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第1章:チュートリアル
11.ダンジョン第2階層藍エリア - 4 -
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「ええ~っ!翔琉って23歳だったの?あたしよりも2歳も上じゃん!」
ダンジョンの中にナナの声がこだまする。
「ごめんね、年相応に見えなくて」
翔琉はそう言って苦笑を返した。
「いや、そうじゃなくて…今までタメ口聞いてたこっちが申し訳ないと思って」
「いやそれは別にいいよ。コンビを組むんならそっちの方が良いというのは俺も思うし」
「そう?じゃあこれからもそうするけど…カケルさんって呼んだ方が良い?」
「止めてくれ。なんか背中がムズムズしそうだ」
二人はそんな会話を交わしながらダンジョンをズンズン進んでいた。
「…それにしても、カケルってここに来るの初めてなんだよね?その割に全然迷いがないように見えるんだけど…」
「うん、なんか地図を見たらどう行けばいいのか頭の中に入ってくるんだ。これも運び屋のスキルなのかな」
それは不思議な感覚だった。
初めて通る道なのに次にどこを曲がればいいのか、どう進んだらいいのかはっきりとわかる。
まるで事前にネットの地図で完全に周囲を記憶してからその場所に行ったような、既視感にも近い感覚だ。
「へえ~便利なスキルね。あたしも欲しいくらい。あたしって方向音痴だから迷いやすくって…それはそうと、ちょっと早すぎない?」
後ろから追いかけ来たナナの声に振り返るといつの間にか数メートル引き離していた。
「前も思ったけどカケルって足が滅茶苦茶早くない?全然追いつけないんだけど」
「いや、別にそんなことないというか普通に歩いてるだけなんだけど…これもスキルなのかな?」
「ぜ、絶対にそうだと思う。あたし高校まで陸上やってたから足には結構自信あるのに…」
追いついてきたナナが肩で息をしながら腰を落とした。
「そうは言うけど早く行きたいんだ。でないと日没の時間になっちゃうし」
「わ、わかってるって。でもちょっと休ませて…」
ナナの額には玉のような汗が浮かんでいる。
「しょうがないなあ。ほら」
そう言うと翔琉はナナの前にしゃがみこんで背中を向けた。
「な、なに?」
「何って、おぶさってくれよ。そしたら移動しながら休めるだろ?」
「はあっ?い、いきなり何を言ってるのよ!そんなこと急に言われても」
「…そんなこと言ってる場合じゃないだろ。ほらさっさと乗った」
躊躇うナナを見て業を煮やした翔琉は強引にナナを掴むと背中に乗せた。
「ちょ、ちょっと、どこ触ってんのよ!」
「しょうがないだろ!それよりもしっかり掴まっててくれよ。飛ばすから!」
言うなり翔琉は走り出した。
視界の景色が急速に後ろへと流れていく。
「ぎぃやあああああああっ!!!!!」
ナナの絶叫がドップラー効果を起こしなが後方へ消えていく。
「ストップ!ストップ!ストォォォォォップ!死んじゃう!死んじゃうから!」
「大丈夫だって!しっかり掴まっててくれ!」
「ひいいいいいいいっ!」
ナナを背負いながら翔琉は猛烈な速度でダンジョン内を走り抜けていった。
全く減速することなく曲がり角に突っ込み、壁を走りながらコーナーを抜けていく。
(凄い!本当にこれが自分の身体なのか?)
走りながら翔琉自身も驚いていた。
(運び屋なんだから当然だっつーの。なんせ運ぶのが仕事なんだからな)
再び翔琉の内側から声が聞こえてきた。
(…お前、あの時の天使みたいな奴なのか?)
翔琉は内なる声に話しかけてみた。
(あ、やっぱりばれてた?)
すると返事が返ってきた。
薄々わかっていたことだった。
この身体の異変はどう考えてもあれがきっかけとしか思えない。
(じゃあこの運び屋というジョブも…?)
(そういうこと。俺があんたに憑依したからだな)
(ふざけんな!今すぐ出ていけ!…と言いたいところだけど無理なんだろうな)
翔琉はため息をついた。
(よくわかってるじゃん。一度憑依しちまったら別れるのは難しいんだわ。俺だってこれは不本意なんだぜ?)
