105 / 153
第15章
②
しおりを挟む暖かい。優しくて柔らかな抱擁が、俺の体を包み込む。秋鷹さんは何も悪くないのに。その謝罪の言葉は俺達と、それとさっきから酷い呼ばれ方をしているオーナーにも向いている。
瞬間、全てが終わったことを悟ってしまった。嫌だ。これで終わりだなんて。悔しい。悔しい。あぁ、悔しい。すごく悔しくてたまらないのに、奥から安堵がやってきて覆いかぶさる。
涙がこぼれた。1つ、2つ。もっと。
やがて、救急車がやってきて秋鷹さんがオーナーを隊員に引き渡し一緒に乗っていった。俺を抱きしめるぬくもり、匂いはいつの間にか変わっていた。
「全部秋鷹に任せて、俺達は帰ろう。今日はもう休んで、明日話せそうならゆっくり話そう。俺が計画していたこと、俺が調べたこと。それから、オーナーと秋鷹のこと」
結局、競走、負けちゃったなぁ。
「ねぇハスキーさん。今、この時も俺のこと……好き、ですか?」
「は、はぁ!?んなの、当たり前だろうが。何なんだよ急に」
クスッ、すごい声が裏返った。でも、そっか。じゃあ、もう諦めて終わりってことにしよう。いい加減、ムキになるのはやめて受け入れようかな。
体に力が入らない。ハスキーさんだって薬のせいでまだ体が自由に動けないだろうに。俺達は、お互いに抱きしめ合ったまま地下駐車場で夜を明かした。
0
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる