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第3章:新たな冒険
46.第10階層紫エリア - ラットライダーズのアジト2 -
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「ぬ…?」
羅桐は目を覚ますと自分が拘束されていることに気付いた。
「目を覚ましたようだね」
目の前にいる美那が朗らかに呼びかけた。
「て、てめえは…?待て、その顔に見覚えがあるぞ。確か…ケイブローグの一員の、眼鏡とか言ったか…?」
「おや、私のことを知っていたのか。犯罪者にまで知られるとは私もずいぶんと有名になったものだな」
美那は愉快そうに笑みを浮かべると羅桐に向き直った。
「単刀直入に言おう。君たちラットライダーズはもう終わりだ。だから第8清水町で奪った吸熱石のありかを言うんだ」
「なんのことだ?全くわからねえな」
羅桐は縛られたまま肩をすくめた。
「とぼけても無駄だよ。この男が全てを吐いた」
そう言って美那は同じように拘束された場尻を突き出した。
「ら…羅桐さん、済まねえ。でもこいつら不思議な術を使いやがって…うっ!うぐぐぐぐ…」
場尻は突然青い顔になって呻きだした。
「既に知っていると思うが私は鑑定士だ。鑑定することで相手が何に弱いのかもわかるのだよ。例えばこの場尻君はどうも腹が弱いらしくてね。なので腹の抵抗値を少し下げてやったらすぐに教えてくれたよ」
美那はそう言うと凶悪な笑みを浮かべた。
((怖え…))
翔琉とリングの心の声がはもる。
「ふん、それがどうしたよ。知らねえもんは知らねえんだよ。だいたい奪った吸熱石なんざすぐに売っちまったよ」
しかし羅桐はそんな美那に対して不敵な笑みを浮かべた。
それでも美那は動じない。
「そんなわけはない。君たちはヤクザからも警察からも追われている身だ。そんな君たちが現金に換えてもメリットはないだろう。おそらくほとぼりが冷めて時効になるのを待って地上に上がる算段なのだろう?その時のために蓄えているはずだ」
「仮にそうだったとしててめえらに場所を教えると思うか?馬鹿が!」
羅桐はあくまでふてぶてしい態度を崩さなかった。
「おら、やってみろよ。俺を拷問にでもなんにでもかけてみやがれ。そんな度胸がてめえらにあんのかよ!」
「そんなことはしないよ」
美那はあっさりと肯定した。
「むしろする必要がないというべきかな。話は変わるが君たちはスパイクラットを飼っていたね。あれが全て雌だということを分かっているのかな?」
「ああっ?それがどうしたっていうんだよ!」
突然話の変わった美那を羅桐が怪訝な表情で睨み返した。
「スパイクラットは発情期になると雄が大挙して雌の巣穴に殺到する習性があるのだよ。そこで競争に勝った雄が番になれるという訳だね」
「…そ、それがどうしたってんだよ」
「分かりやすく言うとだね。君たちにとってここはアジトかもしれないがあのスパイクラットにとっては自分の巣穴という訳だよ。君たちには聞こえないのかね、オスのスパイクラットの大群がこちらに向かってくる足音が。まもなくここには数百匹のスパイクラットが詰めかけてくるぞ」
翔琉の耳にはその音がはっきりと聞こえていた。
怒涛のような鳴き声と足音がこちらに近づいてくる。
(なあ、本当にこの足音はそうなのか?)
(まず間違いねえな。スパイクラットは1匹1匹は大したことねえんだけど、こんだけ数がいるとちょっと厄介かもな。さっさと逃げるに限るぜ)
(マジかよ…)
翔琉はこちらを見つめるナナと灯美に頷く。
羅桐の表情が変わった。
ようやく事態を呑み込めたらしい。
「お、おい、どうすりゃいいんだよ」
その声に先ほどの威勢は微塵もない。
「おそらく30分もしないうちにここに来るだろうね。当然だが私たちに君ら全員を助けることはできない」
美那の口調は全く変わらない。
まるで世間話でもするように羅桐に語りかけている。
「だ、だったら俺たちが持ってるマーカー石を使わせてやる!それで俺たちも一緒に逃がせ!」
「何故私がそんなことをしなくちゃいけないのかね?」
懇願する羅桐に美那がにこやかに微笑みかけた。
その眼は全く笑っていない。
「てめっ…」
「まあ奪われた吸熱石に関しては君たちが全滅した後でゆっくり探すことにしよう。こちらには優秀な人材がいるからね」
美那はそう言って翔琉の肩を叩くと踵を返した。
「さあ私たちはもう行くとしよう。こんな所に長居は無用だ。さっさと町に戻って温泉に浸かろうじゃないか」
スパイクラットの足音はもはや地を震わさんばかりだ。
ギイギイという鳴き声が耳をつんざいてくる。
(おいおい、こりゃ早いところずらからねえとやべえぞ)
リングの声にも焦りの響きが混ざってきた。
「わ、分かった!奪った吸熱石の隠し場所を教える!だから俺たちも助けてくれ!この通りだ!」
遂に羅桐が折れた。
「隠し場所は9層だ。地図は俺のスマホの中に入ってる」
美那は羅桐のスマホをすばやく確認すると満足そうに頷いた。
「そうこなくてはな。カケル君、捉えた連中を全員ここに集めてくれるかな?」
「は、はい!」
翔琉が言われるままにラットライダーズを部屋の中に集めると美那はラットライダーズから奪ったマーカー石を取り出した。
「それでは退散するとしようか。まずは君たちが奪った吸熱石の確認と行こうじゃないか」
「クソ…」
羅桐が観念したように首を垂れる。