内なる声はそう言ってケラケラと笑った。
天使みたいな見た目だった割にはやけにざっくばらんというかガラの悪い話し方だ。
(ガラが悪くて悪かったな。それに天使みたいじゃねえ。俺様はそのものずばり天使様だっつーの。伝令天使のリングと言えばちっとは知られた名前なんだぜ?)
(マジかよ。第2階層には天使が住んでるのか)
(ふざけんな!俺様があんな最下層に住んでるわけねえだろ!落とされたんだよ!)
翔琉の言葉にリングと名乗る天使が怒りの声をあげた。
(ということはもっと上から来たのか?)
(あんたらの概念で言うと下になるかな。俺たちの世界は階層を下るほど高等になっていくんだ)
(なるほど…そういうことなのか。で、どこから来たんだ?)
(ふふん、聞いてたまげろ。999層だ)
「きゅ、999!?」
「きゃあっ!」
突然大声をあげた翔琉にナナがびっくりして叫び声をあげた。
「な、なに!?なに!?なんなの!?」
「あ、いやごめん、こっちの話」
「もう、なんなのよ。急に黙りこくったかと思ったら叫びだすし。怖いじゃない」
「ご、ごめん、ちょっと考え事をしていて」
(999層?本当にそんなところから来たのか?)
(嘘を言ってどうすんだよ。この世界…俺たちはハイエレクと呼んでるんだけど俺はそのハイエレクでも最上層の1つ下、999層に住む天使様よ)
(本当にそんなところから来たってのか?でもなんで第2階層にいたんだ?)
(…)
リングからの返事がない。
(おい、なんで急に黙り込んでるんだ?)
「ねえ」
「うわぁっ!」
突然耳元でナナの声が聞こえて翔琉は思わず飛び上がった。
「ちょっと、急に驚かないでよ。それよりも凄い勢いで走ってるけど本当にこっちで合ってるの?」
肩の上でナナが心配そうに聞いてくる。
「あ、ああ、それなら大丈夫だよ」
翔琉はそう言って足を止めた。
「ここを下っていけば第2階層。オットシさんの言っていた場所はそのすぐ近くなんだ」
そこには下に向かって伸びる洞窟がぽっかりと口を開けていた。
ダンジョンの中にナナの声がこだまする。
「ごめんね、年相応に見えなくて」
翔琉はそう言って苦笑を返した。
「いや、そうじゃなくて…今までタメ口聞いてたこっちが申し訳ないと思って」
「いやそれは別にいいよ。コンビを組むんならそっちの方が良いというのは俺も思うし」
「そう?じゃあこれからもそうするけど…カケルさんって呼んだ方が良い?」
「止めてくれ。なんか背中がムズムズしそうだ」
二人はそんな会話を交わしながらダンジョンをズンズン進んでいた。
「…それにしても、カケルってここに来るの初めてなんだよね?その割に全然迷いがないように見えるんだけど…」
「うん、なんか地図を見たらどう行けばいいのか頭の中に入ってくるんだ。これも運び屋のスキルなのかな」
それは不思議な感覚だった。
初めて通る道なのに次にどこを曲がればいいのか、どう進んだらいいのかはっきりとわかる。
まるで事前にネットの地図で完全に周囲を記憶してからその場所に行ったような、既視感にも近い感覚だ。
「へえ~便利なスキルね。あたしも欲しいくらい。あたしって方向音痴だから迷いやすくって…それはそうと、ちょっと早すぎない?」
後ろから追いかけ来たナナの声に振り返るといつの間にか数メートル引き離していた。
「前も思ったけどカケルって足が滅茶苦茶早くない?全然追いつけないんだけど」
「いや、別にそんなことないというか普通に歩いてるだけなんだけど…これもスキルなのかな?」
「ぜ、絶対にそうだと思う。あたし高校まで陸上やってたから足には結構自信あるのに…」
追いついてきたナナが肩で息をしながら腰を落とした。
「そうは言うけど早く行きたいんだ。でないと日没の時間になっちゃうし」
「わ、わかってるって。でもちょっと休ませて…」
ナナの額には玉のような汗が浮かんでいる。
「しょうがないなあ。ほら」
そう言うと翔琉はナナの前にしゃがみこんで背中を向けた。
「な、なに?」
「何って、おぶさってくれよ。そしたら移動しながら休めるだろ?」
「はあっ?い、いきなり何を言ってるのよ!そんなこと急に言われても」
「…そんなこと言ってる場合じゃないだろ。ほらさっさと乗った」
躊躇うナナを見て業を煮やした翔琉は強引にナナを掴むと背中に乗せた。
「ちょ、ちょっと、どこ触ってんのよ!」
「しょうがないだろ!それよりもしっかり掴まっててくれよ。飛ばすから!」
言うなり翔琉は走り出した。
視界の景色が急速に後ろへと流れていく。
「ぎぃやあああああああっ!!!!!」
ナナの絶叫がドップラー効果を起こしなが後方へ消えていく。
「ストップ!ストップ!ストォォォォォップ!死んじゃう!死んじゃうから!」
「大丈夫だって!しっかり掴まっててくれ!」
「ひいいいいいいいっ!」
ナナを背負いながら翔琉は猛烈な速度でダンジョン内を走り抜けていった。
全く減速することなく曲がり角に突っ込み、壁を走りながらコーナーを抜けていく。
(凄い!本当にこれが自分の身体なのか?)
