奇跡のクインティプルアクセル ～ ５回転半ジャンプ ～

【第１部】～ 再起をかけた５回転半ジャンプ ～

4年前の衝撃的な出来事

　そして、それからも氷河琴音は辛いリハビリを延々と続けていた。
　それを全力で支え続ける大空優。
　しかし、やはり思うような成果が出ず、自分を追い詰めるように悩み続ける優と琴音…

（きっと、このままじゃ駄目なんだ…　何か奇跡を起こすような打開策を考えないと…）

　そんなある日、悩み続ける優はある画期的なアイデアを考案する。
　それは、今のリハビリプログラムに『太極拳』の要素を取り入れることだった。

　アグレッシブで負けず嫌いな性格の琴音は、リハビリ治療もやはり『ハードで動的』に取り組んでいた。
　それを全く正反対の『ソフトで静的』という要素である『太極拳』の動きを取り入れれば、
　リハビリ成果も少しは違ってくるのではないか？　というアイデアだったのだ。

　しかし、この療法が見事に的中し、琴音の右足は日増しに回復してゆく。
　更にリハビリメニューを一つ一つ乗り越えることで、琴音は優に対し、徐々に心を開いていき、
　笑顔さえ見せるようになっていった。

　そしてある日、リハビリを終えた夜のトレーニングルームで、琴音は優にあることを話し出す…

「あの日もこんな雲一つない、満天の星空が輝く真冬の夜だった…

　４年前のあの大事な日の前日…
　その日、私はオリンピック出場資格を兼ねた、あの大事な国内戦を翌日に控えていた…
　でもその夜、私は心臓が高鳴ってしまって、なかなか眠りに入れなかったの。
　それでも連日の猛練習の疲れもあって、私は知らない間に深い眠りについていたわ…

　それから、どれくらいの時間が経っていたのだろう…
　その時、私はとても怖い夢を見ていた気がする。
　その深い眠りの中で、何か得体の知れない胸騒ぎを覚えた私はふと目を覚ましたの。

　『な、何これっ！？』

　その時、私は何か様子がおかしいと直感し、すぐに薄暗い自分の部屋の照明を点けたの。 そしたら…

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく・・・