陛下を捨てた理由

甘糖むい

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「本日の会議を致しましょう」

ジェニエルの凛とした涼やかな声が場を切り上げると、彼らは素直に従った。
今日の議題は、各国の王族を招いた大規模なパーティーについてだった。
毎年行われるパーティーであるが故にスムーズに進んでいく会議の内容に耳を傾けながらジェニエルは本題でもある今年の催し物について意見を求められた。

「王妃殿下におかれては、どのようなお考えをお持ちですかな?」
「無論、国の威信をかけての催しでございます。失敗は許されません」

口々に言い募る貴族たちの言葉には、王に捨てられそうなジェニエルには答えられないだろうという明らかな悪意が滲んでいた。

「今までとは趣向を変えて各国の文化を尊重し、各国の伝統舞踏演奏し参加者でダンスをするのはいかがでしょう」

ジェニエルの提案に会議室にざわめきが走った。
これまで同様に自国の良さを伝えるための演劇や伝統芸能をと考えていたのだろう。

「各国のダンスなど、覚えきれるものではない!」
「この短期間で無理だ、無謀すぎる」

と各所から湧き起こる騒ぎは中々収まりそうもなかった。

「ならば……」

時間が経てば立つほど大きくなる会議室に低く響く声があった。
その瞬間、全員がジェニエルの隣に座るゼツィオードに視線を向けた。
これまでなら会議中に何か意見をいう事もないゼツィオードが椅子から立ち上がると、全員に見えるように静かに膝をつき床に指で線を描き始めた。

「こうして、足の運びを簡略化し、参加国の掲げる色で床に模様として描けばいい。無理に覚える必要もなければ特別な才能などいらないのではないでしょうか」

そういったゼツィオードの指は驚くほど正確に自国のダンスのステップを描いていく。
誰もがゼツィオードの行動に呆然としていて、それはジェニエルも例外ではなかった。

ジェニエルはわずかに笑った。
セオドールとは違うジェニエルの意見を尊重してくれる頼もしい味方の存在に、背筋が伸びる思いがした。
そっとゼツィオードに視線を贈ると、丁度一通り書き終えたゼツィオードがジェニエルを見て小さく笑みを浮かべた。
まるで悪戯が成功したようなその笑みは、貴族達に泡を喰わせたことを楽しんでいるようだった。
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