走りながら翔琉自身も驚いていた。
(運び屋なんだから当然だっつーの。なんせ運ぶのが仕事なんだからな)
再び翔琉の内側から声が聞こえてきた。
(…お前、あの時の天使みたいな奴なのか?)
翔琉は内なる声に話しかけてみた。
(あ、やっぱりばれてた?)
すると返事が返ってきた。
薄々わかっていたことだった。
この身体の異変はどう考えてもあれがきっかけとしか思えない。
(じゃあこの運び屋というジョブも…?)
(そういうこと。俺があんたに憑依したからだな)
(ふざけんな!今すぐ出ていけ!…と言いたいところだけど無理なんだろうな)
翔琉はため息をついた。
(よくわかってるじゃん。一度憑依しちまったら別れるのは難しいんだわ。俺だってこれは不本意なんだぜ?)
内なる声はそう言ってケラケラと笑った。
天使みたいな見た目だった割にはやけにざっくばらんというかガラの悪い話し方だ。
(ガラが悪くて悪かったな。それに天使みたいじゃねえ。俺様はそのものずばり天使様だっつーの。伝令天使のリングと言えばちっとは知られた名前なんだぜ?)
(マジかよ。第2階層には天使が住んでるのか)
(ふざけんな!俺様があんな最下層に住んでるわけねえだろ!落とされたんだよ!)
翔琉の言葉にリングと名乗る天使が怒りの声をあげた。
(ということはもっと上から来たのか?)
(あんたらの概念で言うと下になるかな。俺たちの世界は階層を下るほど高等になっていくんだ)
(なるほど…そういうことなのか。で、どこから来たんだ?)
(ふふん、聞いてたまげろ。999層だ)
「きゅ、999!?」
「きゃあっ!」
突然大声をあげた翔琉にナナがびっくりして叫び声をあげた。
「な、なに!?なに!?なんなの!?」
「あ、いやごめん、こっちの話」
「もう、なんなのよ。急に黙りこくったかと思ったら叫びだすし。怖いじゃない」
「ご、ごめん、ちょっと考え事をしていて」
(999層?本当にそんなところから来たのか?)
(嘘を言ってどうすんだよ。この世界…俺たちはハイエレクと呼んでるんだけど俺はそのハイエレクでも最上層の1つ下、999層に住む天使様よ)
(本当にそんなところから来たってのか?でもなんで第2階層にいたんだ?)
(…)
リングからの返事がない。
(おい、なんで急に黙り込んでるんだ?)
「ねえ」
「うわぁっ!」
突然耳元でナナの声が聞こえて翔琉は思わず飛び上がった。
「ちょっと、急に驚かないでよ。それよりも凄い勢いで走ってるけど本当にこっちで合ってるの?」
肩の上でナナが心配そうに聞いてくる。
「あ、ああ、それなら大丈夫だよ」
翔琉はそう言って足を止めた。
「ここを下っていけば第2階層。オットシさんの言っていた場所はそのすぐ近くなんだ」
そこには下に向かって伸びる洞窟がぽっかりと口を開けていた。
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