アジトの入り口からスパイクラットの群れが押し寄せてきたのと翔琉たちが消えたのはほぼ同時だった。
羅桐は目を覚ますと自分が拘束されていることに気付いた。
「目を覚ましたようだね」
目の前にいる美那が朗らかに呼びかけた。
「て、てめえは…?待て、その顔に見覚えがあるぞ。確か…ケイブローグの一員の、眼鏡とか言ったか…?」
「おや、私のことを知っていたのか。犯罪者にまで知られるとは私もずいぶんと有名になったものだな」
美那は愉快そうに笑みを浮かべると羅桐に向き直った。
「単刀直入に言おう。君たちラットライダーズはもう終わりだ。だから第8清水町で奪った吸熱石のありかを言うんだ」
「なんのことだ?全くわからねえな」
羅桐は縛られたまま肩をすくめた。
「とぼけても無駄だよ。この男が全てを吐いた」
そう言って美那は同じように拘束された場尻を突き出した。
「ら…羅桐さん、済まねえ。でもこいつら不思議な術を使いやがって…うっ!うぐぐぐぐ…」
場尻は突然青い顔になって呻きだした。
「既に知っていると思うが私は鑑定士だ。鑑定することで相手が何に弱いのかもわかるのだよ。例えばこの場尻君はどうも腹が弱いらしくてね。なので腹の抵抗値を少し下げてやったらすぐに教えてくれたよ」
美那はそう言うと凶悪な笑みを浮かべた。
((怖え…))
翔琉とリングの心の声がはもる。
「ふん、それがどうしたよ。知らねえもんは知らねえんだよ。だいたい奪った吸熱石なんざすぐに売っちまったよ」
しかし羅桐はそんな美那に対して不敵な笑みを浮かべた。
それでも美那は動じない。
「そんなわけはない。君たちはヤクザからも警察からも追われている身だ。そんな君たちが現金に換えてもメリットはないだろう。おそらくほとぼりが冷めて時効になるのを待って地上に上がる算段なのだろう?その時のために蓄えているはずだ」
「仮にそうだったとしててめえらに場所を教えると思うか?馬鹿が!」
羅桐はあくまでふてぶてしい態度を崩さなかった。
「おら、やってみろよ。俺を拷問にでもなんにでもかけてみやがれ。そんな度胸がてめえらにあんのかよ!」
「そんなことはしないよ」
美那はあっさりと肯定した。
「むしろする必要がないというべきかな。話は変わるが君たちはスパイクラットを飼っていたね。あれが全て雌だということを分かっているのかな?」
「ああっ?それがどうしたっていうんだよ!」
突然話の変わった美那を羅桐が怪訝な表情で睨み返した。
「スパイクラットは発情期になると雄が大挙して雌の巣穴に殺到する習性があるのだよ。そこで競争に勝った雄が番になれるという訳だね」
「…そ、それがどうしたってんだよ」
「分かりやすく言うとだね。君たちにとってここはアジトかもしれないがあのスパイクラットにとっては自分の巣穴という訳だよ。君たちには聞こえないのかね、オスのスパイクラットの大群がこちらに向かってくる足音が。まもなくここには数百匹のスパイクラットが詰めかけてくるぞ」
翔琉の耳にはその音がはっきりと聞こえていた。
怒涛のような鳴き声と足音がこちらに近づいてくる。
(なあ、本当にこの足音はそうなのか?)
(まず間違いねえな。スパイクラットは1匹1匹は大したことねえんだけど、こんだけ数がいるとちょっと厄介かもな。さっさと逃げるに限るぜ)
(マジかよ…)
翔琉はこちらを見つめるナナと灯美に頷く。
羅桐の表情が変わった。
ようやく事態を呑み込めたらしい。
「お、おい、どうすりゃいいんだよ」
その声に先ほどの威勢は微塵もない。
「おそらく30分もしないうちにここに来るだろうね。当然だが私たちに君ら全員を助けることはできない」
美那の口調は全く変わらない。
まるで世間話でもするように羅桐に語りかけている。
「だ、だったら俺たちが持ってるマーカー石を使わせてやる!それで俺たちも一緒に逃がせ!」
「何故私がそんなことをしなくちゃいけないのかね?」
懇願する羅桐に美那がにこやかに微笑みかけた。
その眼は全く笑っていない。
「てめっ…」
「まあ奪われた吸熱石に関しては君たちが全滅した後でゆっくり探すことにしよう。こちらには優秀な人材がいるからね」
美那はそう言って翔琉の肩を叩くと踵を返した。
「さあ私たちはもう行くとしよう。こんな所に長居は無用だ。さっさと町に戻って温泉に浸かろうじゃないか」
スパイクラットの足音はもはや地を震わさんばかりだ。
ギイギイという鳴き声が耳をつんざいてくる。
(おいおい、こりゃ早いところずらからねえとやべえぞ)
リングの声にも焦りの響きが混ざってきた。
「わ、分かった!奪った吸熱石の隠し場所を教える!だから俺たちも助けてくれ!この通りだ!」
遂に羅桐が折れた。
「隠し場所は9層だ。地図は俺のスマホの中に入ってる」
美那は羅桐のスマホをすばやく確認すると満足そうに頷いた。
「そうこなくてはな。カケル君、捉えた連中を全員ここに集めてくれるかな?」
「は、はい!」
翔琉が言われるままにラットライダーズを部屋の中に集めると美那はラットライダーズから奪ったマーカー石を取り出した。
「それでは退散するとしようか。まずは君たちが奪った吸熱石の確認と行こうじゃないか」
「クソ…」
羅桐が観念したように首を垂れる。
アジトの入り口からスパイクラットの群れが押し寄せてきたのと翔琉たちが消えたのはほぼ同時だった。
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