あの人と。

Haru.

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本編

138 メインはそれじゃない

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「ユキ、ユキ、もうすぐ昼だ」

「ん"……」

 喉いったい! 腰というか下半身も痛い……!

 そっと眼を開けてみると、ダグがグラスを持っているのが見えたのでグラスとダグの顔を交互に見てみる。

「ああ、今飲ませてやる」

 意図が伝わったようでくいっと飲み物を口にして、そのまま覆いかぶさってくるダグ。

 昨日……いや、今日、か。寝る間際にやってもらった口移しに味をしめた僕です。

 ちょっとずつ流し込まれるレモン水をちょっとずつ飲む。こうするとダグの魔力もレモン水に混ざって入ってくるからすごく気持ちいい。

「おは、よ……」

「ああ、おはよう。とりあえずこれを着けておけ」

 何かを首にかけられた。

 あれ、これっておじさんにもらった魔法具? 緑色は……治癒と体力増強って言ってたっけ?

「リディアがやはりそれは治癒と体力増強か込めれていると言っていた。ちょうどいいと思ってな」

 うむ、たしかに今の僕には必要だ……

 ほんの少しずつ重いのが解消されつつあるような気がする。今日はずっとかけておこう。

「さあ、リディアに着替えさせてもらったら昼にしよう」

「ん」

 ダグにほんのり冷ややかな視線を向けるリディアにぱぱっと着替えさせてもらい、髪もある程度整えてもらったらダグに抱き上げられて海へ。


「! ……っ!!」

「わかった、嬉しいのはわかったから暴れるな」

 だってまんまBBQ! しかもどうやら護衛の騎士さん達も一緒だ!!

 最低限の人員は配置させて、その他を集めたらしい。今配置させてる人達もあとで焼き直して食べさせたり、ここにいる人達が持って行ったりするらしい。

「ユキ様は賑やかな方がお好きかと思いまして。せっかくですので今日は私もご一緒させていただきます」

 思わずブンブンと首を縦に思いっきり振ってしまうのも仕方ないと思う! 夢みたいだよ、リディアともご飯食べれるなんて! あっ、ラギアスもいる!!

 本当に夢みたいだ!!


 BBQが始まれば炭火で焼いたお肉や海鮮のいい匂いが漂い出した。炭火焼きって美味しいよね。安くて硬いお肉でも美味しくなるの不思議。

「ほら、貝だぞ」

「ん~!」

 左腕で僕を抱きかかえつつ右手で色々と食べさせてくれるのに甘えて、僕はまだお箸を持ってない。

 炭火焼きで美味しい! ダグに食べさせてもらえて美味しい! わいわい食べれて美味しい! まさに美味しいづくめ!!

 ちなみに僕の分はリディアとラギアスが焼いてくれてます。ダグは手が塞がってるからねぇ。

「美味いか?」

「うん!」

「ユキ様、まだまだ山のようにありますから沢山召し上がってくださいね」

「うん! う、ん……?!」

 リディアが指した方を見てみたら本当に山があった。山のように盛られたお肉にいろんな海産物の山。いくつもの山がドドンッと置かれている。もはや山脈って感じになってる。

 騎士さん達がそんな山を崩しては焼いて食べ……を繰り返している。まだまだあるからなかなか減ってないけど。

「まだお屋敷の中にもございますからご安心くださいね」

 まだあるの?!! 僕あんなに食べれないよ?!

「騎士はかなり食うからな」

 なるほど……ダグも僕の4倍は食べるもんねぇ……

「ほら、ユキも食べろ。肉も美味いぞ」

「ん!」

 はぅ……炭の香りととろけるお肉の旨味……上品な甘さの脂がしつこくなくて……

 美味しい……

「ダグ、お肉」

 お肉がとろけてすぐになくなっちゃったからペシペシとダグの胸を叩いて催促する。もっと食べたいのです。

「俺は肉じゃないがな」

 そう言いながらまた食べ頃のお肉を口に運んでくれるダグ。

 おいしー!!

「ふふ、気に入られたようですね。ご飯も食べられますか?」

 ご飯。食べたいけどBBQでご飯といえば……!

「お味噌かお醤油ある?!」

 この世界、びっくりすることにお味噌もお醤油もある。ただ、結構貴重だったりするからここでも用意してるかはまた別。あるといいんだけど……

「お醤油ならございますが……」

 素晴らしい!

「ご飯とお醤油ちょうだい! あと器にお水がほしい!」

「はぁ……かしこまりました、お持ちします」

 僕が何をするのか全く見当がついていないのだろう。リディアは不思議そうにしながら僕の言ったものを全部用意してくれた。

 えーと、まずは……手を浄化、っと……お水で手を濡らして……さぁ、ご飯を握りましょう!!

 崩れないように固めに握った三角のおにぎりをいくつか作り、網のあいているところでまずは少し焼いてもらう。少し焼き目がついたら、醤油を少し塗ってまた焼く。一気にお醤油をかけすぎるとご飯が崩れるから慎重に!

 何回かお醤油を塗りつつ両面こんがり焼いたら(僕じゃなくてリディアが焼いたけど)……

「焼きおにぎりの完成!」

 そう、焼きおにぎりです! BBQといったら焼きおにぎりじゃない? 僕は焼きおにぎり毎回食べるよ!

「美味そうだな。食べていいのか?」

「うん!」

 いくつかあるしみんなで食べましょう! なんならもっと握ったっていいし!

 ダグに一口分口に運んでもらい、その後にダグも豪快にかぶりついた。

 これだぁ……お味噌があればお醤油と混ぜても美味しかったんだけど、お醤油だけでも十分美味しい!

「! 美味いな。こんな食べ方があるんだな」

「本当に香ばしくて美味しいですねぇ。もっと作りましょうか」

 そう言ってリディアは追加のご飯を出してせっせと握りだした。そんなに気に入ったの? ってくらいのご飯を出してるよ。まぁ食べきれなかったら魔法収納に入れとけばいいんだけども。

 そういえばラギアスは……と思って見てみたら、ものすごい気に入ったようだ。食べきってしまったのか何も乗っていないお皿を少しシュン、とした感じで見たと思えばリディアがまた作りだしているのに気づき、その手元をじっと見つめている。微妙に揺れてる尻尾をみたらどれだけ楽しみにしてるかわかるよ。

「おにぎり食べ過ぎたらお肉食べれなくなるよ?」

「大丈夫だ。まだまだ食える」

 そう? それならいいんだけど……焼きおにぎりにつられてメインのお肉や海産物食べれなくなるとかやめてね。

「ゆ、ユキ様、我々も真似をしてもよろしいでしょうか」

「へ? いいですよ?」

「ありがとうございます!」

 近くで見ていた騎士さんが恐る恐ると言った様子で聞いてきたけど、焼きおにぎりくらい別に聞かなくてもいいのにね?

 騎士さん達もいろんなところでおにぎりを作って焼きだした。……本当にお肉とか食べれなくならない?? え? むしろおにぎりを食べてやっと丁度いいくらい? そりゃすごい……

「ん、貝が焼けたな。ほら、ユキ」

「ん!」

 ん~、コリッコリ! あ、貝にもお醤油たらしたらよかった! 次のやつにはそうしてもらおう……


 その後もわいわいとBBQを楽しんだのでした!


「焼きおにぎり、うまかったな」

「ええ、本当に」

 お肉は?! 海鮮は?!!
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