あの人と。

Haru.

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After Story

足りない

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「研究の方はどうなんだ?」

「大分目処がってきたかな? 今は何回も試して微調整してるところだよ。使えるまでに精度を上げなくちゃだからね」

 研究開始から早1週間。午前の数時間だけだから少しずつ進めてきてようやく形になってきたところです。……班のメンバーの神官さんね、班の名前を出すときは絶対に“ユキ様の叡智班”って言うんだよ……長いから省略しないのか聞いたら絶対に嫌だって言われました。名前の変更は承認してくれませんでした。あれ、僕リーダーじゃなかったっけ……

 あ、因みに今はレイのお手伝いの休憩中ですよ。マカロンを食べながらリディアのお茶を飲んでまったりしてます。

「ふむ。冤罪や未解決事件の件数が減るのは国としても喜ばしいことだからな。是非とも実践段階まで持っていってほしい」

「うん、もちろん!」

 どんな魔法具にするのかも決まって、今は組み込んで試しては解いてまた組み直してっていう微調整段階だからね。早くて今週中、遅くても来週中には大体使えるようになると思う。それを議会とかで審査して、認められたら騎士団で採用、って流れかな。そこから応用して金庫の鍵に使うとかはまた専門の機関が考えるみたいです。とにかく最初の技術を安定させるのが僕たち研究チームの仕事です。

「すごいなぁ、ユキ。流石“ユキ様の叡智班”のリーダーは違うね」

「その名前は封印して……!!」

「“ユキ様の叡智班”いいじゃん。かっこいいよ」

 笑いながら言われてもね……!

 あ、叡智班の名前はメンバーの神官さんが自慢するようにまわりに話しまくり、少数いた騎士さんも話しまくり、なんてしてる間に今やラスの恋人となったアレックスさんにも伝わって現在に至ります。この部屋でその名前が出た時は固まったよね。

「研究が終わればその名前が出てくることもないはず……!」

 それまでの辛抱だと耐えてます。

「ヴォイドからメンバーに選ばれる可能性が低い上、ユキと同じ班で同じことをしているということはかなり名誉なことだと言われているからわからないぞ。もしユキが次に何かの研究を始めて、同じような名前の班ができても“初代・ユキ様の叡智班”のステータスは大きいと思うぞ」

「嘘でしょ……」

 絶対嫌なんだけど……でも正直今回の研究はすっごく楽しいからまたこういうのしたいなって思ってる。でも叡智班……! 普通にみんなでワイワイやってるだけだからそれをステータスにされても……!

「あーあ、俺も初代・ユキ様の叡智班のステータス欲しいなー」

「お前の頭では無理じゃないか?」

「兄上ひどーい」

 ニヤニヤとそんな会話をする兄弟にジトリとした視線を向けるも、2人はカラカラと笑うだけ。くやしい!!

 そんなこんなで休憩時間を潰し、時間までお手伝いをすれば1日の予定は終了。お腹が空きました。

「少し早めにご夕食にいたしますか?」

 リディアがこう聞いてきたのはきゅるりとなったお腹を抑えたのを見られてしまったから。ちょっと恥ずかしいです。

「ううん、大丈夫だよ。いつも通りでお願い」

「かしこまりました」

 む、また鳴った……

「本当にいつも通りでよろしいのです?」

「いいの!」

 あまり生活習慣を変えないようにリディアが調節してくれてるんだから僕の都合で時間をずらしてもらうのはなるべくしたくないのです。……魔法鞄マジックバッグの魔法を考えた時は時間忘れちゃったけど……お腹すいたからって変えるのはNGということで!!

「では少し多めにお持ちいたしますね」

「ありがと!!」

 いっぱい食べよ!!

