに?サクヤ、何かやらかしたの?」
「なんでオレなんだよ」
不満そうにサクヤが言う。
「コウキ終わり、次はジュン君?サクヤ君?どっちか座って」
メイクを終えたので、心置きなく美咲に連絡しよう。
間違っても、『医者、金持ち、イケメン、超絶テクニシャン、ついでにサディスト』に心を動かされないように。
本当になんでこんなに気になるのか。自分でも不思議で仕方ない。
こんなに心配ばかりしてたら、はげてしまいそうだ。
「おはよう、コウキ君。今日よ時間ピッタリね」
メイクの加奈子さんが笑顔で迎えてくれる。
「おはよー、コウキ」
顔面、炭入りパックで真っ黒なのはアラタだ。
dulcis〈ドゥルキス〉の入り時間は、毎回決まって年齢順だ。
だいぶ早く余裕を持って来るアラタ、10分前到着を厳守する俺、時間ピッタリに同い年コンビのジュンとサクヤ、最後は遅刻常習犯のケイタだ。
「え、誰がどこに行くって?」
ドライヤーをかけながらが聞き流していた会話、そこに『美咲ちゃん』というワードが入った。
「美咲ちゃんが、美容クリニックに行くんだって。さっき、愛香から電話で聞いた」
アラタは顔パックをはがし、鏡の前に座ると、加奈子さんが化粧を施し始めた。
「アラタが通ってるクリニック?」
「そう」
日本で一番有名と言っても過言ではない、男性専用の美容クリニック。そのCMに出演しているアラタだが、実際には、もっと小さな馴染みのクリニックに、足繁く通っているのは知っている。
「美咲は何しに?」
「脱毛でもするんじゃない?」
「え、何で?」
「夏は肌の露出が増えるから、暑くなる前に通うのはよくあることだけど」
露出だって?冗談じゃない。
「アラタ君の通っているクリニック、院長が超イケメンで話題のところよね」
アラタの目元にアイラインを入れながら、加奈子さんが口を挟む。
うん。アラタのアイメイクは加奈子さんが一番上手いな。
「愛香の従兄なんだ。医者、金持ち、イケメン、超絶テクニシャン、ついでにサディスト」
「なにそれ、最高じゃない!」
「なんだそれ、最悪じゃないか!」
俺と加奈子さんの真逆な言葉に、アラタが楽しそうに笑った。
「ちょっと待て。美咲の脱毛って、どこをやる気なんだ」
そもそも、毛深くもないのに必要ない。
「セルフケアは手間だし、肌を痛めるのよ。それに、自分の手が届かないところこそ、プロにお願いするのがいいのよね」
「そうそう、全身ツルツルで不快感おさらば」
「セックスの感度も上がるわよ」
「ねーーーー」
全身ツルツルな2人が盛り上がる。
「電話してくる」
楽屋を出ようとしたが、加奈子さんの手に阻まれた。
「ダメ!次はコウキ君の番!さっさと終わらせないと、あと3人残ってるんだから」
仕方なく鏡の前に座ると、楽屋の扉が開いた。
「おはようございます」
真面目な挨拶はジュン。
「おはよーーす」
気の抜けた軽い挨拶はサクヤだ。
「コウキ君、不機嫌そうですね」
「眉間にシワ寄せると、加奈子さんに怒られるのに」
テーブルに置かれた弁当を品定めしながら、2人がボソボソと話しているが、聞こえてるんだよ、全部。
案の定、ファンデーションを塗る加奈子さんに睨まれた。
「そんなに心配しなくても、ちゃんと女性スタッフがやってくれるよ」
メイクを終えたアラタだ。
「医者にまで嫉妬してたら、キリが無いわね。婦人科だって、男性医師は多いからね」
「は、婦人科?」
それは、仕方ない。いや、そうなのか?探せばいるだろ、女医くらい。
「おはようございまぁす」
神経を逆撫でする、甘い声。
「ケイタ、遅刻!」
最年少で後輩が最後って、どういうことだよ。甘やかされ過ぎだろう。
「うわぁ、不機嫌モードじゃん。なになに?サクヤ、何かやらかしたの?」
「なんでオレなんだよ」
不満そうにサクヤが言う。
「コウキ終わり、次はジュン君?サクヤ君?どっちか座って」
メイクを終えたので、心置きなく美咲に連絡しよう。
間違っても、『医者、金持ち、イケメン、超絶テクニシャン、ついでにサディスト』に心を動かされないように。
本当になんでこんなに気になるのか。自分でも不思議で仕方ない。
こんなに心配ばかりしてたら、はげてしまいそうだ。
2
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる