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第1章:チュートリアル
5.ダンジョン第2階層青エリア
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「カケル君の場合はまず装備をなんとかした方が良いだろうな」
翔琉とオットシが向かったのは出国ゲート内にあるホームセンターだった。
九頭竜異港は成田空港を遥かに超える規模の複合施設でホテルからレストラン、病院
、映画館、果ては温泉に至るあらゆる設備が揃っている。
中でも特に出色なのがホームセンターで、九頭竜異港のホームセンターは日本一の規模だと言われていた。
「出国ゲート前に買ってもいいんだけどゲート内だと免税で買えるからお得なんだよ」
オットシがでかいカートを押しながら説明してきた。
「まずは要らないものを売っぱらうかコインロッカーに預けておこう。日没までに帰ることを考えたらテントや寝袋の類は必要ないからね」
「…はい」
余計な装備ばかり持ってきた翔琉は恥ずかしそうに頷いた。
何を持っていったらいいかわからなかったからとりあえず家にあったキャンプ道具を全部持ってきてしまったのだ。
幸い異港にはそういう人が多いらしく中古屋も出店していて買取を行っている。
翔琉の持っていた要らない装備は総額5000円ほどで売ることができた。
「じゃあまずはマーカー石の確保からだな。売り切れる前に買ってしまわないと」
マーカー石は一個一万円だった。
「やっぱり買った方が良いんですか?オットシさんも持ってるんですよね?」
「駄目駄目、これは絶対に買っておいた方がいい。はぐれる場合もあるんだから、必ず持っておかないと」
「…わかりました」
昨日の稼ぎと合わせて6万円の中から1万円を使って翔琉はマーカー石を買った。
ちなみに異港内の支払いは全てダンジョンナビについている決済機能で行うことができる。
「次は武器と装備品だな。低階層で特に目的はない、となると汎用的な装備が良いか…」
オットシは嬉しそうに言いながら籠の中にドサドサと色んな道具を入れていく。
バカでかい鞘付きの山刀、皮手袋、マスク、ゴム手袋、水、ジャングルハット、携帯食料…みるみるうちに籠がいっぱいになっていく。
「ちょちょちょ、こんなに買うんですか!?」
「何を言ってるんだ、これでも最低限の装備でお買い得品ばかり選んでるんだぞ」
オットシは呆れたように言うと籠から山刀を取り出した。
使った痕跡のある山刀で、刀身に不気味な染みが残っている。
「特に武器は必須だ。こいつは中古品だから安いし買取保証も付いてるから帰ってきたら価格の9割で買い取ってもらえるんだ」
「だ、大丈夫なんですか?」
翔琉は恐る恐るその山刀を受け取った。
使い古されてはいるけど刃こぼれは全くない。
「研いだ後で再出品されているから切れ味に問題はないよ。さあまだまだ行くぞ」
結局更に買い物は続き、総額は3万円となってしまった。
これで翔琉の残金は2万5000円しかない。
「なあに、その位すぐに返せるって!今日はちょっと奥まで行ってみるつもりだからね!」
オットシが翔琉の背中を威勢よく叩いた。
「ほ、本当に大丈夫なんですか…?」
買い物を済ませた二人は青エリアの待機列へと向かった。
怒鳴り声が聞こえてきたのは待機列の最後尾についた時だった。
「だから何度も言ってるでしょ!あんたたちと行く気なんかないっての!」
若い女性の声だ。
何事かと首を伸ばして見ると隣の藍エリアで一人の女性と男たちが言い争っていた。
女性の方は翔琉と同じ位の年齢だろう、長い髪をポニーテールにして作業用のジャケットとカーゴパンツ、ブーツといういで立ちにカンバス生地のケープのようなものを羽織っている。
いかにもダンジョン探索に慣れている、といったいでたちだ。
男たちの方も動きやすい恰好でダンジョン探索の経験がありそうな感じだ。
「そうつれねえこと言うなよ。俺たちと組んだらそっちにもメリットはあるんだぜ」
「そうそう、儲けは山分けなんだから悪い話じゃねえだろ」
「それに俺たちの中じゃあんたは紅一点だ。悪いようにはしねえぜ?」
女の言葉を気にする様子もなく男たちはへらへらと笑いながらその女性の肩に手をかけた。
「あれはスカウトだな。ダンジョンに入る前にチームを組むというのはよくある話なんだ。おそらくあのお嬢ちゃんが何か特殊なジョブかスキルを持っているんだろうな。時々ああいう風に強引に引き入れようとして揉め事を起こす奴が出てくるんだよ」
オットシがひそひそ声で説明してきた。
「しつこいっての!誰か別の人をあたったら?あんたらみたいなのについてく奴がいるとも思えないけどね!」
その女性は肩にかけられた手を荒々しく振り払うと話にならないというように踵を返した。
「てめっ…!」
男の内の一人が形相を変えて背後からその女性を突き飛ばした。
「なにすんのさっ!」
突き飛ばされて床に崩れ落ちた女性がそれでも怯むことなく男たちを睨みつける。
「なにじゃねえよ。こっちが頼んでるからって調子に乗りやがって」
男がその胸ぐらをつかもうとした時、翔琉がその腕を掴んだ。
「なんだてめえは?こいつの知り合いか?」
「いえ、そういう訳じゃないんですけど、暴力はいけないかなって…」
「関係ねえならすっこんでろ!」
男が翔琉の胸倉を掴む。
翔琉はその手首を極めると男の肘を引き寄せながら前へと体重をかけた。
「あだだだだだっ!」
肘と手首を極められた男が膝をついて苦悶の表情を浮かべる。
「てめえっ!」
一緒にいた男たちが色めき立った。
「そこっ!何をしているんだ!」
武装した異港警備隊が来たのはその時だった。
「ちっ!なんでもねえよ。おい、いくぞ!」
翔琉が手の力を緩めると男はその腕を振り払うように立ち上がり、忌々しそうに睨みつけると他の男たちと連れ立って別の色エリアへと去っていった。
「ふう~、緊張した。大丈夫?」
「ありがとう。あいつらしつこくってさ」
少女は礼を言いながら翔琉が差し出した手を取って立ち上がった。
「あたしはナナ、あなたの名前は?」
「俺はカケル。怪我がなくて良かったよ」
「あなたも藍エリアに行くの?」
足元を見るとそこは隣の藍エリアだった。
「いや、俺は青エリアに…」
「おーい、いやカケル君強いんだな。驚いたよ」
そこへオットシがびっくりしたような顔をしながらやってきた。
「ともかく助かったわ。あたしは藍エリアに行くけど縁があったらまた会えるかもね。それじゃ!」
ナナはそういうと笑顔で翔琉に手を振り、ゲートへと向かっていった。
「なんだったんだ?一体?」
「さあ?」
ナナを見送りながら翔琉とオットシは顔を見合わせた。
翔琉とオットシが向かったのは出国ゲート内にあるホームセンターだった。
九頭竜異港は成田空港を遥かに超える規模の複合施設でホテルからレストラン、病院
、映画館、果ては温泉に至るあらゆる設備が揃っている。
中でも特に出色なのがホームセンターで、九頭竜異港のホームセンターは日本一の規模だと言われていた。
「出国ゲート前に買ってもいいんだけどゲート内だと免税で買えるからお得なんだよ」
オットシがでかいカートを押しながら説明してきた。
「まずは要らないものを売っぱらうかコインロッカーに預けておこう。日没までに帰ることを考えたらテントや寝袋の類は必要ないからね」
「…はい」
余計な装備ばかり持ってきた翔琉は恥ずかしそうに頷いた。
何を持っていったらいいかわからなかったからとりあえず家にあったキャンプ道具を全部持ってきてしまったのだ。
幸い異港にはそういう人が多いらしく中古屋も出店していて買取を行っている。
翔琉の持っていた要らない装備は総額5000円ほどで売ることができた。
「じゃあまずはマーカー石の確保からだな。売り切れる前に買ってしまわないと」
マーカー石は一個一万円だった。
「やっぱり買った方が良いんですか?オットシさんも持ってるんですよね?」
「駄目駄目、これは絶対に買っておいた方がいい。はぐれる場合もあるんだから、必ず持っておかないと」
「…わかりました」
昨日の稼ぎと合わせて6万円の中から1万円を使って翔琉はマーカー石を買った。
ちなみに異港内の支払いは全てダンジョンナビについている決済機能で行うことができる。
「次は武器と装備品だな。低階層で特に目的はない、となると汎用的な装備が良いか…」
オットシは嬉しそうに言いながら籠の中にドサドサと色んな道具を入れていく。
バカでかい鞘付きの山刀、皮手袋、マスク、ゴム手袋、水、ジャングルハット、携帯食料…みるみるうちに籠がいっぱいになっていく。
「ちょちょちょ、こんなに買うんですか!?」
「何を言ってるんだ、これでも最低限の装備でお買い得品ばかり選んでるんだぞ」
