年下セレブのわがまま事情

ブリリアント・ちむすぶ

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最悪の目覚め

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「そ、その……、ガ、ガランは、何をしていますか?」
「祭司様ですか?」

 緊張しながらきいたレンに対し、女性は特に緊張感を感じさせない様子で答える。

「祭司様はいま、信者の方々と会合に出ておられます」
「会合……」
「はい。もうすぐでお戻りになられる頃かと」

 その言葉にレンは安心したように息を吐いた。
 どうやらガランは無事なようだ。良かった。とりあえずは安心だ。

「そ、そうですか。なら、戻ってきたらでいいです。彼と話がしたくて。それは出来ますか?」
「かしこまりました。伝えておきますね」
「ありがとうございます」
 
 女性はガランと話したい、というレンの言葉を特に疑問を抱いてなさそうな様子で頷いた。
 ある程度の自由は認める、というわけだろうか。
 ならば、とレンは話題を替えた。

「体が落ち着いたら、外にも出たいのですが」
「それはできません」

 きっぱりとした女性の言葉にレンは声を詰まらせる。
 女性の穏やかな雰囲気はそのままだ。だが、その否定の言葉は強い意志が感じられた。

「え……」
「儀式が終わるまで、神子様の外出は禁じられています」
「ぎ、儀式って……」

 終わるまでって、まさか、あんなことをまたやるというのか。
 レンは鳥頭の女性の言葉に動揺を隠せない。

「神子様、これは神子様を守るためのものでもあるのです。分かってください」

 女性の説得するような言葉にレンは黙り込む。
 そんなレンを見て女性は何か勘違いをしたような雰囲気でレンに頷くように言う。

「大丈夫です。神子様の頑張りは私たち泉の子に届いてますから」
「泉の子……」

 それが宗教名ということだろうか。
 本当に訳が分からない。
 だが、女性に言ったところで場が好転するとも思えない。
 そもそも、レンの体は本調子ではない。こんな状態で外に出たいといって変に不興を買ったら困るのはレン自身だ。
 とにかく、今は受け入れた振りをするしかない。

「……わかりました。ですが、ガランには会いたいので、早く伝えてください」
「かしこまりました」

 女性は穏やかな顔のまま頷き、部屋を出ていく。
 扉の向こうで鍵をかける音がした。女性が持っていた鍵でレンの今いる部屋を閉めた

「……ッ」

 レンは歯噛みする。
 全く、自分はなんて所に来てしまったのだ。
 まさか軟禁されるとは。
 レンは苛立ちながらベッドのシーツを握りしめる。

「……クソッ」

 落ち着け。今やることはガランと話すこと。それだけだ。
 とにかく今はガランに会わねば。きっと、ガランはレンにあってくれるだろう。
 それで、説得をしなければ。
レンは自分にそう言い聞かせながらベッドに横になる。
 少し起きただけでも全力疾走したかのような体は疲れていた。
 未だ痛む体を感じながら、レンは少し休憩をしようと目を閉じた。
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