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第11章
⑥
しおりを挟む――のんびりした時間がゆるーく過ぎて、もうそろそろお開きの時間だなって時。店の入り口付近が急に騒がしくなった。
騒がしいのはどんどん近づいてきている。ハスキーさんが立ち上がり、個室のドアを開けようとした瞬間。爆発音にほど近い轟音を轟かせドアが勢いよく開け放たれた。
おかげでハスキーさんは尻もちをついて、勢いあまって壁に後頭部を打ち付けて。
「あたしのハスキーを独占してるっていうドロボー猫はアンタね!!しかもナンバーワンのハルト様まで従えてぇ!信じらんないっ!!お酒、高いのばっかめっちゃ飲んでる!そんなにお金が余ってるならあたしにもわけてよっ!」
風神様と雷神様が合体して鬼になったような、女性が怒り大爆発で飛び込んできた。
どうやらハスキーさんの熱狂的なファンらしい。そのハスキーさん、今あんたが弾き飛ばして伸びてるぞ。って、あれ?この子の顔、どこかで見たような……
「仕事を増やしてぇ、家も売ってぇ、身体も売ってぇ……そうしてかき集めたお金でハスキーをナンバーワンにしようと頑張ってるのにぃ。いつもいつも蛍、アンタがハスキーのナンバーワンなんてっ!アンタさえ……」
何か、嫌な予感がする。ドラマでよく見るパターンな気がする。と思ったら、彼女はスッとカバンから包丁を取り出して蛍さんに向けた。
すぐに俺が背にかばう。蛍様を、今のこの蛍様を傷つけるわけにはいかない。絶対に、命に代えてでも。
「どいてよ、ハルト様…………ううん。いいわ。あなたも死んで?アンタ達がいなくなれば、ハスキーさんはやっとナンバーワンになれる。そうだわ!あたしが殺してあげるっ!!」
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