オットシは呆れたように言うと籠から山刀を取り出した。
使った痕跡のある山刀で、刀身に不気味な染みが残っている。
「特に武器は必須だ。こいつは中古品だから安いし買取保証も付いてるから帰ってきたら価格の9割で買い取ってもらえるんだ」
「だ、大丈夫なんですか?」
翔琉は恐る恐るその山刀を受け取った。
使い古されてはいるけど刃こぼれは全くない。
「研いだ後で再出品されているから切れ味に問題はないよ。さあまだまだ行くぞ」
結局更に買い物は続き、総額は3万円となってしまった。
これで翔琉の残金は2万5000円しかない。
「なあに、その位すぐに返せるって!今日はちょっと奥まで行ってみるつもりだからね!」
オットシが翔琉の背中を威勢よく叩いた。
「ほ、本当に大丈夫なんですか…?」
買い物を済ませた二人は青エリアの待機列へと向かった。
怒鳴り声が聞こえてきたのは待機列の最後尾についた時だった。
「だから何度も言ってるでしょ!あんたたちと行く気なんかないっての!」
若い女性の声だ。
何事かと首を伸ばして見ると隣の藍エリアで一人の女性と男たちが言い争っていた。
女性の方は翔琉と同じ位の年齢だろう、長い髪をポニーテールにして作業用のジャケットとカーゴパンツ、ブーツといういで立ちにカンバス生地のケープのようなものを羽織っている。
いかにもダンジョン探索に慣れている、といったいでたちだ。
男たちの方も動きやすい恰好でダンジョン探索の経験がありそうな感じだ。
「そうつれねえこと言うなよ。俺たちと組んだらそっちにもメリットはあるんだぜ」
「そうそう、儲けは山分けなんだから悪い話じゃねえだろ」
「それに俺たちの中じゃあんたは紅一点だ。悪いようにはしねえぜ?」
女の言葉を気にする様子もなく男たちはへらへらと笑いながらその女性の肩に手をかけた。
「あれはスカウトだな。ダンジョンに入る前にチームを組むというのはよくある話なんだ。おそらくあのお嬢ちゃんが何か特殊なジョブかスキルを持っているんだろうな。時々ああいう風に強引に引き入れようとして揉め事を起こす奴が出てくるんだよ」
オットシがひそひそ声で説明してきた。
「しつこいっての!誰か別の人をあたったら?あんたらみたいなのについてく奴がいるとも思えないけどね!」
その女性は肩にかけられた手を荒々しく振り払うと話にならないというように踵を返した。
「てめっ…!」
男の内の一人が形相を変えて背後からその女性を突き飛ばした。
「なにすんのさっ!」
突き飛ばされて床に崩れ落ちた女性がそれでも怯むことなく男たちを睨みつける。
「なにじゃねえよ。こっちが頼んでるからって調子に乗りやがって」
男がその胸ぐらをつかもうとした時、翔琉がその腕を掴んだ。
「なんだてめえは?こいつの知り合いか?」
「いえ、そういう訳じゃないんですけど、暴力はいけないかなって…」
「関係ねえならすっこんでろ!」
男が翔琉の胸倉を掴む。
翔琉はその手首を極めると男の肘を引き寄せながら前へと体重をかけた。
「あだだだだだっ!」
肘と手首を極められた男が膝をついて苦悶の表情を浮かべる。
「てめえっ!」
一緒にいた男たちが色めき立った。
「そこっ!何をしているんだ!」
武装した異港警備隊が来たのはその時だった。
「ちっ!なんでもねえよ。おい、いくぞ!」
翔琉が手の力を緩めると男はその腕を振り払うように立ち上がり、忌々しそうに睨みつけると他の男たちと連れ立って別の色エリアへと去っていった。
「ふう~、緊張した。大丈夫?」
「ありがとう。あいつらしつこくってさ」
少女は礼を言いながら翔琉が差し出した手を取って立ち上がった。
「あたしはナナ、あなたの名前は?」
「俺はカケル。怪我がなくて良かったよ」
「あなたも藍エリアに行くの?」
足元を見るとそこは隣の藍エリアだった。
「いや、俺は青エリアに…」
「おーい、いやカケル君強いんだな。驚いたよ」
そこへオットシがびっくりしたような顔をしながらやってきた。
「ともかく助かったわ。あたしは藍エリアに行くけど縁があったらまた会えるかもね。それじゃ!」
ナナはそういうと笑顔で翔琉に手を振り、ゲートへと向かっていった。
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「さあ?」
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