あの人と。

Haru.

文字の大きさ
168 / 396
After Story

見守る

しおりを挟む
 夜ご飯ギリギリまで温室でデートを楽しみ、さらに甘さを増してから部屋へ戻った僕とダグは現在リディアが入れてくれた食後のお茶でまったり中。僕の位置? もちろん当然のようにダグの膝の上です。

「ではこちらは先にお渡ししておきますね」

「うん、お願いね」

 とりあえず食品類のお土産は日持ちするしないに関わらず先に渡してもらっておくことにした。一言メッセージを添えてね。残りのものはお休みが終わってから持って行く予定です。

「リディアはお土産渡しに行った?」

「いえ、今夜行く予定です。今は忙しいでしょうから、渡すだけ渡してすぐに部屋へ戻ろうと思っていますが」

 今忙しい、ってことは舞踏会の後始末に奔走してるってことだからリディアの好きな人はそれなりの地位の人……それでもって結婚式に招待した人……そしてお土産を買ったということは新婚旅行の護衛メンバーではなかった、と……

 ……大分絞れるね? 1人の人物が浮かんだけれど、まだそうと決まったわけじゃないしそっとしておこう、うん。

「今はその……恋人、なの?」

「ふむ……友達以上恋人未満、といったところでしょうか。向こうから好かれている自覚はあるのですが……年齢差があるので向こうはそれを気にしているようです」

 おっとぉ……ものすごいヒントきたぞ……これもうほぼ確定したよ、うん。あの人で確定だ……

「あの人結構そういうの気にするんだねぇ……」

「おや、やはり誰だかわかりましたか?」

「ヒントがかなり散りばめられてたからねぇ。条件を絞っていったらもう1人しか該当しないよ。名前は出さないけども」

 まだ教えない、と言いながらヒントはくれるんだからリディアってやっぱり優しいよねぇ。

「ユキ様の想像している方で正解だと思います。あんなに雑破な性格をしているのに年齢差を気にするなど……まったく、遅くなればなるほど向こうはどんどん老けていくだけですのに」

「……いっそ襲っちゃえば?」

「ユキ?!」

 それまで黙って聞いていたダグがギョッとしたように僕を見てきた。

「ダグもだいたい誰かわかったでしょ? 1回関係持っちゃえば煮え切るんじゃないかなって」

 付き合ってないのに身体の関係を持つなんて不誠実? お互い好き同士なら別に身体から始まってもいいと思います! 無理矢理はダメだけど!!

「たしかにあの人ならばそうかもしれないが……ユキの口からはあまり聞きたくなかった……」

 なんかごめんね?

「襲う、ですか……なるほど、その手もありますね。このまま煮え切らないようならそうしましょう。しかし力では勝てませんから抵抗されたら成功しなさそうですね……」

「ダグ、なにかいい方法ない?」

 力で負けてても押し倒せる方法的なやつ。

「あの人の弱点なら知ってるぞ」

「ほう、なんです?」

「実はな────」

「え、そうなの?」

「それはいいことを聞きました。今度試してみましょう」

 リディアの目がキラリと光った。早速近々試すんだろうなぁ……それでリディアが幸せになってくれると嬉しい。僕的にはリディアとその人って結構お似合いだと思うんだよね。いい感じにバランス取れそうな感じ。いい報告を待とう!!


 そんなこんなでリディアの幸せを応援しつつ、次の日。プチ事件発生です。

 朝から部屋でダグと飽きもせずべったりひっついていちゃいちゃしていると、お昼過ぎに蒼兄さんと翠兄さんが現れた。

「幸仁! 遊びに来た、ぞ……」

「に、兄さん?! が、学校は……?」

 平日だから来ないと思ったのに……!

「……講義が全部休みになった」

「あ、そ、そうなんだ……えっと、座って?」

「……ああ」

 うぅ、兄さん達にいちゃいちゃしてるの見られた……! しかもがっつりキスしてるところを!! しかもちょっと服乱れてたっていう……身内にそんな場面見られるのって気まずさと恥ずかしさが尋常じゃない!

「……リディアを呼ぶか」

「そう、だね」

 リディアがいつも置いていくベルを使って呼べばリディアはすぐにやって来た。

「ユキ様、どうなさいましたか? おや、ソウ様にスイ様ではありませんか。すぐにお茶のご用意をいたします」

「ありがとうございます……」

 沈み気味で返事を返した蒼兄さんにリディアが何かを納得した様子を見せた。

「ふむ……? ああ、ソウ様とスイ様がいらっしゃった時にユキ様とダグラスがいちゃいちゃでもしていましたか? どうです、甘すぎてダメージ大きいでしょう?」

 うわぁ、当たってるー。流石リディアだね。相変わらず鋭いです。

「はい……くそ、俺等の可愛い幸仁が……!」

 あっ蒼兄さん……そのセリフは……

「ユキは俺のだ」

 ああほらもうダグが対抗心を燃やし始めたじゃないか……!