 ご飯のことはまぁ置いておいて……ちらりとダグを見る。真面目なお顔をされてます。キリッと今日もかっこいいよ。

 むぅ……ダグラスさん、この1週間手を出してきません!! 僕が抱き潰されて、盛大に拗ねてから軽いキスしかしてくれないの。舌も絡めないの。触れるだけの優しいキスをちゅってされるだけなの。寝る前にちゅってしたら頭を撫でられてそのままおやすみって。僕が眠るまでずーっと頭を撫でてくれるけど……

 ……正直足りません! 僕もっとイチャイチャしたいよぅ……また僕が動けなくなるのを危惧してるの? でももうあんな風にはしないって言ってたし……僕がまだ怒ってると思ってる? それともまた僕が不機嫌になるかもって思ってるのかな?

 いくらいちゃいちゃしてももっとって思うのにキスだけ……うぅ、僕欲求不満になっちゃいそう……いやもうなってるのか。

 悶々としながらご飯を食べてお風呂にも入り、ダグとまったりしつつじーっと見つめてみる。抱き寄せて撫でてくれたり触れるだけのキスは何回もしてくれるのに……むー!!

「さて、そろそろ寝るか」

 今日もしないの? したいの僕だけ?

 なーんて考えてくいっと袖を引っ張ってみても、まるで気付かないように微笑まれてそっと抱き上げられてベッドへ。キスくらい……と思えば優しく触れるだけのキスをされて。

 これもキスだけどこれじゃないの……!!

 僕から舌を伸ばす間も無くダグの唇は離れていき、安定の腕枕をされて頭を撫でられる。そっと背中も叩かれると悶々としながらもまぶたはとろりと落ちていき、そのまま温かいぬくもりに包まれながら心地いい眠りについた。



 ……うわぁあんっ!

 結局その日どころかその次の日も、そのまた次の日も何もしてくれず……って繰り返してついに金曜日! もう研究もあとは承認を待つだけってとこまで来たよ!!

 タブレット型の手形をまるごと精密に記録する魔法具と、読み込むところがちょっと大きめのバーコードリーダーみたいなやつを作りました。バーコードリーダーを色んなところにかざすと自然に検出した指紋をタブレットとバーコードリーダーの両方で保存して、タブレットに手をかざした人の指紋と勝手に比べて何パーセントあっているかをデータにしてくれるのです。あ、付属品としてプリンターみたいなのも作ったんだった。それを使えば鑑定結果を紙の書類として出すことも可能なのです。

 メンバーのみんながあれこれ意見を出してくれたからこそうまくまとまって形になったのですよ。だって僕鑑定結果をどう表示するとかあまり考えてなかったもん……やっぱり“ユキ様の叡智班”って名前はふさわしくないと思います! ここはユキ様の、は消しましょう!!

 ……実は今日も班の名前でもめたんだけどね……議会に提出書類に主要な班の名前とか中心になった人の名前を書くことになって。もちろんヴォイド爺の名前とか、他にも何人かの神官さんとか一応言い出しっぺの僕も名前を書いて、あとは班の名前ってなったとき、叡智班と魔法具の設計をしてくれた班の名前を書くことになって、議会に見られるんだからそんな恥ずかしい名前は嫌って言ったら多数決で決めましょう! って言われて僕の意見は却下されました。少数派の意見も取り入れてほしかったです。

 あ、ちなみにヴォイド爺は嬉々として叡智班に途中参加したのでヴォイド爺の班はかなり初期で解体されました……といってもみんな叡智班に入ったから合併したみたいな感じなんだけどね。ヴォイド爺の名前を入れるべきっていったのにヴォイド爺と神官さん達から大反対を受けました。

 なんだか話が逸れた気がするけど、僕が今何が言いたいかっていうと午前の予定がほとんどなくなったもの同然だということです。しかも明日は土曜。これはもう今日しかないんじゃないかと……!

 うぅ、2週間もしてないよぉ……今まで少なくとも1週間に1回はしてたのに……2日おきとか3日おきとかでしてたのに……それが2週間!! 寂しいよぉ……

 こうなったらもうあれしかないと思うのです!! あれですよあれ!!

 今日僕はダグを誘惑します!! ダグの大好きな彼シャツで!!
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