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第9章
②
しおりを挟むオーナーが来た。家じゅうのカギをかけて窓もカーテンを閉め切っていたのに。あいつは合鍵を使って侵入してきたんだ。
盗聴器と隠しカメラの場所も、合鍵もネタばらし。今の俺にはどうでもいい。だから、覚えてない。
そのあと、もはや当然のように犯された。お互いにグッチャグチャになって、光も全てなくした俺を「面白くない」と言った彼は。
「さっさと来ないと、動画をバラまくからな」
と吐き捨てて去っていった。去り際、玄関の鍵をかけなおしてくれたのは何かの意図があったのか、はたまたただの手癖か。
あれだけ脅しておいて、まだ動画をハスキーさんに見せてなかったのか。まだ、脅すだけで実行しない。あんな動画、今の俺には無価値。
そんなことはいい。もう、全部全部、どうでもいい。
――あれからどれくらいの時間が過ぎたのか。腹が減っても何か食べる気になれず、胃が痛くなっても吐きそうになっても放っておいたら、何も感じなくなった。
ベッドに横たわるだけ。何の音も聞かず、何も見ず、何も感じない。このまま、スッと俺が終わればいいのに。
あぁ、最後に。夢でもいい、幻でもいいから、ハスキーさんに会いたかったなぁ。
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