「ほぉう……? いい度胸じゃねぇか……ちょっと幸仁に好かれてるからって調子にのるなよ」

「生憎ちょっとじゃないからな。ユキは俺を愛してくれている。誰よりも俺をな」

 カァン!! 試合のゴングが鳴り響きました! 双方の間にはバチバチと火花が散っています! 勝負の行方やいかに?!!

 なんて解説が入りそうなくらいの勢いです。どうしましょう。

 うーん、放置!!


 そっとクマを連れて離れてリディアの近くに行けば椅子を用意してくれた。そこに座ってダグと兄さん2人の言い合いをBGMにゆっくりお茶を楽しみます! あ、クマはダグの代わりです。ダグと離れるのって最近じゃなかなかないから落ち着かないのでダグがくれたクマを抱きしめて過ごすのですよ。

「よろしいのですか?」

「んー、一度ぶつかっておいたら後から楽になるかなって。どっちも性格はいいから多分そのうちおさまるよ」

「なるほど、それもそうですね」

「あまりに酷くなるようなら止めるけどねぇ」

 流石に実力勝負! とか言いだしたら止めるよ。ダグは手加減してくれるだろうけども、兄さん達絶対コテンパンにされるし危ないもん。言い合いのうちは見守りましょう。


「ユキと俺は愛し合って共になることを決めた! たとえユキの兄でも口を出すことは許さん!」

「はぁー?! どうせお前がなんとなくそんな流れに持って行ったんだろ! うちの可愛い弟を食い物にしやがって! ゆきは傷つきやすい優しい子なんだよ! 野獣みてぇなお前に任せられるか!!」

 うーん、雲行き怪しい?

「ユキの弱さも強さも俺は知っている! 全て含めて俺はユキを愛しユキも俺を愛してくれた! 愛しいユキを傷付ける真似など誰がするか! 野獣だろうがなんだろうが俺はユキのためならばなんだって我慢するぞ!」

「とか言って無理矢理迫ったりしてんだろ! 幸仁との体格差考えろよ!!」

 あ、大丈夫だこれ……大丈夫だけど主に僕へのダメージが大きくなる感じのやつだ……雲行きは怪しくはないけど僕的にはちょっと嫌な展開……

「はっ、無理矢理? するわけないだろう。ユキの恐怖心がなくなるまで俺は待ったぞ。ユキが許してくれるところまでで何日も慣らしてな!」

 うぅ、間違ってないけども……! それ言うの?! 言っちゃうの?!

「ならっ……やっぱり無理させてんだろ! ゆきは優しいから我慢してるお前のために頑張っただけだ!」

「最終的にユキから誘ってくれたがな?」

「うちの幸仁はそんなことしない!」

 いえ、僕から誘いました、はい。僕から誘いましたよ……ぼ、僕だって男だから性欲くらいあるんだからね……!

「はっ、お前達こそユキを理解してないんじゃないか? お前達の理想をユキに押し付けるな」

「なっ……俺等はそんなことしてない! お前こそ自分のやりたいことばっか幸仁にさせてんだろ!」

 いや、どっちかっていうと僕が甘やかされてるから僕のしたいことばっかしてもらってるような……ダグは僕本位で動いてくれますよ……

 それにしてもこれ、終着点どこだろうなぁ……

 ちょっとぬるくなったお茶をくぴり。あ、リディアが新しく入れなおしてくれた。ありがとうね。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

王子の宝剣

円玉
BL
剣道男子の大輔はあるとき異世界に召喚されたものの、彼がそこに召喚されたこと自体が手違いだった。 異世界人達が召喚したかったのはそもそもヒトでは無かった。 「自分なんかが出てきちゃってすんません」と思って居たが、召喚の儀式の中心人物だったエレオノール王子は逆に彼を巻き込んでしまったことに責任を感じて・・・ 1話目の最初の方、表現はザックリ目ですが男女の濡れ場が有りますので、お嫌いな方は避けてください。   主に攻め視点。攻め視点話の率が少なめに感じたので自力供給する事にしました。 攻めは最初性の知識がほとんどありません。でもきっと立派にやり遂げます。 作者は基本甘々およびスパダリ、そしてちょっと残念な子が好きです。 色々と初心者です。 R-18にしてありますが、どのレベルからがR-15なのか、どこからがR-18なのか、いまいちよくわかってないのですが、一応それかなと思ったら表示入れておきます。 あと、バトル描写の部分で、もしかすると人によってはグロいと感じる人が居るかも知れません。血とか内臓とか欠損とか苦手な方はご注意ください。魔獣なら大丈夫だけど対人間だと苦手だという方もご注意ください。ただ、作者自身は結構マイルドな表現にしているつもりではあります。 更新は不定期です。本業が忙しくなると暫くあいだがあいてしまいます。 一話一話が文字数多くてスミマセン。スマホだと大変かと思いますがこれが作者のペースなもんで。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ
BL
 神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。  硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!  設定はふんわりしております。 少し痛々しい。

処理中です...