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9月4日 木曜日
第23話 思わぬ展開
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僕も中村も、今年の合唱祭はもう諦めざるをえないと思っていた──たぶん木崎先輩もだろう。じゃなきゃあんなふうに生徒会室を飛び出したりはしないはずだ。
でもこの人たち──新垣先輩と乾先輩には、最初からそんなつもりはなかったのだとしたら。
「お前……わかってたなら今までの回りくどいやりとりは何だったんだよ」
乾先輩が呆れたように言う。
「回りくどいとは失礼だな。情報の出し惜しみはお互い様だろう。それに僕には、会話が成り立たない相手と対話する趣味はないのでね」
そんな桐山さんの言葉に、僕は心の中でまた身震いした。我ながら、とんでもない相手に直談判に行ったものだと思う。
でも少なくとも、桐山さん自身の言葉を借りるとすれば、僕たちは一応「対話」の相手としては認められたようだ。彼の方から「本題に入ろう」と言ってきたのだから。
「お前がここまで周到じゃなきゃ話はもっと簡単だったんだけど」
乾先輩がため息交じりに言うと、桐山さんは訝しげに片眉を上げた。
「なんで中止の発表を、二学期の始業式っていう直前まで引っ張ったのかって話だよ。去年すでに中止で固まってたくせに」
僕は思わず「えっ」と声を上げそうになった。
だって、中止が決まったのがそんなにも前だなんて──…。こっそり中村と視線を交わす。
「それで調べてみれば、会場の問題だったんだな。毎年使ってるあの大ホールは三カ月前の同日が予約の締め切りだった。年度初めの時点で中止を発表したとしたら、その時点ではまだ会場を押さえられる。つまり実施に向けて外堀を埋められるおそれがあったってことだ」
まさかとは思ったけれど、桐山さんは否定しなかった。代わりに一つ、小さく息をつく。
「……どうやってそれを? 新垣くんの伝手で?」
訊かれた新垣先輩は静かに首を振った。
「いや、木崎さんだよ」
すると桐山さんは大きく目を見開いた。
「そう……あの木崎さんが、ねえ……」
今ここにはいない木崎先輩──もし合唱祭の中止が早々と発表されていたら、きっとこの「合唱祭実行委員会」が作られることもなかっただろう。それはつまり、新垣先輩や乾先輩、木崎先輩と知り合うこともなかったということだ。
だったらきっと、僕たちが出会ったことには意味がある。たとえ今、この桐山さんに名前を取り上げられているとしても、合唱祭実行委員会は何かしらの意味を持って存在するはずなのだ。
「……中止の撤回は難しいということは、僕たちにもわかってる」
新垣先輩の声に、僕は意識して姿勢を正した。きっと、ここからが「本題」だ。
「だから僕たちは、『合唱祭実行委員会』として、生徒会執行部・桐山秀平会長に以下のことを提案する──」
でもこの人たち──新垣先輩と乾先輩には、最初からそんなつもりはなかったのだとしたら。
「お前……わかってたなら今までの回りくどいやりとりは何だったんだよ」
乾先輩が呆れたように言う。
「回りくどいとは失礼だな。情報の出し惜しみはお互い様だろう。それに僕には、会話が成り立たない相手と対話する趣味はないのでね」
そんな桐山さんの言葉に、僕は心の中でまた身震いした。我ながら、とんでもない相手に直談判に行ったものだと思う。
でも少なくとも、桐山さん自身の言葉を借りるとすれば、僕たちは一応「対話」の相手としては認められたようだ。彼の方から「本題に入ろう」と言ってきたのだから。
「お前がここまで周到じゃなきゃ話はもっと簡単だったんだけど」
乾先輩がため息交じりに言うと、桐山さんは訝しげに片眉を上げた。
「なんで中止の発表を、二学期の始業式っていう直前まで引っ張ったのかって話だよ。去年すでに中止で固まってたくせに」
僕は思わず「えっ」と声を上げそうになった。
だって、中止が決まったのがそんなにも前だなんて──…。こっそり中村と視線を交わす。
「それで調べてみれば、会場の問題だったんだな。毎年使ってるあの大ホールは三カ月前の同日が予約の締め切りだった。年度初めの時点で中止を発表したとしたら、その時点ではまだ会場を押さえられる。つまり実施に向けて外堀を埋められるおそれがあったってことだ」
まさかとは思ったけれど、桐山さんは否定しなかった。代わりに一つ、小さく息をつく。
「……どうやってそれを? 新垣くんの伝手で?」
訊かれた新垣先輩は静かに首を振った。
「いや、木崎さんだよ」
すると桐山さんは大きく目を見開いた。
「そう……あの木崎さんが、ねえ……」
今ここにはいない木崎先輩──もし合唱祭の中止が早々と発表されていたら、きっとこの「合唱祭実行委員会」が作られることもなかっただろう。それはつまり、新垣先輩や乾先輩、木崎先輩と知り合うこともなかったということだ。
だったらきっと、僕たちが出会ったことには意味がある。たとえ今、この桐山さんに名前を取り上げられているとしても、合唱祭実行委員会は何かしらの意味を持って存在するはずなのだ。
「……中止の撤回は難しいということは、僕たちにもわかってる」
新垣先輩の声に、僕は意識して姿勢を正した。きっと、ここからが「本題」だ。
「だから僕たちは、『合唱祭実行委員会』として、生徒会執行部・桐山秀平会長に以下のことを提案する──」
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