(番外編)あら...私、何か悪いこといたしました?

神谷 絵馬

文字の大きさ
26 / 35
お兄様の結婚式

21[お祖父様side+回想]

しおりを挟む
「...先々代の王弟は婚姻を結ばれているのだから、当時はもう王族では無い筈では?」

「先々代の王は、歳の離れた弟を殊更に可愛がっていたらしいからの...王族という括りに入れたままにしていたんだよ。
ほれ、準王族っていう...王女はおるが、王子が1人しか生まれずその者が王となった場合に、王子が産まれるかは神のみぞ知ること...誰にも分からないだろう?
王に王子が生まれなかった場合に、姉か妹となる王女の産んだ男の子を養子とするために、姉か妹となる王女が嫁ぐ際に準王族として留め置く措置を利用したのだ。
その時には、今の王とその弟が産まれていた筈なのだがな?」

「先々代の王を嫌っておられたのは、そういう背景があったのですね...誤解しておりました。」

「よいよい、一番悪いのは、先々代の王弟だからの。」

「話しの腰をおってしまいました。
済みません...続きをお願いします。」

「構わぬよ。
では、続きを話そうかの。」

ほう、目付きが変わったな...。
あれだけこちらに嫌悪を見せていたというに...のう?
まぁ良い、続けようかの?


──────────


「国王陛下に手紙を出そうと思うのだが、これは原本として残しておきたいと考えている。
...模写を頼めるか??」

「はい!喜んで!!」

「どうにも悪筆でな...難しいだろうが頼む。」

「はい!喜んで!!
あぁ、これは酷いですねぇ...。
忠実に模写をするために、少々粗悪な紙を用いますがよろしいですか?」

「あぁ、構わん。
その文字を忠実に模写してくれるのならば。」

「はい!喜んで!!
少々お時間いただきますが、少々お待ちくださいませね!!」

何故だか威勢の良い返事に圧倒されてしまった...。
ぴょんぴょんと跳ねる寝癖はそのままに、前髪だけを紐で括ったらしく噴水のように立っているのは面白い。
それも、きちんとした格好をすれば美少女のように可愛らしい顔立ちで、これで四十路を超えた男だなどと誰が思い至るのだろうか?
あの屑の手紙を興味津々と見つめて頬を薔薇色に染める様は、恋する乙女のように可憐だ。
この容姿で、女装も気にせず甘味が食べられるのならと着せ替え人形にもなってくれるなんて、シオンのお気に入りになるわけだな。
女装させてシオンと2人並べれば、可愛らしい姉妹に見えることだろう。
うむ、シオンに頼まれたということもあるが、雇って正解だったかもしれないな。

「?どうかなさいましたか?」

「いや、随分と楽しそうだなと思ってな。」

「あぁ、文字を書くことが好きなので、代筆や本の模写をしていたのですが...依頼してきた貴族に、愛人となれと命じられることが多かったんです。
でも、ここではそんなことないでしょう?
ほら、皆僕のことをちゃんと男として扱ってくれるので...嬉しいですし楽しいです。」

「そうか...それならば良い。
ただ、もう少し身だしなみには気をつけなさい。」

「シオン嬢は、こんなにもお優しい旦那と結婚できて幸せ者ですね。
いつも、惚気てたんですよ?
『早くあの人に会いたいわ!』
って。
僕もおこぼれに預かりまして、今は幸せです。」

「ハハハ、こうして話していても模写とは出来るものなのだな。」

「うーん、癖を見抜ければまぁ簡単ですかね?
この文字を書いた人は、どうにも見栄っ張りな人のようで...癖を模倣するのがとても簡単です。」

「そうか...。」

「はい!出来上がりました!!
署名に関しては、少し変えております。
この書面が偽造したものとならないように、これは模写であって原本は他にあることと、模写した僕の名前も書いてありますが、他は完璧ですよ!!」

「うん、完璧だな。
念の為、手紙にもこれは模写だと明記しておこう。
ありがとう。」

「ウヘヘ...。」

報酬は、頭を撫でただけで本当に良いのだろうか?
恍惚とした表情で、モフモフとしたウサギを抱きながら堪能しているらしい様はとても可愛らしいのだが、少し不憫にも感じてしまう。
まぁ、衣食住は面倒見ているから良いのか?
今度、シオンと共に買い物に連れていって、何か欲しいと言ったものを買って贈るとするか......。
ペットのウサギの洋服とかも良いかな?





*
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...