あの人と。

Haru.

文字の大きさ
143 / 396
本編

139 開発された……

しおりを挟む
 お腹いっぱい食べてご満悦な僕はお屋敷の中でダグにゴロゴロと甘えて旅行2日目の昼間をつぶしていた。

「おやユキ様、随分と顔色が良くなられましたね」

「僕顔色悪かったの?」

 それは知らなかった。

「少しですが。疲れが取れていないのだろうと思っておりましたが、今のご様子なら大丈夫そうですね」

「……多分、これだろうなぁ。じわじわと疲れとか取ってくれてる感じする」

 おじさんにもらった緑色のペンダント。これ本当にすごいよ。あんなに重だるかった身体もだいぶ軽くなったし、下半身の痛みも今は違和感くらいになってる。

「そんなに効きの良い物だったのか。これは10万ギルどころではないかもしれないな」

 え?!

「私としてはそのような素晴らしい魔法具を作れる方ならお城に引き抜きたいくらいです」

 ええ?!

「り、リディア。おじさんが行きたいって言うなら良いとは思うけど、無理には連れて行ったりしないでね」

 それだとただの拉致になるからね!

「もちろんですよ。それに私の独断では決められることではございませんからね」

「ならいいけど……でも、これみたいによく効く魔法具ってなかなかないの?」

「そうだな。まず直接所有者に治癒だとか解毒だとかを掛ける効果のある魔法具を作ること自体難しいんだが……着けていて自覚できるほど効果があるものを作れる人間は限られている。出回っている大抵のものは気休め程度の効果しかない」

 そんな気休め程度のものでも需要が高い上、それでも作れる人が限られているからこそ値段も高いんだとか。僕がもらったもののようにはっきり効果が感じられるものになると、30万ギルを超えることもしばしば……って、

「30万?!! それを2つも……」

 気が遠くなりそうだ……

「流石に礼をしなくては」

「そうですね。ユキ様、何か希望はございますか?」

「僕そういうのわからないから任せてもいい……? あ、でも手紙はつけたいかも……」

「かしこまりました。ではお礼の品はこちらでご用意しておきます」

「う、うん。お願い……」

 まじまじと緑のペンダントを見てしまう。これが30万……失くさないようにしないと……!

「だが、良い物をもらえたな。今のユキには特に、な」

 ニヤリと笑ったダグにボッと顔が赤くなる。

「だ、ダグのせいだもん……!」

 あ、あんなに長い時間……もう無理って言っても寝かせてくれなくて……

 昨日……いや、今日? は本当に凄かった……いや、いつも凄いんだけどいつも以上にダグが甘くて……それでもっては、激しく、て……無理って言っても甘く微笑んで責めてくるものだからその……と、とろとろにされた……

 それでもってその……し、幸せだった……

 うぅ、恥ずかしい……!!

「ユキ」

「へ? ……んっ、ぅ……んー!!」

 ちょっと待って待ってリディアいる……! リディアいるのにこんなキスだめだって……!

 バシバシと胸を叩いたら解放してくれた唇を庇いつつ息を整え、キッとダグを睨む。

「どうした? 嫌だったか?」

「ちが……! リディアいるから……!」

「いないぞ?」

「へ?」

 そう言われて部屋を見渡してみると、さっきまでいたはずのリディアは影も形もなかった。いつのまに出て行ったんだろう……?

「リディアがいなかったらいいな?」

「う、ん……んっ……ふ、ぁ…………」

 確かにリディアもいなくて2人きりならいいけど……!

 まだその……えっちの余韻が残っているのかもしれない。僕を蕩かせるキスはえっちを思い出させて……

 腰をぐいっと引かれた瞬間、ゾクリと甘い痺れが走った。

 や、やばいやばい!

 ま、まって、だめ、だめ……!!

「ん、んんっ……───っ、ん、ん……っ」

 全身がビクビクと震え、くたりと力が抜けた。

 あ、うそ、僕、いま────

「ユキ、イったのか?」

「あ、ぅ……うぇ……ダグの、せいだ……っ! ひっ、く」

 キスだけでイっちゃうなんて……! 僕、変になっちゃった……! こんなのはしたないって嫌われる……

「っ、泣くな。泣かなくていい。変じゃないから泣くな」

「ふぇ……うぅ、嫌わ、ない……? っく、こんな僕、やじゃ、ない……?」

「ああ、嫌わない。嫌じゃない。むしろ俺がユキをこうしたかと思うと嬉しいものだ」

 つまりはその僕を……かっ開発できて嬉しい、と……

「ダグのばか……」

「そうだな。俺は馬鹿だ。馬鹿な俺は嫌か?」

「やじゃ、ない……」

 むぅ……結局はダグのことを大好きだからなんだって許しちゃうんだよなぁ……たとえか、開発されたとしても……うぅ、僕どんどんダグに作り変えられてる……! これはもう責任とって一生一緒にいてもらわないとだね?!

「それは良かった。さぁ、着替えてきたらどうだ?」

「ん……」

 下着を汚してしまったから着替えなくちゃダメなんだけど、恥ずかしい。まぁ濡れた下着は気持ち悪いし、そのままにしておくと大変なことになるから着替えるけども……

 ダグから離れ、荷物から新しい下着を引っ張り出して着替えたはいいものの……

「汚れた方、どうしよう……」

 と、とりあえず浄化はかけて……

 浄化をかけたら……何もなかったかのように見た目は綺麗な状態になったけど、流石にこのまま洗わないのは気が引ける。洗いたい、けど洗いに出したらそれすなわちリディアに僕が真昼間にイっちゃったことがバレるというわけで……

「ユキ、着替えたか?」

「う、うん……着替えた、けど……」

「どうした? 入るぞ?」

「うん……」

 時間がかかっていることに訝しんだのだろうダグが入ってきた。そして僕の手の中にある下着を見て見当がついたような表情で、

「気にしなくていいぞ? 籠に入れておけばいい」

「だ、だってばれちゃう……」

「……今更か?」

「う……」

 そりゃ夜に汚しちゃったタオルとか下着とか全部ダグが籠に入れてるけどさぁ……今は昼間だし……

「あまり気にしては身がもたないぞ。これからもこういうことがあるかもしれないしな」

「はぁい……」

 諦めて籠に入れますよぅ……

 ってこれからもって……ある、かな……あるかもしれない……うぅ、できれば昼間にこういうのは嫌だけど!

「着替えたなら向こうでゆっくりしよう」

「……えっちなことしない?」

 僕もう下着を汚すのは嫌ですよ……

「して欲しいのか?」

 ニヤリと笑ったダグにカッと顔に熱が灯る。

「ち、違う!! ダグのばか!!」

「はは、冗談だ。しないからおいで」

「むぅ……」

 その甘い顔は卑怯だ……そんな顔で言われたら行くしかないじゃんか……

 ぽすっと少し屈んだダグの胸に顔を埋めればぐいっと抱き上げられ、またソファへ。ソファに着いたら顔や頭に何度もキスをされたり撫でられたり、お菓子を食べさせられたりしてデロッデロに甘やかされた僕はすっかり機嫌が良くなったのでした。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...